●フランス旅行報告(靴購入編)−2(2002.12.)

4日目に名残り惜しいビアリッツを経って、パリに向かいました。
ショッピング目的中心のパリは滞在日数が少なくてもそれ程問題ないので、リゾート地でヴァカンス気分を味わう時間を長くして、もう少しビアリッツに滞在したかったと正直感じます。
しかしながら、ベルルッティでのシュル・ムジュールをしてもらうディディエ・マルチネスさんが、この日しか都合が合わなかったのでしょうがありません。


4日目ー前編(パリに到着して、シュル・ムジュールに挑戦)

・どんよりとした空模様のサンジェルマン通り。真っ直ぐに進んで左手にベルルッティ、右手にジョンロブ・パリのショップがあります。

左岸のリュクサンブール公園の近くにあるホテルにチェックインして、シュル・ムジュールは夕方に予約してあるので時間があることもあって、デジュネ(昼食)にしようとサンジェルマンのあたりをぶらぶらしていました。
そして、ベルルッティのショーウィンドーを見ていると、夏にお世話になった店員さんがにっこりと微笑んでいました。
これは入店は避けられなくなり、入店するとなるか何か買う目的が必要です。
何か買うしか無い雰囲気になり話を聞くと、「ボッティエのUーチップ・ノルベジアンはマブッフ通り本店にしかない。」「新作のスリッポンタイプのダンディ・ソバージュはどうか?」とのことで、兼ねてより興味があったビットモカシンのジョルダンを買うことにしました。
パティーヌは、サンプルにあったバーガンディー風のダークブラウンにしてもらいました。
ホテルまで持ってきてくれてもいいとのことでしたが、ホテルが近いこともあって、何かあったらその場で相談するために取りに来ることにしました。
ちなみに、休日をはさんで翌々日にパティーヌが出来上がるとのことで、実質的には翌日に完了したことになります。
ということで、何といいますか、あっという間に、買うことになってしまいました・・・。

・バーガンディー風のダークブラウンにパティーヌが仕上がったジョルダン

昼食後に、サンジェルマンにあるウェストンも見ましたが、スエードが良いかなと思いつつ、決断できずにいました。
そして、アルニスにショーウィンドーを覗く目的だけのためにいったのですが、またまた、夏にお世話になった店員さんと目があってしまいました(翌々日に何か買う予定でした)。
さすがに時間的な余裕はなく、ジャケット系は即断できずに、前日の大風で壊れた傘だけを買って、翌々日に再度来ることにしました(ちなみに、傘が260ユーロもしました)。
カタログをもらったので、ホテルでじっくりと見ようと考えました。


・シャンゼリゼ近くにあるマブッフ通りにあるベルルッティ本店

●ベルルッティのシュル・ムジュールの仕様

そして、いよいよ、ベルルッティのシュル・ムジュール(シュー・ムジュッと聞こえます・・・)に挑戦するために、マッブフ通りの本店に向かいました。
以前お世話になった店員さんはいなかったのですが、マダムが対応してくれて、予約してある旨を伝えると、ムッシュ・ディディエ・マルチネスを呼んでくれました。
挨拶をして握手して、まずは、事前に用意したデザインと仕様を書いたペーパーを渡して説明しました。
マダムに時折英語でフォローしてもらいながら、身振り手振りでコミュニケーションを図って、意図は伝わりました。
「それぞれ仕様を示すペーパーを用意してくれたのでわかりやすい」と、お世辞かもしれませんが、誉め言葉をいただきました。
一つだけ要望と異なった点は、シームレスなヒールにしようとしたのですが、ホールカットで「傷」入りの場合はシームレスのヒールにして真ん中繰り抜きタイプの1枚革とすると型崩れしやすい?とのことで踵内側に縫い合わせを入れてシームレスのように処理してもらうことにしました(フランス語でのニュアンスが良くわからず、意味が違っている可能性もあります・・・)。
主な仕様は以下の通りです。
・基本的にはウォーリアシリーズのホールカット
・左右の靴の片方に「M」と、もう片方に「N」をモチーフした非対称の傷入り
・踵内側にシームを入れてシームレスのように処理
・トゥ・シェイプは既製よりもややきつめでスクエア
・甲は低め
・シングルソールで厚さはやや薄め
・コバ出し少なめ
・ハンドソーンウェルト製法
・緩いベベルドウェイストでやや絞り気味
・ヒールはあまりいじらずノーマル
・ソールの色とインナーの色は指定せずに、敢えて全体の雰囲気に合わせてセレクトしてもらう
・革はダークブラウン系のアンティーク仕上げスムースレザー(仮縫い時に、革の素材も含めて再度確認)

