ナショナル3吋ブラウン管オッシロスコープ CT-75に関して、中段の広告写真と下段の写真ではフロントパネルに相違する部分があります。
中段の写真では、ツマミは矢形を使用で、撮影した後、広告用の写真の段階でパネルの輪郭辺りを人手で修正加工した様に見て取れます。また、中段のものは写真にありませんが、下段のものには、パネルのブラウン管の右上と左上に半固定ボリュームのシャフトの先端が見えます。おそらく取付位置から考えて高電圧がかかる輝度調整/焦点調整/垂直位置調整/水平位置調整のいずれかのボリュームでしょう。こちらのツマミは八角形のものが使用されています。総括すると、写真の雰囲気からして中段のものは試作品で、下段は設計完了品と思われます。
この号は3月号ですから広告制作や記事編集などの作業時間を勘案すると、撮影は昭和14年(1939年)1月頃と推定され、この年には発売されたとみるのが順当でしょう。
余談ですが、ケースを外して後方から撮った写真では、BG-75(ブラウン管)を挟んで整然と並んでいます。右手前はプレートキャップがありKX-879(高圧整流管)、左手前がKX-80(増幅管用整流管)の 様です。両側ともその隣にある二本がシールドケースを被った真空管(ST管)で、それよりパネル側は円筒の形状から電解コンデンサと思われます。
ブラウン管の直ぐ後ろには直接偏向用の端子が付いています。ブラウン管の端子まで近距離で繋ぎ、浮遊容量を軽減して少しでも高い周波数まで観測したいニーズに応えようとしたもののようです。
上の説明にありますが、電源トランスをシャーシー内部に取り付けたため上面はスッキリとしたレイアウトになっています。