掲示板ログ 2003年7月


[1045] 穂高 投稿者:カシュガル 投稿日:2003/07/03(Thu) 01:46
自作朗読「氷壁」聞くの忘れました!最近お疲れモードで頭がぼんやりしているんです。楽しみにしてたのに残念。その前にラジオを持ってない私。どうやって聞くつもりだったのでしょう(笑)ばりばり蟹座様いかがでしたか?

7月になり夏山シーズン到来ですね。井上靖は穂高がお気に入りで何度も登ったようですが、私も穂高大好きです。初めて登ったのは幼稚園の時。山男の父に無理やり連れてかれました(笑)2年前にも登りました。個沢から見る穂高連峰は雄大ですよ。前穂や奥穂からの眺め(特に日の出までの30分間)は、この世のものとは思われないほどの美しさです。みなさん、氷壁の舞台穂高にぜひこの夏チャレンジしてみてはいかがでしょう?
ザイルが切れませんように(笑)



[1046] 上高地から穂高 投稿者:三毛猫 投稿日:2003/07/03(Thu) 09:52
自作朗読、聴きましたよ。1966年に放送したものものだそうです。

『氷壁』では、小坂が落ちてゆく少し前の場面から、もしや100メートル下のAフェースに小坂は乗っかっているか・・・しかし切れたザイルを手繰り、その希望も失せ、こ・さ・か・・と、もう一度呼のも虚しく声も出せなくなった、辺りまでの、井上靖の声での朗読と、氷壁についての解説でした。

解説では、作品を書く前の年から、執筆中は何度も、またその後も現在まで毎年欠かさず、穂高へ行っているということ。登山は、遊びではなくて、闘い、遭難は、負けなんですね、というようなことをおっしゃっておりました。
言い訳の聞かない、魚津の心理と、その負け、とうことに今更ながら想いを巡らしますと、あぁもう一辺氷壁を読んでみようか、と思っています。

夏の上高地から穂高は爽やかで本当にすばらしいと思います。私は今年は無理ですが、来年は是非行きたいです。ザイルの切れる心配の無い、ハイキングで^^ >カシュガルさん。

この番組では『天平の甍』も読まれたのです。天平の甍、氷壁の順でした。
こちらも、クライマックスの、経巻を積んだ遣唐船が薩摩に向かう途中、嵐にやられ、次々に経巻が海に沈んでいき生涯の仕事が無になる様をみる学僧の姿のあたりを読まれました。
私は二作とも、とても感動して本を閉じたのを覚えています。いい作品だな、と常々思います。
今回、こうして聴けて感謝です。

[1047] 長野人ですが 投稿者:七夕 投稿日:2003/07/03(Thu) 20:19
こんばんは。いつも掲示板は読ませていただいてます。先日の井上先生の朗読はテープに録音して、さっき聴きました。もっと聴きたいですね。
NHKには講演会などの録音が山のように残っているはずなので、もっと放送してほしいものです。私は登山はしませんが、昔の明科あたりからの眺めや、いまの穂高駅付近からの眺めはいつ見ても、何度見ても飽きませんね。屏風のように聳える山々は人を惹き付ける魔力があるようです。無性に見たくなります。



[1048] ラジオ聞きました 投稿者:ばりばり蟹座 投稿日:2003/07/05(Sat) 00:56
>カシュガルさん
1日の放送は聞き逃してしまったのですが、2日の再放送を聞きました。
朗読は、プロの読み手さんのように抑揚を付けたりといったものではなく、淡々としたものでしたが、そこがまた井上靖の作品に合っていて、実に味があってよかったと思います。
バッチリ録音してあるので、聞きたくなったら仰って下さいな。
次はラジオのある友人の家にでも押しかけて、ついでに井上靖ファンを増やしてきましょう(笑)

実は穂高は見たことも無いのですよ。
けど、カシュガルさんの話や七夕さんの話を聞いていると、惹かれますね。
安曇野に友人がいるので、機会があれば行ってみたいなぁ。
日が昇るまでの穂高からの眺め、見てみたいですね。

>三毛猫さん
『氷壁』の解説は印象深かったです。
特に、他の山には登らず日高オンリーの部分と、遭難者は被害者ではなく敗者なのだという部分。
前者は、なんだか井上靖らしいな〜なんて思えるのに対して、後者は山登りの厳しさを教えられたり。

