パンテオン

2006 09

Roma




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写真


パンテオンは、「万有神殿」と訳され、多くの神々やカエサルの像が安置されていたが、
単なる神殿ではなく皇帝の謁見ホールとしても使われていた。
最初のパンテオンは紀元前27ごろに完成し、
その後多くの改修を経て現在の姿となっている。
円筒形の建物とギリシャ神殿の正面(エントランス)をくっつけた構成で、
本殿の円筒形の建物上部はドームになっている。
ドームの頂点には丸い穴(直径8.9m)が空いている。

ホール内部

この建物を見るまで、自分は欧州の古典建築を偏見の目で見ていたと思う。

彼らの古典建築は、美しい彫刻や装飾を抽象的な平面の建物に貼り付けて、
後は造形物としての外観上のボリュームバランスをとったものに過ぎないと考えていた。
だから一応勉強のために見には行っても、
表面的な意匠の豪華さを淡々と確認して、
それでおしまいだろう、と考えていた。
それ以外はもう見るべきものはないだろうと…。

エントランスを入ると、すぐにホールに出る。
ホールは円形の平面で、周囲の壁には窪み(ニッチ)があり、神や皇帝達の像が置かれていたという。
ホール上部は球状のドームで、最上部には穴が空いている。
この穴は外気に通じているが、さしこむ太陽光が天井に当たり神々しい雰囲気をつくりだしている。

この建物は、建築の持つ力を教えてくれる。
このような空間では、人は確実に「何か」を感じることができる。
物言わぬ物質で構成され、映画や音楽のように人の情緒に直接的に働きかれられない建築でも、
この場所では素晴らしい緊張感と感動を味わうことができる。

そしてこの建物が教えてくれるもう一つのことは、
建築の本質的な魅力に時代の新旧は関係ない、という事だ。

ローマに行くことがあったら、建築であれば何よりこの場所に行ってもらいたい。
頭上にぽっかり空いた円い穴…。
この「ただの穴」の美しさを、味わって頂きたい。

Atelier KY 吉岡一成建築設計事務所