本覚坊遺文

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作品情報

作品名 本覚坊遺文
さくひんめい ほんかくぼういぶん
初出誌 群像
初出号数 昭和56年1、3、5、6、7、8月号

収録状況

文庫/全集 文庫本名/副題
講談社文庫 - 本覚坊遺文
講談社文芸文庫 - 本覚坊遺文
井上靖全集 22 長篇15

掲示板から

おなまえ 記事No.
日付
書き込みから
石見洪太さん [322]
2001/07/07

秀吉、家康、利休、古渓、織部の絡みの中で利休の死を考えて行きます。私は嘗て共に歴史の判定に任せて死に赴いた東西の偉人、古代ギリシャで自分は真に客殿に於いて供応に与るべきだとしながら若者の心を惑わす者として毒杯を仰いだソクラテス、何ら弁解もせず死に赴いた利休、その間に介在する何かに西洋の社会的合理性と東洋の個人の情緒的顕在化があると社会人大学生の小論文を書いて感情移入過多でB戴いたのを思い出していました。

ソクラテスの「賢者は知らないことを知る。広く論ぜよ」として20世紀の今、最も繁栄する社会体制を証明してみせた。利休は後生の作家にその死を芸術の世界で花開かせた。

京都に行くと聚楽第跡地に長次郎の子孫が芸大出て今尚窯と小美術館を守ってお出でになる。秀吉と利休の中にあってご町内の長次郎が何を考えたであろうか。今は知る由もないが只文学者の領域でその心理を推測する他はない。名作の誕生する由縁だ。

三毛猫さん [471]
2001/12/20

茶の湯の世界、わびさび、共にまったく理解できなかったけれど、井上氏の心の中を全部紙面にぶちまけたような、それを読ませてといいますか触れさせていただけたような・・そんな先生の息をも感じられるような文章でした。

ユミさん [525]
2002/01/16

ラスト近くの利休と秀吉の対話のシーンはすごくて(語彙の少なさが悲しい…)、読んでいてどきどきしました。体ごとそっちの世界に持っていかれちゃう感じですね。

三毛猫さん [528]
2002/01/17

「上さまとして本気で刀をお抜きになりました・・」「本当の上さまになられました・・」

この辺りなど、行き詰まる緊張感で読んでいる自分が、ここにいる自分で無いような、恐ろしくさえあった終章でしたね。

yakkoさん [650]
2002/04/20

三毛猫さまは「透明度を高めた」と仰ってますけど、本当に美しい情景が描かれていました。その美しさも「茶の湯」の世界の何物でもない美しさなんですよね。先生は、そんなにお茶はやっていなかった筈。なのに、茶の湯の世界に沿った美しさを表せるなんて・・・

でも、茶の湯の美とかに限らなくても、無駄なところを削って削って、透明度の高い美しい作品でした。この美しい文章は、先生の作品の中でも屈指でしょう。これを映画化?って、監督も困らなかったのかな。

死の掛け軸に入っていった三人の下りなんかは、読んでいて震えが来ました。最後の二畳の茶室にたくさんの客人が入って来るところは、「星と祭」のラストの観音様達が立ち上がるところを思い出したりしました。構成的にこういう盛り上げ方、先生は好きなのでしょうか。

灯に自分の影が映るのを「大入道」と表現するのが気に入りましたね。それでも主旨が理解出来ないところも、ままありまして、もう少し勉強してから読み直してみたいと思ってます。思い切りこの作品は深く読みたいですね。

映画化情報**

映画の題名 千利休
制作 東宝
監督 熊井啓
封切年月 平成1年10月
主演俳優 三船敏郎、萬屋錦之助

参考

[2] 旭川市・井上靖記念館ホームページ

文庫本限定!井上靖館作品