●ベルルッティのシュル・ムジュールの計測

そして、驚愕の計測がスタートです。
ムッシュ・ディディエ・マルチネスは、つい先ほどまでとは異なり計測に集中して、まさに職人気質に溢れて真剣そのもので、近寄りがたい雰囲気も感じるほどです。
計測が始まってからは画像を撮る雰囲気さえありませんでした。
ですので、文章でしかお伝えできませんが、概要は以下の通りです。
@座った状態で、足の外形をなぞって、次に設置する部分をなぞってトレース
Aセルフメジャー(巻尺)で甲回りを4箇所内側と外側の8箇所、踵回り2箇所を計測
B定規のようなメジャー(ノギスのような定規)で甲の高さとくるぶしの高さと形を計測
C足に所々ある出っ張り部分をチェックしてメモ
D立った状態で、@〜Bを再度実施(別のトレース紙を使用)
E座ってから、指の形をデッサン
F低い位置から足を見ながら、足を横切るラインを1本線で数本トレース
G同様に低い位置から見ながら、指から始まるラインを1本線で5本トレース
Hそれぞれのライン毎に交差するポイントの大部分(全ての指も含む)を定規のようなメジャーで計測
I念入りに触診して、足裏のイボなどもふくめて全てチェックしてメモ
以上で全てですが、とにかく、私の足に関する全てをチェックされた感じです。
出来上がったトレース紙を見ると、等高線の入った地図のような感じすらして、ビックリでした。
この段階で、初めて話をする雰囲気になりましたので、トレース紙の画像を撮らせてもらいました。
履き心地の良い私の足に合った靴が出来上がりそうな予感を十二分に感じさせてくれます。
文章で書くとさらりと読めますが、計測だけで約1時間弱かかっており、かなりの大仕事で、やってもらっている本人の私も大感動してしまいました。

・出来あがった記録ペーパー(片足2枚で4枚)。恐縮ですが、緊張した雰囲気に上がってしまったのかボケてしまいました。

●ベルルッティのシュル・ムジュールの価格と時期等

最後に、再度仕様を確認して、価格と出来上がり時期の説明を受けました。
●価格:基本料金の2590ユーロ(初回の今回は1300ユーロのみ支払い)
 今回の私の仕様では特にプラス料金は無し。ただし、例えば、ノルベジアン製法にするとプラス料金になるとのこと。
●時期:次回の仮縫いは約半年後
 仮縫いは、遅れ気味ではあるがおおよそ半年後とのことでした(最速の出来上がり日時をFAXで連絡いただけることになりました)。最終出来上がりも、そのおおよそ半年後。

ということで、パリの本店でオーダーするには3回パリに行く必要(計測、仮縫い、出来上がり)がありますが、個人的にフランス旅行を趣味にしているので苦になりません。


全てが終了するまでベルルッティに入店後2時間弱たちましたが、AUBERCYはまだ閉店時間になっていないと思い立ち、急いで取りに行きました。
長文になるので、ここから先は次回の報告とします

●初日〜3日目(靴の話題はありません)

●4日目ー後編〜6日目(AUBERCYのドゥミ・ムジュールを受け取り)

●7日目〜最終日