『肉喰怪獣キラーツリー』
(前編)





木!!!?


腰が抜けた方も多いと思います。


木だよ木。




 言うに事欠いて今度は木。

 人類は確実に滅亡へと向かっています。



 私は今まで様々なクリーチャーを見てきました。
 異星人だったりジジイだったり、時には猫だったりしたわけですが。




まさか木とは。





映画人のたゆまぬ努力と冒険心。






頭がフットー

しそうだよぉ。








 …こんばんは。
 野球やってたら砲丸が飛んできた気分バリバリの豪腕はりーです。

 ご覧の通り、この作品は野球はおろか球技ですらない可能性が高いわけですけど、人類の手の及ばぬ未知なるフロンティアを目指した意欲作である可能性も残ってます(ケシの実くらい)。

 肉食怪獣ですからね。

 ハエトリ草の立場がありません。



 その昔、ジョン・ウィンダム作『トリフィドの日』というSF小説がありました。
 SF黄金期における異色作にして、侵略テーマの新たなスタンダードを確立した傑作でした。
 巨大な植物が根を引き抜き人類を襲うという、今作品の大先輩みたいな設定なんです。

 今作品を観る前に、ぜひ一読をお勧めします。



そして読んだらすべて忘れてください。




 巨匠ウィンダムが単なるカプセル怪獣にされた気分になります。
 恐るべし。
 恐るべし肉喰怪獣。






 それではストーリーをご紹介しましょう。



静かな町ヘイゼルビルで、キャンパーらが謎の不審死を遂げる。

以前にも見た事のある現場の状況から、

犯人に心当たりがあったマーク・コーディは、

真相を確認するため調査を始める。


そんな事はないはずだが…と思いながらも。


しかし、執拗なまでに調査を妨害しようとする連邦森林管理局(NFS)に不信感を募らせるマーク。

そして、彼はNFSが厳重に管理していたはずの『奴ら』が盗まれていた事に愕然とする。


まさか、本当に犯人が奴ら、

『殺人木』だとは…!






この〜木

なんの木

さつじん木〜♪




 …皆さん気付かれました?

 これ続編なんですって。



 植物どころかサギじゃねぇかという気分に浸る所ですが、パッケージには何の説明も無いのです。

 せち辛い世の中です。
 初期のソフトバンクを彷彿とさせます。



 では行きますよ。
 心してDVDを差し込んでみましょう。






『TREE2・THE ROOT OF ALL EVIL』




 …この時点で鼻から魂が抜けて行くのが分かります。

 画面は夜、深い森の入口を映しております。
 おそらく国有林か何かでしょう。

 「進入禁止」と書かれた金網ゲートの前に、ナゾのトラック2台が来ましたよ。

 トラックにはデブ専大喜びの暑苦しいオッサンたち。
 親分らしきオッサンが叫びました。





「お前ら急げ!! 静かにな!!!!」





大声です。







どうやら夜の闇に紛れて。





クリスマスツリー用のもみの木を

盗みに来た模様です。









スケールの分かりにくい犯罪です。






 日本ならさしずめ、カド松用に寺の竹やぶ荒らすような行為ですね。

 新ジャンル・悪い木こりですね。

 私は木こりというのは優しくて大きいハイリホ〜だと思ってましたが、本場アメリカでは単なる小悪党だったんですね。



 しかし仕事っぷりはプロですよ。
 チェーンソーでバンバン切ってます。

 なんか、スコーピオン・キングのロック様を小太りにしたような兄ちゃんも出てきます。



 こいつの名前はロック&太で六太郎にしましょう。
 別にどーでもいいですけどね。
 すごいワープロみたいですね。



 この六太郎ですけど、大変幸せそうな顔で木に立ちションをしています。
 上半身しか見えないのでサービスシーンではありません。

 するとビックリ。

 木がションベン避けましたよ。

 木がいきなり倒れるんです。







単に六太郎のションベンパワーがケタ外れなのかも知れませんが、これは伏線ですね。

 「木が動く」っていう。

 チープさに泣けてきます。

 首尾良くツリーを盗んだ木こり軍団。
 丸大ハンバーグのCMを観て育ったすべての世代に深刻なトラウマを残しながら、意気揚々と引き上げて行きました。
 六太郎に限っては丸出しハンバーグでしたね。