穂高は行ってみたいですが、僕も三毛猫さんに賛同です。
ザイルの切れないハイキングで(笑)
後は落石?
カシュガルさんに連れて行ってもらって、穂高の朝焼けを見せてもらいましょうか(笑)

>七夕さん
はじめまして!
掲示板はいつも見て下さっているとのことで、嬉しいです♪

本当に、ラジオはもっと聞きたかったです。
聞き入ってしまい、すぐに30分が経ってしまいました。
NHKも、井上靖特集とかしてくれないものでしょうか。

長野といえば、井上靖の小説の舞台も多いですよね。
山と言えば、七夕さんと同じように、長野の山の眺めについて書かれた作品があったような気がします。
何だったかな?思い出したら、また書き込みしますね。


[1049] 梓川の上流 投稿者:七夕 投稿日:2003/07/05(Sat) 08:31
おはようございます。
今朝はさわやかですね、富士のあたまが雲間から少しだけ見えます。

穂高からのアルプスの景観や歴史、登山紀行文として小島烏水の「梓川の上流」は登山しなくても読みながら山道を行くことが出来ますので「氷壁」を片手に、地図を広げて眺めながらの、わたしのような書斎型登山家にはもってこいの本です。烏水は日本山岳会の初代会長なので井上先生もきっと読んだのではないでしょうか。

たまに寄り道しますので、どうぞよろしくお願いします。

[1050] 七夕 投稿者:ばりばり蟹座 投稿日:2003/07/08(Tue) 00:55
今日は七夕ですね。
昼まで降っていた雨も夕方には止んで、今は星空が見えます。
街の灯りのせいで、さすがに天の川は見えませんが、織り姫と彦星は綺麗に輝いてますね。
最近は七夕といえば雨だったような気がするのですが、今日は晴れて良かった!

>七夕さん
お、富士山が見えるというと、長野でも南の方でしょうか?

地図を眺めながらの書斎型登山とは、こちらも面白そう。
この楽しみは、僕に合っているかも。
小島烏水の『梓川の上流』、覚えておきますね。
大学の図書館にないかな?

こちらこそ、これからもよろしくお願いしますね!

[1051] 迷った時は… 投稿者:ヘディン 投稿日:2003/07/08(Tue) 11:20
ご無沙汰しています。最近長野の話題で持ちきりですね。そういえば、目覚ましテレビの「トロと旅する」のコーナーは今週信州安曇村がロケーションになっていて、上高地の神々しい風景が映されています。ここ1、2年は行けていませんが、今年の秋頃には必ず行きたいです。徳沢にある氷壁の宿「徳沢園」には、氷壁の1ページ目の原稿と、先生の写真もありますし、また泊まりに行かねば…と思っています。
今年の梅雨は長いですよね。毎日雨続きで、何となく気持ちもジトジトしがちで…。最近仕事でのイヤな事を思い出し、仕事がオフの今日は、気分転換に出かけたいところですが、やはり雨。こういう時は先生の作品を家の中でじっくりと楽しもうと思います。日々の生活(特に仕事)の中で、嫌な事があったり、何となく迷った時、先生の作品を読むと、すーっと不安や迷いが消えていきます。私にとってはまさに精神安定剤、人生の道しるべ!やめられません、これだけは。

>ばりばり蟹座さん
ご無沙汰していてすみません。夏の紀伊半島一周旅行は、紆余曲折を経て、東北一周旅行にグレードアップしました。紀伊半島は、次の楽しみに取っておきます。

[1052] アフガン 投稿者:ガメラ 投稿日:2003/07/10(Thu) 23:24
梅雨がなかなか明けませんね。桜前線はあんなに速く北上してしまうのに、梅雨前線のおそいことおそいこと…。
ばりばり蟹座さま、自分も先日、アフガニスタン写真展に行って来ましたよ。井上靖文学館自体初めて入るので、まずは1階の、三部作紹介と井上靖の生い立ちをリンクさせた展示コーナーからじっくり見入ってしまいました。それから「井上靖が見たアフガニスタン」、よかった!河や建築物、市場などの写真一枚一枚から、石坂浩二のナレーターの声が聞こえてきそうな…そんな雰囲気でした。また館内には自分1人しかいなかったので、解説文や地図などもゆっくり見てました。ヘディンさんやカシュガルさんの名前の由来もわかりました。
先週の世界遺産で、「アフガニスタンの岩壁に彫られた仏像は、タリバンによって破壊されてしまったが…」というようなことをやってました。井上先生も天国でお嘆きになっている1人でしょう。でもとにかく一日でも早く、テロのない平和な世の中がやってくることを祈るのみです。

