『スネーク・フライト』
ヘビが、 ジャンボを、 ジャックする。
残念ながら、この作品にはジャンボ鶴田は含まれておりません。
もちろん見た瞬間にB級と分かるこんな映画に鶴田VSジェイク・ロバーツを求める馬鹿もいませんから、心を無にして挑むのが正常の楽しみ方と心得ます。
そして当然ジャック・ブリスコも出ていません。
清々しいほどのバカ映画となっています。
ヘビがジャンボをジャックする。
何度聞いても力強いフレーズです。
湖なのにサメ地獄を思い出します。
霊長類としての威厳が今、たかがB級映画に試されようとしています。
かく言う豪腕もフライトシュミレーターでは4回くらいジャンボジェットを撃墜させ、神奈川県の金賢姫という異名を取った過去があります。
あんな鉄の塊が飛ぶなんて金輪際信じない豪腕ですが、今回の映画もまた凄いですよ。
何しろ主演がサミュエル・L・ジャクソン。
いや本当の主役はヘビですけどこの人も凄いです。
出てる映画を見たらご納得いただけるでしょう。
【スターウォーズ】。
【パルプ・フィクション】。
【S.W.A.T.】。
【評決のとき】。
【英雄の条件】。
それがどうしてヘビが飛んじゃう映画なんかに出てるのか。
あんまり門外漢が突っ込むのも間違ってますけど、少しは仕事を選んだ方がいいと思います。
しかしこの人の凄さはそれだけではない。
まるで日本全国、松本清張と2ちゃんねらーしか気付かないようなスーパー馬鹿映画にもちゃんと出てるんですよこのオッサン。
【童貞ペンギン】とかね。
このオッサンが2006年に【アフロサムライ】で声優に挑戦した時なんか、私はDIOのスタンド食らったかと思いましたよ。
それはともかく。
ヘビに関してはぜんぜん良い思い出のない我がサイトです。
お前に言ってるんだ。
何を言わんかやは、ひとまずストーリーを見てからにしましょう。
全米熱狂初登場第1位!
マフィア組織による殺人事件の目撃者として保護された青年は、
ロサンゼルスの裁判所で証言するため、
FBI捜査官と共に秘密裏に
ホノルル発のジャンボジェットに搭乗する。
・・・しかし組織は。
毒蛇、大蛇を新たな暗殺者として
機内に送り込んでいた!!
解き放たれた毒蛇と、
命がけの死闘が始まる!!
いいやバカだ。
ちょっと豪腕は頭が悪いので、何が起きたか整理してみます。
1.青年が殺人事件を目撃してしまった。
2.法廷で証言したいが追っ手が迫る。
3.追っ手ヘビだし。
4.しかも飛行機の中だし。
爆弾でよくね?
少なくとも豪腕は、一人の証人を消すのにわざわざジャンボジェットに大量のヘビを持ち込む理由がまったく分かりません。
集めるの大変だったね。
そのヘビがたまたま証人に噛み付いて殺せばいいけど、助かっちゃったらどうするんでしょう。
答・罪が重くなります。
この作品は、こういう頭の中まで爬虫類みたいなバカバカしいアクション映画として楽しみましょう。
ちょっとでも考えたら負けです。
いやしかし。
だがしかし。
それなりに頭の中を空っぽにして観てみたら、それはそれで面白いんですこの映画。
少なくとも、ボアとかパイソンとかいう江頭2:50は出てきません。
私は未だに「うんこ」という単語を使用しておりませんが、それはこの映画が決してうんこ映画ではないからです。
ものっすごいお金をかけたB級バカアクション映画だと思っていただいて結構です。
もうバンバン人が死にます。
あまりに死にすぎて途中から証人を消すとか消さないとかは本気でどうでも良くなります。
体長10メートルくらいあるアナコンダとか平気で出ます。
ここは飛行機の中です。
関税の人間は全員首でもくくった方が良いんじゃないでしょうか。
ベルトか何かと勘違いしたんでしょうか。
