会計のカタロゴス(草稿)

 本草稿は、会計学の序論へのこだわりをとりまとめたものです。目指しているのは道草会計学であり、会計学における「視差法」です。寺田寅彦がいういわゆる「あたまの悪い人」が書いた会計学序論です。順次upしていきたいと思っています。

「〜いわゆる頭のいい人は、言わば足の早い旅人のようなものである。人より先に人のまだ行かない所へ行き着くこともできる代わりに、途中の道ばたあるいはちょっとしたわき道にある肝心なものを見落とす恐れがある。頭の悪い人足ののろい人がずっとあとからおくれて来てわけもなくそのだいじな宝物を拾っていく場合がある。・・・・・・
 頭の悪い人は、頭のいい人が考えて、はじめからだめにきまっているような試みを、一生懸命につづけている。やっと、それがだめとわかるころには、しかしたいてい何かしらだめでない他のものの糸口を取り上げている。そうしてそれは、そのはじめからだめな試みをあえてしなかった人には決して手に触れる機会のないような糸口である場合も少なくない・・・・・〜」
(小宮豊隆編「寺田寅彦随筆集(4)《科学者とあたま》 岩波文庫  1963改定)

 

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カタロゴス:katalogos

  Logos(理性)の語源は“集める、数える、語る、説明する”というギリシャ語動詞Legionから派生した言葉で、「思想が合理的である」ことを意味している。人間は、物を集め、数え、説明し、その中に論理や法則をみいだしていく。Logosは私たち人間の思考の力を意味している。さて、本書のタイトルとしたKatalogosであるが、英語ではCatalogで目録、カタログである。ギリシャ語起源の接頭辞kata―(下に、…に従って)とLogos(集めたもの)で「数え上げられたもの、集められたもの」を意味する。物事をいっぱい集め、観察、推論し、真実を見出していく過程、すなわちLogosに至る前段的過程を意味している。  「会計のKatalogos」は、複雑怪奇、魑魅魍魎、最近の新聞紙上では、跳梁跋扈の世界まで加わって、ますますわけが分からなくなってきている会計の現実を、原点から整理することによって会計のLogosに至る、前段的会計(理)論である。

 

 

 
まえがき 8

第一部 プロロゴス 12

第1章 ロビンソン・クルーソー 13
【補足】資本主義の長期停滞論 17

第2章 簿記の出現 19

、簿記をたたえる人々 19  、「スチュワードシップ」と「アカウンタビリティ」 22  、簿記誕生の時代背景 24 
、簿記の発明 26  、借方と貸方 29  、簿記の機構 31  、貸借対照表の意義と構成 34 、損益計算書の意義と構成 35  、簿記と会計 36  【補足1】アカウンタビリティ 38  【補足2】貨殖の禁止 38  【補足3】中世の教会の影響 39

第3章 株式会社の誕生と簿記の進化 40

、簿記から会計へ 40 
、大航海時代の到来 41  、株式会社の誕生 43  、永久資本制 45  、有限責任制 46補足1】商業革命 commercial revolution 50  【補足2】世界システム論と法体系 51  【補足3】オランダのヘゲモニー衰退の真実 52

第4章 商法会計の原型 53

、商法会計 53  、サヴァリー法典の成立 53  、サヴァリー法典の内容 55  、静態論の確立 57

第5章 近代会計の幕開け 60
、近代会計の意味 60  、商業革命 63  、複会計制度 66  、配当政策と減価償却 70  、資本主義のモードと会計体系 74
  【補足1】近代という時代区分 78  【補足2】紅茶帝国主義 78  【補足3】贅沢と資本主義 79  【補足4】ウィリアム・テーゼ 79  【補足5】原価計算 80  【補足6】複会計制度 80  【補足7】レッセ・フェール laissezfaire 81

第6章 シュマーレンバッハの「動的貸借対照表論」 82

、パラダイム革命 82  、シュマーレンバッハ 84  、前パラダイムの状況の出現 84  、シュマーレンバッハの基本思考 86  、「一致の原則」 87  、貸借対照表の役割 89


第7章 ペイトン=リトルトンの「会社会計基準序説」 93

、ペイトン=リトルトン 93  、前パラダイム状況の出現(会計原則誕生の背景) 94  、会社会計基準序説 96  、ペイトン=リトルトンの考え方 98  (1)企業主体理論 99  (2)収益と費用の対応 100  (3)費用収益対応の原則、取得原価主義、実現原則 101


第8章 ディスクロージャー 105

【補足】売り手に用心させよ 110


第9章 日本会計制度の成立 111
、日本の会計の流れ 111  、複式簿記導入期 112  、商法会計 113  、企業会計原則の誕生と商法との調整 116
  (1)商法の改正 118  (2)企業会計原則の修正 120  、現行会計制度の枠組み 122  【補足】荘田平五郎―近代会計の先駆者 124