[1053] 梅雨 投稿者:ばりばり蟹座 投稿日:2003/07/11(Fri) 01:23
>ヘディンさん
トロといえば、『どこでもいっしょ』のトロですよね。
目覚ましテレビに、そんなコーナーがあったとは。
最近は掲示板でも長野の素晴らしい自然の話ばかり、見たい風景が増えていくばかりで。
自然や井上靖とは関係ないですが、数年前に長野県庁に遊びにいった時に、地元の人や県庁の人に親切にしてもらい、長野には勝手に親近感も感じていたりします(笑)
また行きたいなぁ。

夏の旅は東北一周ですか!
井上作品つながりなら、青森で『海峡』の景色を眺めたり、山形で木乃伊を拝んだりでしょうか。
北上市には『日本現代詩歌文学館』の『井上靖記念室』も。
いいなぁ、めいっぱい楽しんできて下さいね!


>ガメラさん
本当に、この梅雨はいつまで続くことやら…。
湿気どころか水気ですよね、参ります。

アフガニスタン写真展、行ってこられましたか。
文学館は、落ち着いて見られるので、長時間でも楽しめるところですよね。
『しろばんば』のモデルになった方々の写真も展示されているし、見所満載ですし。
ヘディンさんやカシュガルさんの名前の由来は、僕も地名を目にして「おぉ、これが!」とか勝手に感動してました(笑)
アフガニスタンの写真は素晴らしいものばかりなのですが、今はもう残っていないというのが残念でなりません。
壊された遺跡はもう戻ってきませんが、せめて人々には平和な暮らしを取り戻して欲しいですよね。

[1054] 行ってきました 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/12(Sat) 20:30
暑いですねー。その後、クーラーは電源が入るようになりましたが、外の方が涼しいくらいの働きです。

おなかが痛くなくても行けるように、と土日にアフガニスタン写真展へ行くことを狙ってましたが、なかなか都合がつかず、今日最終土曜の滑り込みで行ってきました。私も当初、一人だったのでゆっくり見られて大満足。子供の頃、先生の本やNHKのシルクロードとマルコポーロの冒険を見て大人になったらいつかは行きたい国は、アフガニスタンだった私です。その頃の気持ちにもスーッと戻ったりしました。

私は、茶店の写真2枚がとてもよかったです。静けさと安穏さが満ちていて。1階にありましたアフガニスタンの人が訪れた記事の中で、訪れた方が「破壊される前の、平和な頃のアフガニスタンがここにある」といった主旨の言葉を仰ってらして、何度も記事を読み返してしまいました。

バーミアンの石仏やストウーパなどが破壊され、地中に埋もれたままの遺跡たちの傍にも地雷が潜んでいるんですよね。何てことしてくれたんだ、という気持ちでいっぱいです。私が憧れ続けたアフガニスタンは、もうないのでしょうか。せめて、これから未来に向けてあの静けさと安穏さが、もう一度アフガニスタンに戻るよう、祈ってます。

管理人さま、私も先生のカメラの話は面白く読ませていただきました。その前に、司馬遼太郎氏が井上先生からカメラ指南を受けた話も思い出しながら写真を見ると、面白かったです。
そして、毎日新聞社刊の3万円くらいの本!限定本で著者印つき。どこのお宅の本棚にあるんでしょうね。

[1055] 雨続き 投稿者:ばりばり蟹座 投稿日:2003/07/15(Tue) 02:05
今日も雨……梅雨ってこんなに長かったっけ?
なんて思いつつも、今日は雨のおかげで涼しい一日でした。

>yakkoさん
行ってこられましたか〜、ギリギリで間に合いましたね♪
茶店の写真というと、確か井上靖の文章と共に展示されていた、茶店で休み人達の写真ですよね(違ったらごめんなさい!)。
今はアフガニスタンも大変だと思いますが、また写真のように茶店でのんびり出来る日が来るといいですね。

僕は司馬さんの方の話は知らなかったのですが、その話も知っていると、より面白いエピソードでしたよね。
しかし、やはりあの本はyakkoさんも気になりましたか。
僕も「お、欲しいかも」なんて思ったものの、値段を見て諦めました(笑)
当時で、あの値段ですもんね。