どうやってカーゴに詰め込んだのか知りませんが、出てくるヘビも10匹や20匹じゃありません。
100匹は楽勝で越える無数のヘビたちが機内狭しとグネグネ這いずり回るのですよ。
格言:長い物には巻かれろ。
するとこんなに良い事が(起きねえよ)。
仕掛け人が海賊女帝のハンコックだったら美味しい場面もあったんでしょうけど、基本的に人は毒蛇に噛まれるとケロイド状に薄気味悪く死んでゆく運命にあるようです。
B級映画に科学考証を持ち込んではいけません。
ジャンボジェットのカーゴ室なんて普通に知らないんですけど、隠れて乗ったら氷漬けになって死ぬレベルだと聞いた覚えがあります。
上空は気圧がアレだから危険なんですね。
そんな危険をモノともしない元気なヘビたち。
さすが3億年の進化の歴史がモノを言います。
素手の殴り合いなら我々の歴史がモノを言うジャガッタ・シャーマンのようです。
ビバ冷血動物。
しかし本気で分からないのは、証人を運ぶためにわざわざダミーのFBI専用機みたいなのを用意している所でしょうか。
何しろ専用機です。
最初ッからそっちで行けよと思います。
それなら被害も最小限で済みました。ヘビ載せるスペースも無いし。
なんでわざわざ民間のジャンボジェット(ほぼ満席)に乗っちゃうんでしょうか。
FBIの管理能力は初めて同人作る中学生よりも劣ります。
最悪なのは、FBI専用機がダミーで実は民間のジャンボジェットに乗るという事が計画段階で敵にダダ漏れだった点でしょう。
何しろ数100匹の毒ヘビたちを集める時間があったのです。
ヘビなんか集めてる暇に狙撃しろよと思います。
どちらも中々のバカです。
B級映画的に。
まあ、出ちゃったものは仕方がない。仕方がないから乗客たちは戦います。
この乗客たちの描写もまた、変な方向に力が入っていていかにも的な雰囲気をしっかり醸成しております。
飛行機モノに限らず、閉鎖空間パニック映画では必ず守らねばならない『お約束』を忠実に守っているという点では、この映画も頑張っています。
すなわち。
たまたま有名人が居合わせる。
お前はジョン・マクレーン刑事かと言わんばかりの構成ですが、ハリウッド映画界ではもはや常識とされています(誰も止めないみたいです)。
今回の『スネーク・フライト』にも、有名人が乗ってる設定です。
3Dだか3Gだかいう黒人ヒップホッパーです。
何の役にも立ってません。
単なる潔癖症設定のバカでした。
他にもマネージャーのデブ2人(こいつらは良い働きをします)、犬を飼ってる婦人、子供の兄弟やエロネタばかり言ってる副操縦士なんかも出てきます。
中でも東洋人のカンフーマスターが光っています。
アメリカ人の見解はどこかで間違っています。
しかもカンフーなんか一切使わないという点が、私の中であるトラウマを思い起こさせるものでした。
お前に言ってるんだ。
出てくるモブキャラたちがあんまり機能していないのは、きっと欲張りすぎちゃったんでしょうね。
「あれもこれも出したい」ってのは大抵失敗するか、プレイ時間が7〜8時間かかっちゃうんですよ。
すみません。これは私に言ってます。
(墓穴)
これだけ色々出てくると捌けないのも仕方ないんですけど、まだまだお約束は出てきます。
便所でセックスするカップルとかね。
『13日の金曜日』を始めとする山荘ホラーでは、勝手にシャワーを浴びる巨乳に相当します。
もちろん秒で噛まれます。
初代タイガーVS小林邦昭戦みたいな様式美を感じます。
しかし。
しかし。
その様子、便所の外にいる搭乗員にバレバレなんですよ。
のたうち回って苦しみもがいてんのに「私の若い頃はもっと激しかったわよ」とか言ってニヤニヤしているだけなんです。
完ッッ全にセックスと勘違いしてますよね。
ええ。
それでも止めろよ。
アメリカの航空会社は便所セックスOKなんですか?
