福祉・ダンスはBTRDへ 本文へジャンプ
レク・ダンスがつくるバリアフリーな世界


 2005

1、障害を持った方と初めて踊った!!


BTRD(BLUE−THREEレクダンス研究会)は1977年に活動を開始しました。障害を持つ方との踊りを翌年の1978年には開発しています。その頃は車イスに乗っている人を街で見かけることも少なく、まだ家庭から出られない障害者も今よりは多かったはずです。レクリエーションダンスのその頃の標語は「いつでもどこでも誰もが踊れる」でした。なら障害を持った方も踊れる踊りを創ろうと言う発想からこの分野の扉を開いたのです。周りで障害者が踊るのを全く見たことがないという世界の中で初めから考えるのはとても勇気のいることでした。私たちにとってはまさに「開発」でした。世田谷区の雑居まつりの中で車イスの方と踊るのに成功した時の感動は忘れられません。それからはや27年。時の流れの中でこの分野は大きく変わっていきました。

2、障害者が踊る世界の広がり

30数年前障害者と踊る運動をいち早く始めたのが「ユニークダンス」でした。マスコミもうまく使って車イスの方などと社交ダンスをベースにしたすばらしい踊りを開発していました。1981年に国際障害者年が来てBTRDも各地で呼ばれました。そこに行くと障害者と踊る踊りが「ユニークダンス」という名前だと思っている方が多かったことを見てもこの運動の当時の広がりを知ることが出来ます。
そのころは障害を持った方も踊りを踊るという経験をしたことのある人は多くはありませんでした。踊っていて楽しい・嬉しいという感情を出すことが出来ない方も多かったようです。うちの会員でも指導しても反応がなく、うなだれて帰ってくる人もいました。ところが後日届いた感想ではとても楽しかったということが書かれてあり、相互のコミュニケーションの必要性を痛感しました。1981年にはそのころは知る人も少なかった手話を使った踊りを作り皆さんの感動を呼びました。
本拠地の東京都港区でも「共に生きるみんなの歌と踊りの集い」を立ち上げ今年で25回を迎えます。これは障害者の詩に曲をつけて踊りもつけるという集いでいろいろな障害者団体が自ら主役になって歌や踊りを披露してくれるというものです。この中でダウン症の女性で黒人張りのすばらしい踊りを見せてくれる方がいてビックリしました。知的障害の方の踊りの豊かな可能性を示唆してくれました。車イスの方の踊りも可動域を知り車イスの特性を使った踊りを創作することにより、かなりバリエーションを持つことが可能だと言うことが分かりました。視覚障害の方が踊れるものも作れるようになりました。
そのころのことで忘れられない体験は先天的な視覚障害のレクリーダーが踊りを指導するのを見たことです。踊りを全く見たことがない方の指導と言うのは不可能だと思ったのですがみんなの協力でやり遂げました。また重度の障害者の施設の運動会でのレクダンスの創作依頼があり、相当苦しみ、悩みましたがその成功はダンスの今後の広がりの可能性を予感させてくれました。今になって、各方面での障害者の踊りに対するすばらしい成果を見ると、その頃の実感が正しかったことが分かります。多くの人が次第に体験し、そして知っていったのです。障害者が踊るということを。その楽しさを。

3、ダンスの世界の最近の動き

長野のパラリンピックで知的障害の方が踊っていましたが、それを見てもわかるとおり、それらの方に対するアプローチは最近目を見張るものがあります。フォークダンス的なものからヒップホップにいたるまでいろいろな踊りを楽しく踊る世界が出現しています。日本民踊を踊って公演しているダウン症の方までいます。一方車イスの世界はご存知のとおり社交ダンスが広まり競技性を持つものも現れました。また車イスレクダンスのサークルも出来てきました。重度障害の施設でもいろいろな試みが生まれてきており、そこでは音楽がかかりそこにいて参加することで踊っているという概念も生まれてきています。視覚障害の方のダンスレッスン法も外国から導入されて来ました。障害者のダンスのプロも今後現れてくることでしょう。
 このような流れの中で最近思うことがあります。それぞれのダンスがひとつの障害の方に特化して成果はあげているものの、みんなで踊る踊りが忘れられてきているのではないかと言うことです。日本のある区画に今いる人を切り取って集めるときっとその中には自然に障害を持った方がいます。踊りも障害を持った方のためだけの踊りではなく、みんなで踊る踊りでその中に障害を持った方がいても自然に踊れる。というのが特にレクリエーションでは理想ではないでしょうか。  
BTRDによくこられるダウン症の方ははじめは障害者と共に踊る踊りに参加していました。ところが慣れてくると一般の方のレクダンスの場にも来るようになりました。踊れないところもあるのですが、他の参加者もその方になれると自然にサポートし恙無く、楽しく踊って帰られるようになりました。こういう踊りの世界はいいなと思います。
 
4、「歌と踊り」で共に生きる世界を
 

BTRDは10年ほど前から「福祉レクダンス」という分野を創り運動を進めています。障害者に加え高齢者・高齢障害者と共に踊る踊りを開発、昨年からは簡単に歌いながら踊る「ミュージックダンス」も創り始めました。ほとんどが座ったまま踊れます。そして交流を図る踊りも数多く創っています。そして何よりも使う方の立場に立ち良い教材の製作を目指しています。10年前から皆さんの良く知っている曲を踊りやすいアレンジにしてCDを製作し、そのビデオも合わせて製作。全国縦断講習会を毎年各地で開き普及活動を行っています。CDシングル10枚。CD・ビデオブック2「福祉レクダンス」を通じて全国の方々がなじみの曲で容易に踊れるようになりました。いろいろな分野の踊りの指導者を招き紹介する「福祉レクダンス講座」の開催により新しい流れを作ろうとしています。そして音楽プログラムにも力を入れており、歌と踊りを通じた共に生きる豊かで楽しい世界を創り上げていきたいと思っています。今年はBTRDも30周年。「30周年はBTRDの出発点」ととらえて新たな教材の発行・多彩なイベントを行いました。是非「共に踊る優しいダンス-福祉レクダンス」を体験してみてください。新しい世界はこれから開かれます。