イタリア人は、ワリと日本が好きである。
とは言っても、日本そのものに親近感を抱いているかと言うと、まだまだその段階には至っていない。
坂東真砂子氏が『ラ・ヴィタ・イタリアーナ』で、いかにイタリア人にとって日本が遠いかを語っている部分がある。
8ミリビデオの映像を世界各地から集めた番組を見ていると、「日本の学生が暴動を起こした時の映像です」
というアナウンスが流れた。知らないうちに、そんな大事件が起きていたのか、と身を乗り出したら、そこに映
っている学生たちは、韓国語を叫びながら警察官ともみ合っている。背景はソウルのようだった。
坂東氏いわく、「イタリアからすると、まだまだ日本は極東、遠い東の国なのである」。
松本葉氏も、イタリアにおいて「日本の情報はとても少ない」と嘆く。(『伊太利のコイビト』)
「凄い技術力を持っているお金持ちの国の死ぬほど働く人々」というのが、イタリアーニの抱く日本人のイメージ
だとか。「日本はひとつの企業のように思われていて」、「クロサワやミシマでさえ知名度は低く、代わりにメーカーの名前なら10は言えるという感じ」とくる。
認知度はいまひとつ。しかしながら、イタリア人の一部、それも特に若者に日本びいきが多いことも事実である。
それは、盆栽でも和食器でもない。メイド・イン・ジャパンのアニメやマンガ。それが彼らの熱愛の対象だ。現在はセーラームーン、ランマ(高橋留美子)、シティ・ハンターが人気だと坂東氏は報告する。(同じく『ラ・ヴィタ・イタリアーナ』
何年か前、ローマのホテルでテレビを見ていたら、『ベルサイユの薔薇』が放映されていた。オスカルは‘オスカレッロ’とイタリア的な名前で登場していたのには笑えた。
驚いたことに、『ベルサイユの薔薇』のクイズ番組まである。会場に集められた子供たちに『ベルサイユ…』の一場面を出し、「さあ、次の画面はどれでしょう」と質問、5場面ぐらいが映し出される。子供たちは競ってボタンを押して、答えを叫ぶ。こんな番組が成立するほどの、日本アニメの人気ぶり。
カラオケ、マンガは今では、イタリアで立派に通用する外来語。もちろん出所も日本であることを知っている。(この点、柿は気の毒。もともと日本の果物なのに、イタリアで売られるカキの出生はイタリアと思いこんでいるイタリア人は少なくない。当地ではCACHIと綴る。)
いやはや、日本とイタリアを橋渡しするものはモノが主流である。日本人の中身も、少しは伝えたい。でも、それを言ったら、我々だって、アレッシィの雑貨とか、パスタや、ワイン、ティラ・ミ・スゥ…と、モノからイタリアにアクセスしている。ま、仕方ないか。日本とイタリアは地理的に離れすぎているし…。
でも、日伊の結びつきは年々強化されていると思う。
(ナカタもナナミも、モノとしてではなく、ヒトとしてイタリア上陸を果たした)
で、結論。イタリア人は日本を知ることで、嫌いにはならない。むしろケッコー好きになる。
なにせイタリア人の大好きなモノをたくさん生産するし、そして何よりもおしゃべり好きに、聞き上手(寡黙)な日本人はうってつけだから。
●目次
イタリアは泥棒天国か