パンナムが潰された理由が今分かりました。
うちの爺さんはこんな国と戦争してたんですね。
いっそ搭乗員に金払ったら口でしてもらえるサービスとか付けりゃいい。死ぬ気でマイル貯めてやんよ。
フェラストクラス。
搭乗員がここまでクズじゃなかったら被害も最小限に食い止められたはずですが、それでは悲しいかな映画になりません。
未曾有の密室生物パニックが引き起こされてしまいます。
飛行機なのにヘビ地獄。
飛行機なのにヘビ地獄。
大事な事なので2回書きました。
後はもうお決まりの篭城パターンですね。
2階のファーストクラスが『ゾンビ』におけるショッピングセンターとなります。
ただ相手はヘビですから、狭い隙間からガンガン侵入しようとします。
手も足も出ないとはこの状況をさします。
ここから主演サミュエルの大活躍とか思ったらそうでもなく、まずは地上のFBIチームと連絡を取り合います。
血清の数がぜんぜん足りない(当たり前)。
死んだヘビの写真をメールして、FBIはヘビ学者と一緒に対応する血清を求め奔走します。
何だかんだ言って結構面白いです。
※ツンデレサーチさんから勝手に借りました。
たぶん定価でDVD買ってたら悪徳商法に引っかかった感があると思いますけど、最初からB級だと割り切って観ればそれなりに面白いんです。
うんこ映画とは製作費が2ケタくらい違います。
この設定を例えば『肉喰怪獣キラーツリー』あたりの予算で作っていたら、おそらく盲人に塩素ぶっかける程のひどいB級うんこ映画ができた事でしょう。
要するに金なんです(熱意全否定)。
されど、金があるからって駄目な部分は駄目なんですよ。
例えばキャスティング。
不必要な出演者をもう少し削った方がいいと思いました。
低予算ならせいぜいメインで5,6人しか出ませんから、より深くサスペンスが描けた可能性もあります。
逆に言うと、これだけの金をかけたからこんな無茶な企画が通ったという可能性もありまして、やっぱり低予算でサミュエル使ったりジャンボ飛ばしたりは不可能ですからね。
そういう意味で。
一番駄目なのは企画自体かもしれません(全否定)。
「ジャンボジェットの中でヘビがうじゃうじゃ出る映画を撮りたい」
こんなバカな企画にGOサインを出したのはどこのバカですか?
我がサイトを代表して お礼申し上げます。
いいやバカだ。
愛すべきバカこそB級映画の主成分です。
これがあるからやめられないんですよ。
私は映画を本当に愛しているんです方向性はアレですけども。
バカが刃物を持つと始末におえませんが、バカがお金を持つともっと始末におえないんです。
そこがいい。
だから愛せる。
感動なんてカンヌやベルリンに任せておけばいい。
私は生涯バカ一本で構いません。
そんなバカが書くバカなレビューに、もう少しお付き合いください。
真面目な話をしましょうか(突然)。
今回のこの『スネーク・フライト』ですが、結構エポックな面もあるんですよ。
例えば設定。
『巨大建造物or密閉空間』と『大量生物パニック』って、実は滅多に見かけない組み合わせだと思いません?
前出の『ゾンビ』が近いんですけど、この映画の白眉は「舞台の環境」だと考えます。
『ゾンビ』の場合は舞台の周囲にゾンビがいるから、結果として密閉空間になっています。
『スネーク・フライト』はそうではない。
すでに密閉された場所に大量生物を持ち込んでいるわけですよ。
飛行機という特殊な環境が、これを可能にしました。
あまつさえ、操縦士の死により別の種類のサスペンス、いわゆるタイムリミットに近い大道具が盛り込まれています。
『タワーリング・インフェルノ』とか『エアポート75』は巨大建造物であり密閉空間で、タイムリミットもありましたけどヘビもゾンビも出てきません。
ヒッチコックの『鳥』とか蟻映画の『黒い絨毯』は大量生物パニック映画のハシリですけど、フィールドはオープンでした。
私の知る中では『エイリアン』とか『ザ・グリード』は密閉空間であり生物パニックですが、彼らは単体なのですよ。
よって、『スネーク・フライト』は。
『密閉空間』と『大量生物』と『タイムリミット』を同時に扱った、稀有なパニック映画なのです。
バカだけど。
欲張りすぎて失敗する典型的なパターンです。
それを無理やり火薬とCGで誤魔化してしまう力技。
そんなお前が大好きだ。
皆さん、ぜひバカになりましょう。
バカになってこの映画を観ましょう。
そして何も考えずに数日後には忘れましょう。
2時間だけ大興奮。後はシラネ。
そういうスタンスが、この映画にはもっとも似合う鑑賞法だと思います。
オチはけっこう爽やかでしたよ。
なかなか素敵なエンディングでした。
うんこを期待してたらすっげー裏切られた感バリバリではありますが、ここにも大量にお金をかけられるハリウッドの底力を見た思いがしました。
…今回、チャック出ませんでしたね(笑)。
すっかり忘れてました。ちゃんちゃん。
『SNAKES ON A PLANE』2006:アメリカ
監督:デイヴィッド・リチャード・エリス
製作:ゲイリー・レヴィンソン
脚本:ジョン・ヘファーナン、セバスチャン・グティエレス
撮影:アダム・グリーンベルグ
音楽:トレヴァー・ラビン
出演:サミュエル・L・ジャクソン(他は別にいいや)
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