[1056] 梅雨の晴れ間 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/15(Tue) 23:08
こちらは、今、ぽっかりと月が出ています。久々に丸い月を見ました。

管理人さま。茶店の写真は二枚連続してあった写真です。のどかそうな、ほっとした感じのお店でした。近所にあったら絶対に行きたいお店です。

あの本、本当に欲しかったですよね。私も思い切り目が釘付けでした。文学館には、ノーチェツクの本が結構ありまして、活字だけなら全集にあるんでしょうけど、写真と一緒に見たい本をガラスケースの向こうに見つけたときには、地団駄踏みたい気分になります。

ところで、その本を読むことはできませんでしたが、「ある落日」を購入しまして、面白さに夜、一気読みしてしまいました。「恋愛小説」とひどく気軽に読み始めましたが、人生に向かう姿勢が強く伝わってくるような作品でした。

まだまだ強く、高みに向かっていない私はかなりガツンとやられてしまいました。

[1057] 写真展 投稿者:カシュガル 投稿日:2003/07/16(Wed) 02:16
yakko様もガメラ様も写真展に行かれたんですね。羨ましいです。「茶店の写真」と「あの本」に興味津々。実は今度の連休に伊東に行くのでその帰りに文学館によろうと考えているのですが、もう写真展終わってしまったんですよね。なんと運の悪いこと。
話は変わりますが写真展といえば、92年(91年かも)に東京の高島屋で「井上靖展」が開催されました。当時田舎者の中学生だった私は単身上京するのは初めて。大都会の喧騒におどおどしながら着いた頃にはぐったり。それでも愛用の登山靴や机、孔子の直筆原稿、沢山の写真などの素晴らしい展示品に興奮の連続でした。さて、その帰り道のことです。地下鉄のホームに井上靖の写真入りの大きなポスターが貼ってあるではありませんか。「井上靖展」のポスターです。レイアウトが美しく井上靖の笑顔に心が引かれました。「どうせ今日が最終日だし明日には捨てられるから」・・・
あたりを見回し、よし今だ!
綺麗にはがして大事に持ち帰りました。
それから10数年。
私の部屋には今もそのポスターが飾ってあります
というわけで写真展から、昔の犯罪を思い出してしましました(笑)

[1058] 拍手しました 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/16(Wed) 22:55
カシュガルさま、中学生で「井上靖 展」に単身上京とは、すごい行動力ですね。あの洪作くんでも中学生では、藤尾くんたちと三津に行ったくらいでしたのに。しかも、苦労して?手に入れたポスターが今も部屋にあるとは、思わず拍手しました。

「ある落日」を読んで、「通夜の客」等不倫の作品は先生の中でもいくつかありますが、若くて聡明という女性が不倫を続けているという設定は珍しいと思いました。「憂愁平野」も一線を越えてしまうのですが、関係は続けませんでしたし。しかし不倫とは言っても、清子のひたむきな気持ちと悲しさが、嫌悪感を抱かせませんでした。それどころか相手の小杉の邪心なく清子を求める姿に、私なんかは二人の仲に納得までしてしまったのですが、先生は人生に正しさを求めたようです。作者の目に、胸を衝かれました。

 解説で現代の女性が清子の生き方に同感するかどうか、とありましたがこの問題は時代を問わない問題であろうし、決して古い型の女性には思えません。現代映画でリメイクしたら、とても面白いものができそうなんですけど。特に人生に高みを求める姿勢は、今も昔も大切な主題だと思います。

 人生に高みを求める生き方、それを強く感じた作品でしたが、同時に先生の生きることに対する姿勢が、ところどころに表れた印象的な作品の一つになりました。お勧め印をつけましょう。しかし、ますみ嬢の子供くささには小説を離れて腹をたてました。実際、ああいう子っていますよね。余りにもなリアルさに未だ、ますみ嬢にカリカリしています。

[1059] 間違えました 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/16(Wed) 22:58
怒りの余り・・・
ますみではなく、まさみでしたね。二人とも私の友人にいますので、普段でもまぎらわしいです。