 ここで場面は変わりまして。
 闇夜に焚き火を囲む、3人の男たちが登場しました。

 かたくなにデブ専なんですが、アメリカの木こりは全員こんな体型なんですかね。
 運動不足なんですかね。
 もっと自然と接する仕事をした方が良いと思います。

 んな事はどーでも良いんですけども。
 このシーンで、ようやく主役がチラ見できますよ。

 来ました来ました化け物視点。

 果たして木に目があるのかという根源的な問いはともかく、ホラー映画はこれですよ。
 この瞬間に3人組の死亡が確定しました。



 そう言えばこの「化け物視点」ですけど、一体どれだけバージョンがあるんですかね。
 色が変わったり、白黒やネガ反転したり、画面が歪んだり色々ですね。

 「木」というのを除けば良いシーンです。

 惜しむらくは、本当に一瞬しか映らないんですよね。
 このタメが良いんですが。



 そんなこんなでデブ3人、単に化け物の強さを見せるためだけに秒殺でした。
 このチラ見せ程度の怪物くんに幻滅しながら進みましょう。



 続いての場面は、なぜかいきなりパーティーですね。
 人が3人も死んでるのにガン無視してるのがポイント高いんですけど、きっとまだ露見して無いんでしょう。

 この時点では、まさか最後までガン無視とは思いませんでしたが。



 こういう映画って、パーティー的なシーンが多いですね。
 序盤だったらキャラ紹介。
 終盤ならもちろんパーティーの主役はモンスターです。
 食事もフルコースで用意されてますしね。

 ここで今作品の、人間側の主役が出てきました。







のび太としか言いようがありません。





 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマーティーの父親やってた役者によく似てます。

 もちろんイジメられっ子だった時代の。



 いつになったら巨体を揺らしてビフが出てくるか心配だったわけですが、今回の映画はタダでは起きません。






ビフはのび太の
女房でした。




当然「ジャイ子」に決定。







 このジャイ子、別に太ってないんですけど、言動や立ち振る舞いがもうジャイ子。
 ものっすごい濃ゆいドMでないと相手になりません。

 その理由はパーティーに出てきた成金おやじ。

 若干ポール・ニューマン顔って所がイラッと来ますが、実はジャイ子の元・恋人で。





のび太はおろか我が子の目の前で
年甲斐も無くイチャイチャしやがります。







本気でイラッと来ます。







 マジちょっと常識通用しない雰囲気なんですけど。
 普通、自分の旦那に相手を紹介する時に体だけの関係なんて言います?
 息子が見てるでしょうお母さん。

 またこのポール顔が本当にクズ野郎でして。
 夫と子供の前で抱きつくわキスするわ大変です。

 のび太ガン無視。




 空気の読めないポールです。




 『ハスラー』では最高にカッコ良かったのに、自前のポールを握ってどうする。







ポールのポール
ヤンチャなポール。










※この作品にポール・ニューマンは
含まれておりません。


牧も。







 私がもし旦那の立場だったら音速でブン殴ってる所ですけどね。

 それ以上にうちの嫁なら光速でブン殴ってるでしょうねポール。



 何しろ名前がアレですもん。

 ドギー・スタイルズ氏ですから。






ドギー・スタイル。







保健所に電話したくなります。







 せっかく楽しいうんこ映画と思ったら、ジャイ子とポールの失楽園を見せ付けられてしまいました。
 現在、開始から15分くらいです。
 このレビューは一体どこへ着地すれば良いのでしょうか。

 皆さんが置いて行かれないよう、豪腕なりに簡潔にまとめた話の流れを書いておきます。



  ・のび太は前作の生き残り。樹木恐怖症(ツリーフォビア)。
  ・友達の木こりが樹木に喰われた。
  ・よってのび太は夜尿症(寝ションベンたれ)。
  ・そのくせ何故かのび太はスキー場の警備監督。
  ・ポールはスキー場の実質オーナー。
  ・ジャイ子はビッチ。
  ・木こりはファット。
  ・なんかNFS(連邦森林管理局)の男女2人が暗躍してる。
  ・前作でのび太と共に戦った、森林研究員の男がいるらしい。




