孔子

[作品情報] [収録状況] [感想紹介]

作品情報

作品名 孔子
さくひんめい こうし
初出誌 新潮
初出号数 昭和62年6月〜平成1年5月
連載回数 6回
備考 平成2年『野間文芸賞』受賞[2]

収録状況

文庫/全集 文庫本名/副題
新潮文庫 - 孔子
井上靖全集 22 長篇15

掲示板から

おなまえ 記事No.
日付
書き込みから
yakkoさん [761]
2002/08/16

「孔子」を少しずつ読み続けてますが、穏やかな語り口の向こうに子の姿が浮かぶようになりました。「論語」は、皆、何らかの形で学んでいるのでしょうから、いろいろな思いがあると思います。しかし、このような形で書かれるとは・・・想像していた構成と全く違っていました。「本覚坊遺文」と同じく、近くにさぶらっていた人の語りを通していますが、先生の深い想いが静かに流れているようです。たまにひょっこり強くメッセージが現れて、「これを伝えたかったんですね」と返事してしまいそうになります。病を得て、しかも大きな手術を経て書かれた、この「孔子」の原稿へ先生はいろいろな気持ちを盛り込まれていたのではないでしょうか。

yakkoさん [775]
2002/08/26

「孔子」を読み続けて来ましたが、終わりに近づいてきました。穏やかに語られている子の言葉の数々が、染み入って来るようです。夜更け、一人原稿に向かって子の言葉を書き続けていた先生の気持ちはいかがだったのでしょうか。病を得て、人々の心にゆっくりと説きたい気持ちだったのか、それとも乱世の数千年前を見ながら、現在を見ながら湧き上がる想いを書き連ねていたのか。

ページをめくる度に、先生にふと気持ちが移ってしまいます。

ヘディンさん [1061]
2003/07/17

「天命」の話が出ましたね。「孔子」の中でもメインテーマとして扱われていますが,私も「孔子」を通じ,80歳を超えて人生というものを語られた井上靖さんから「人としての生き方」を教えていただいたように思えました。2,3年程前,仕事上ですごくいやな事があり,何のために頑張っているのかわからなくなり,自己否定しかけていたことがあったのですが,その時,たまたま「孔子」を読み始めたんですね。何気なく読み進んでいると,悩み煮えたぎっている苦しい胸の中に清冽な水が静かに流れ込んでくるようにえん薑(字が出ない)大人の静かな語り口が驚くほど素直に心に染み入ってきて,心が落ち着いてくるのを感じました。そして「天命」について。人は生を受けた以上精一杯正しく生きなければならない,それが報われるかどうかはわかならないし,報われることを期待してもいけない。だけど正しく生きようと努力をしなければならない。今手元に本がないので正確ではありませんが,確かこんな内容だったと思います。これを読んだとき,体を縛っていたなにかが一気に取り払われたような感覚になりました。「ああ,何だ,やっぱり間違っていないじゃないか,これまでのやり方で頑張ろう。」と思って,それまで以上に前向きに生きられるようになりました。以来,仕事などで醜く澱んだ部分もあるかもしれないけど,それに浸ってしまえば,ある意味楽なんだろうけど,その中でも自分なりに正しく生きようと努力できるようになったのは,この「天命」の有難いお話を胸にしまってあるからです。

社会でうまくやっていくためには,清濁併せて呑み込んでいかなければならないのかもしれませんが,それが時々うまくできない不器用な自分が可愛かったり,一方でもっと正しく生きろ!と心の中で自分に叱咤激励していたりで,決して出世はしないだろうけど,できるだけ自分に正直に,先生の作品に出てくる登場人物のように強く人に正直に生きていきたいと思う次第であります。

参考

[2] 旭川市・井上靖記念館ホームページ

文庫本限定!井上靖館作品