[1060] 天命 投稿者:カシュガル 投稿日:2003/07/17(Thu) 02:39
yakko様、洪作くんと比較して頂き恐縮です。でも洪作君にはかないません。だってみんなに台北に行くと約束しながら四高の柔道合宿に参加してしまったんですもん。後日宇田先生?のご立腹の様子にはおもわず笑ってしまいました。
井上靖の描く人間関係ってとても清らかですよね。三部作はもちろんですが彼の恋愛小説もそうではないでしょうか。破局する愛でも、不倫の関係でも、人間の嫌らしさ醜さではなく、運命の序列に身を任せる人物が描かれているような気がします。もちろん背負わされた運命にそれぞれの人物は抵抗はするでしょう。しかし最終的にはその運命の元、正直にあるがままに生きようとする姿を描くことで、何かすがすがしい余韻さえ感じます。yakko様は「先生は人生に正しさを求めた」とお書きになってますが私もそのように感じます。井上靖は、晩年孔子の中で「天命」という言葉について書いてますが、どんな結末を迎えようとも清く正しく生きる人間の姿を信じていたんでしょうね。四校の柔道時代に「天井の星の輝きと我が心の内なる道徳律」という言葉に感銘を受けその真の意味を探求し続けた靖青年は、晩年に「天命」という言葉に帰着したと思います。その意味で彼の描く登場人物は人生に正しさを追い求める求める彼自身の姿であり、たとえ恋愛小説であっても読者に人間の醜さや嫌悪感を抱かせなくしているのではないでしょうか。
長々とわけの分からぬことを書いてしまいました。実は「ある落日」まだ読んでないのです。今度読みますね(笑)

[1061] 天命ですよね。 投稿者:ヘディン 投稿日:2003/07/17(Thu) 11:23
カシュガルさんから「天命」の話が出ましたね。「孔子」の中でもメインテーマとして扱われていますが,私も「孔子」を通じ,80歳を超えて人生というものを語られた井上靖さんから「人としての生き方」を教えていただいたように思えました。2,3年程前,仕事上ですごくいやな事があり,何のために頑張っているのかわからなくなり,自己否定しかけていたことがあったのですが,その時,たまたま「孔子」を読み始めたんですね。何気なく読み進んでいると,悩み煮えたぎっている苦しい胸の中に清冽な水が静かに流れ込んでくるようにえん薑(字が出ない)大人の静かな語り口が驚くほど素直に心に染み入ってきて,心が落ち着いてくるのを感じました。そして「天命」について。人は生を受けた以上精一杯正しく生きなければならない,それが報われるかどうかはわかならないし,報われることを期待してもいけない。だけど正しく生きようと努力をしなければならない。今手元に本がないので正確ではありませんが,確かこんな内容だったと思います。これを読んだとき,体を縛っていたなにかが一気に取り払われたような感覚になりました。「ああ,何だ,やっぱり間違っていないじゃないか,これまでのやり方で頑張ろう。」と思って,それまで以上に前向きに生きられるようになりました。以来,仕事などで醜く澱んだ部分もあるかもしれないけど,それに浸ってしまえば,ある意味楽なんだろうけど,その中でも自分なりに正しく生きようと努力できるようになったのは,この「天命」の有難いお話を胸にしまってあるからです。
社会でうまくやっていくためには,清濁併せて呑み込んでいかなければならないのかもしれませんが,それが時々うまくできない不器用な自分が可愛かったり,一方でもっと正しく生きろ!と心の中で自分に叱咤激励していたりで,決して出世はしないだろうけど,できるだけ自分に正直に,先生の作品に出てくる登場人物のように強く人に正直に生きていきたいと思う次第であります。
カシュガルさん,何もわけのわからない事は書いていませんよ。私の方がかなりわけわからなくて恥かしいです。でも,それぞれ別の人生を歩いてきたにも関わらず,作品を通じて同じようなことを感じていられることが嬉しいです。

PS 夏の東北旅行では,北上市の日本現代詩歌文学館に寄ってみたいと思います。楽しみです。今は「海峡」のクライマックスを読んでいます。


[1062] 天命と運命 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/17(Thu) 23:49
カシュガルさま、ヘディンさま。染み入る話をありがとうございました。
学生の頃、井上先生のストーリーテラーの部分を追って読んでいましたが、この年になって先生の心深く目指された一筋のものに、あるときは憧れ、そして救われています。私が一番救われたのは「星と祭り」ですけど・・・
お二人が「運命・天命」と出された言葉の次に、私は先生が常々よく出されていた「克己」という言葉を思い出していました。「あすなろ物語」に強く押し出されている一章がありますよね。正しく生きる努力というのは、先生の永年の主題かもしれません。先生の作品の透明な美しさは、詩人だからというよりも、追い求めた主題の賜物でしょうか。とかく自我を強調することがもてはやされる昨今ですが、その根底では正しくありたいですね。未だ正しく生きたと私は言いがたいですが、目指していきたい道です。

ところで私はまだ「海峡」は読んでいません。また感想を教えてください。読んでいないといえば「わだつみ」もまだなのです。この夏は「わだつみ」をじっくり読んでみようかな。どなたか読まれた方、いらっしゃいますか?