 樹木恐怖症ってのも何だか分かりませんが、そんなんで大自然の中、ごく普通に仕事をこなすのび太は本当に分からない。

 クリスマスツリーを見つめていると、前作で死んだ(らしい)木こりが幻のように浮かび上がったりします。



 本気で意味が分かりません。



 もしかしたら私は水木しげるのように、危うく木にされかかっているのでしょうか。
 それとも単に映画がクソなんでしょうか。

 長々と書いておりますが、今のところ怪獣らしきモノは製作者の心の中にしか見えません。
 偶像崇拝を禁じたイスラム教徒のような覚悟で観続けるしか道は残されていないようです。

 アラ〜まあ。






※海外のサイトから拾ったのですが、
私は相当に危ない橋を渡っているようです。




 しかしここで再度の場面転換。
 大学の会議室みたいな場所で、一人の男がスライドを前に熱弁を振るっています。

 彼こそはもう一人の主役。
 のび太の友達、(たぶん)アクション担当の森林研究員です。
 無精ヒゲが一応セクシーに見えない事も無いですが、若干のホモらしさを漂わせている所はさすが本場アメリカですね。

 話の内容はもちろんアレ。

 肉喰樹木は本当にいるんだよ信じてよという内容です。

 その姿は地動説を訴えたガリレオのごとく。






「…肉喰の樹木なんです!」






「新鮮な肉を喰うよう改良されているんです!!!」






もちろん誰も信じませんが。







 常識で考えりゃ当然ですよ。
 その辺の木が人を襲ったらリンゴ農家とか壊滅です。
 「もみじ狩り」が別の意味でリアルさを帯びてきます。

 それでもやめないガリレオ君。
 必死に集めた資料や映像で、大学教授たちに戦いを挑みます。



 「かつてベトナムでは、125人がこいつに喰われた」



 「それの原因はシカの群れだったはずだが」



 どっちにしろ無ぇよ。



 挙句の果てに学長さんの捨てセリフ。






「まるで低予算のホラー映画にしか見えないがね」








言っちゃったよ。










 世にも珍しい現象です。
 うんこが「うんこ」と認めましたよ。

 基本的にB級以下、いわゆる「うんこ映画」ってのは。
 どんなに低俗で低予算で糞シナリオで学芸会なみの大根役者でも、本人たちは大真面目という点こそが美徳であると存じます。

 作ってる方は必死。
 それでこそ「うんこ」なんです。



 それを自分で認めちゃオシマイよ。



 どうか開き直らないで、最後まで堂々としていて欲しかった。
 大地にしっかり根を張った樹木のように。

 そういうのが歩き回るような映画作っちゃうから駄目なんですかね。



 それはともかく。
 意気消沈のガリレオ君、先輩の教授に泣き付きました。
 唐突すぎて笑えるシーンですが、この教授も相当に唐突ですよ。
 いきなり昔語りを始めてしまうのです。

 しかも内容が電波ゆんゆん。
 なんか、1個の「どんぐり」を出しましてね。






「これは生物兵器だ」


「私はこのどんぐりに一生を捧げた」


「この1個のどんぐりに世界の命運がかかっている」







「だから盗んで逃げた」

「そしたら命狙われた」







「お前にやるわ、これ」








どこから突っ込めば良いのか。







 普通、ホラー映画は配役もパターンなんですけどね。
 信じない権力者とかシャワー浴びる巨乳とかね。

 今作品の場合。



 主役=のび太。



 寝ションベン。



 木こり=デブ専。



 ポールのヤンチャな下半身。



 電波教授のどんぐり大作戦。



 ジャイ子=浮気。



 巨乳無し。






 …木はどこ行った。






 まだまだ序盤なんで詳しく書こうかと思ったんですが、詳しく書いてこれです。

 大自然の脅威です。

 神は我々に極めて過酷な試練を与えているようです。



 いつまで経っても始まらないのが豪腕レビューの常なんですけど、今回もまた酷いですね。
 そういうわけで続きますよ。
 次回、いよいよキラーツリー様にご登場願いましょう。







ほんっと爆笑できます。






マジ爆笑しますよ。







 『肉喰怪獣キラーツリー』レビュー後編。



 その素晴らしいクオリティ。






紙芝居なみのCGに
悶絶必死。











…楽しみにお待ちください。











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