第10章 会計のスタイル(の根っ子) 125
、日本会計の経路 125  、「仕様規定」か「性能規定」か 127  、正義のこころ 129  、フランコジャーマン系の正義 131  、アングロサクソン系の正義 131  、大陸合理論とイギリス経験論 133  、イギリス経験論誕生の背景 136  、プラグマティズム 138  、フェアネス 140
  【補足1】明治初期における外国法の影響 142  【補足2】明治憲法の制定 142  【補足3】大陸法と英米法 142  【補足4】イギリスにおけるローマ法継受の拒否 143  【補足5】コモンセンス 143   【補足6】官僚型「基準主義」と競争型「確率主義」 144

第11章 会計的「真実」とは何か 146

、イギリスにおける「
TFV概念」 146 
、アメリカの「実質優先思考」 150  、日本の「会計的真実性」 153  【補足1】実体的真実主義―「木が沈み、石が浮く」 159  【補足2】日本人の「表層性」「微温性」「幼児性」 159  【補足3】デュー・プロセス due process 161  【補足4】ノー・アクション・レター 162  【補足5】ルール社会・・・・交差点に見る日米のちがい 162  【補足6】おもてとうら 163  【補足7】二つの会計モデル 163  【補足8】window dressing 165

第12章 近代会計制度の成立 166
、近代会計制度 166  、アダム・スミスの懐疑 167  、監査制度の法的認知過程 169  、会計士協会の誕生 173  、会計士会計学の誕生 175

第二部 企業会計の基礎的構造 177
第1章 会計公準論 178
、会計公準 178
  、企業実体(business entity)の公準 179  、継続企業(going concern)の公準 181
、貨幣価値一定(stability in the monetary unit)の公準 182 【補足】アテネのタイモン 186

第2章 企業会計原則 188
、企業会計原則の体系 188  、真実性の原則 189  、正規の簿記の原則 191  、資本と利益の区別の原則 194  、明瞭性の原則 195  、継続性の原則 199  、保守主義の原則 202  、単一性の原則 203  、重要性の原則 204  [補足 ニュー・ディールの意義]  
第3章 会計制度の三角関係 207

、トライアングル・レギュレーション 207  、商法会計 208 、証券取引法会計 212  、税務会計 215  (1)別段の定め 218(2)確定決算主義 219  (3)税法の逆アプローチ 221

第三部 企業会計の理論的構造 223
第1章 利益概念と会計規範 224
、会計目的 224  、利益概念と会計規範 225  、損益会計の内容 227

第2章 損益計算の諸原則 229
、期間損益 229  、現金主義と現金主義会計 231  、発生基準(主義) 232  、発生主義会計 234  、損益計算の原型 237  、実現と未実現 239  、実現主義 241  、費用収益対応の原則 242  、費用と収益の対応関係 244 
10、費用の発生形態と対応関係 245

第3章 貸借対照表の機能 248
、資産評価の転換 248  、収支計算と取得原価主義 249
  、貸借対照表の構造と機能  254  、資産の概念 254  、資産の区分 256  、負債の概念 257  、負債の定義と種類 258  、引当金 260  、資本の概念 261  10、資本の分類 263

第4章 取得原価主義会計の現代的意味 266
、意味のないバランスシート? 266  、国際会計基準の動向 268  【補足1】含み経営からの脱皮 270  【補足2】折衷システムの限界 270  【補足3】含み経済システム 270

第四部 国際会計基準 272
第1章 「第三の波」  273
、第三の波 273  、海型と山型 276  、日本の「型」 279 、アメリカの「型」 283

第2章 自由か計画(統制)か 285
、自由競争社会(アダム・スミスのテーゼ) 285  、スミスの否定(ケインズ政策) 288 、スミスの復権 291  、新自由主義(新保守主義) 295  、アメリカ型資本主義 300  、日本版ビッグバン 303
  【補足1】ハイエクの信念 308  【補足2】20世紀はどんな時代だったか 308   【補足3】海と文明 309     【補足4】脱アメリカの模索 309   【補足5】経済システムと資源配分メカニズム 310     【補足6】問われる長期・総合的リレーションの正当性 311    【補足7】ハイリスク・ハイリターン 311   【補足8】切り売りかパッケージか 311    【補足9】金融監視体制のあり方 312

第3章 国際会計基準の導入 313
、国際会計基準 313  、連結決算の導入 317  、キャッシュフロー計算書 320  、時価会計 324  、税効果会計 327  、退職給付会計 331
  【補足1】企業のブラックボックス観 337   【補足2】日米で違う株主の意識 337    【補足3】株式中心主義への転換 338  【補足4】情報提供機能のパラドックス 338  【補足5】リスク資本が企業価値を創造 339


参考文献 341

著者略歴 344

 

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