[1063] 天が見ている 投稿者:カシュガル 投稿日:2003/07/18(Fri) 01:57
へディン様のお話心に染み渡りました。「天命」のお話を胸に日々頑張っておられるのですね。私は本の中で「天命」という言葉に出会った時、子路のようにフラフラと歩き出してしまいました(笑)一つの作品を通して共感し合えるって素晴らしいことですね。私も正直に正しい道を歩みたいと思います。

yakko様、「わだつみ」は読んだことがあるのですが、だいぶ前なのですっかり内容を忘れています。主人公「桑一郎?」がアメリカに移民して・・・思い出せません。でもアメリカという異国の地で苦悩や挫折をしながらも、ひたむきに頑張る主人公の姿が印象的でした。本来なら4部作のはずが3部までしかなく物語が途中で終わってしまうのが残念ですが、先生には珍しくアメリカが舞台の小説なので新鮮味があるかと思います。

話は変わりますが、私は明治時代に外国に渡った日本人について興味があって、それに関連する本を読むのが好きなのですが、なかでも星新一の「明治、父、アメリカ」という本がお勧めです。星新一の父が苦学をしながらアメリカの大学を卒業し・・・というお話なのですが、野口英世をはじめ明治を代表する人物との交友が描かれ楽しく読めます。みな様もぜひ一読してみてはいかがでしょうか。ちなみに星新一の祖父は「小金井良精」(違っているかも)といって、以前に書いた足立文太郎(井上靖の祖父の妹の子供)と交友があった人物なのです。不思議なつながりですよね。知っている方がいたらごめんなさい。

[1064] 海峡 投稿者:ヘディン 投稿日:2003/07/18(Fri) 13:04
昨晩深夜,ようやく「海峡」を読み終わりました。今年の1月末に読み始めたのですが,仕事で忙しく何回も中断し,半年かけてようやく読み終えました。
この作品の変わっているところは,主人公として最後まで登場する人物がいないこと。ある婦人雑誌の出版社に勤務する杉原と杉原が惹かれる宏子,その上司の松村,そして松村の親友で本業の医者を放擲して野鳥の声を聴きに全国を飛び回る庄司,松村が密かに惹かれる庄司の妻 由香理,この5名が場面場面でそれぞれ中心的な役割を演じます。

最後は,宏子にふられた杉原と妻に愛想をつかされた庄司がシベリアへ渡っていく鳥の声を録音するため,3月の青森県大間崎へ向います。詳しく述べると読む楽しみがなくなってしまいますのでやめますが,下北半島の厳冬の海沿いを電車・バスを乗り継いで突端まで辿り着く旅の心細さとまわりに広がる風景の美しさ,そして旅というものの本来持っている(と私が考えている)厳しさ。自分が忘れかけていた旅の醍醐味・厳しさを思い出し,私も冬の大間崎にバスを乗り継いで出かけ,一人考えなければならないことが沢山あるように感じました。yakkoさん風に言えばガツンとやられました。今が夏であることが残念です。

6年程前の年末年始,フランスのノルマンディー地方にある,海に突き出た岬(?)にそびえ立つ「モンサンミッシェル」という現在世界遺産にもなっている大聖堂を見たいがために,急に思い立って一人で出かけたことがあるのですが,その時に列車を乗り継ぎ,バスを乗り継ぎ疲れ切ってようやく聖堂の麓に到着し,暖かくしてくれていたホテルの部屋に入った時の感激と,次の日の早朝 誰もいない聖堂の麓のバス停で,寒さに震えながら凍てついてどこまでも歩いて行けそうな錆びた色の氷の海面を飽かず眺めていたことを思い出しました。

[1065] 無題 投稿者:座禅草 投稿日:2003/07/18(Fri) 14:38
おやおや、不思議な名前がでてきましたね。小金井良精。いま検索にかけたらこの関係、膨大に出てきましたよ。星新一「小金井良精の記」も。恐ろしく分厚い本なんですよ、これ。昔、古本やで見付けて読んだことがあります。何故そんなものを読んだかって?何故だったろう? 森鴎外を調べると、すぐ小金井良精夫人・喜美子がでてくるのですよ。鴎外の妹。どうも彼女は「お兄さまコンプレックス」のだったらしいのですが。おなじみの「小公女」「小公子」、(「秘密の花園」も?)を翻訳して日本に初めて持ち込んだ人でもあるらしい。(告白・私は大人でありながら鴎外よりもバーネットに興味をもっていた、ピーターパン型の本好きです) 
この小金井ご夫妻が、鴎外周辺で活躍をするのは、小説『舞姫』です。鴎外が留学先でつきあっていた女性が鴎外帰国後、実際に追って日本に来るのですが、この時、小金井夫妻がかなり、心なしの扱いをして「お帰り」頂いたらしいのですね。鴎外研究では有名なハナシ。しかしこの良精氏は本来そんな所で名を残すはずではない、立派な研究者だったようですよ。1例をあげれば、日本の先祖はコロボックルかアイヌか?という有名な論争の当事者。良精主張のアイヌに決着がついたようです。「コロボックル」についてはこれから検索に・・♪
それにしても、それが当HPにどう関係するのか?・・さあ??・・

[1066] 考えないといけないこと 投稿者:yakko 投稿日:2003/07/21(Mon) 16:58
ヘディンさん、こんにちは。私もいろいろと考えないといけないことだらけなんですけど。

「海峡」を読み終えられたんですね。詳しい解説、ありがとうございました。そんなガツンとやられる、と言われましたら読んでみたくなってしまいますね。余り見かけませんので、やはり図書館でしか手に入らないのでしょうか。「旅の醍醐味・厳しさ」とは、また旅に駆りたたされそうなフレーズですね。ノルマンディーのお話しも興味深く読ませていただきました。

話は変わりますが「舞姫」でその下りが出て来るのですか?高校時代、暗誦でさんざん読まされたのですが、今となっては冒頭文とエリスのセリフしか残ってません。しかし、いつものことながら座禅草さんの守備範囲は広いですねー。

[1067] 名作に水さすつもりはありませんが。 投稿者:座禅草 投稿日:2003/07/21(Mon) 23:51
いいえ、小説「舞姫」の周辺談みたいなもの。基本は確か、小金井貴美子女史が兄・鴎外について書いた手記で、自ら詳しくその妨害の経緯を書いたものだったと思います。研究者は、あの時代にはるばる船で鴎外を慕ってきた外国女性へのおもいやりもない、また、冷淡にあつかっても自分たちは名家なのだから当然と世間も考えると、思っていたらしい貴美子女子の手記に、多くの研究者もいささか疑問を覚えるようです。 2・3ヶ月ほど前にもなにテレビでか、鴎外特集をやっていたときやはりそのことを放送していましたよ。名作に少し水をさす舞台裏。

[1068] 夏だべー 投稿者:湖の子 投稿日:2003/07/22(Tue) 22:55
みなさまご無沙汰しております。給料日までどう乗り越えようか思案中の湖の子です。
来週中までには各地で梅雨明けする見通し。冷房の良く効いた図書館でまったり過ごすか、海の子と化すか、汗だくになって働くか、選択の余地はありませんが、兎に角、これから夏本番ですね。

そういえば小学生の時、夏休みに臨んで、一日のスケジュールを計画させられましたね。みなさまは今夏、いかが過ごされるのでしょう。
湖の”夏イチ”は「憂愁平野」。”梅雨イチ”はなぜか「あすなろ物語」でした。へこんだ時のカンフル剤。単純な湖には効果バツグンでした。
日本道路公団はやはり14日から16日にかけて高速道路で渋滞すると予想。主要道路についても同様の見込み。渋滞のピークは午後7時ごろとしています。少年期に根ざしたこの夏季への期待感。みなさまよい夏期休暇を!

[1069] いってきます 投稿者:いず 投稿日:2003/07/31(Thu) 02:37
みなさま、おひさしぶりです。
スゴイ盛況ぶりで・・・。書きこみはしてないけどいつもみてます。

ばり蟹さん、メールの返事してなくてすみません。
実は内モンゴルのフフホトへ日本語教師で赴任することになり、今日出発します。
何分、不準備でよくわかんないことが多いのですが、とりあえずいってきます。向こうで見られたら書き込みますのでこれからもよろしくお願いします。