コーヒーは脂肪を分解しダイエットに飲料としては最適。

筑波大学体育科学系教授 鈴木正成

脂肪の分解を促進する

 私たちの食生活の中に、コーヒーを飲用する習慣が定着して40年近くになろうとしています。
この間に、コーヒーの飲み方や認識などにいろいろな変化が見られます。
 コーヒーには、尿の排せつを促す作用、心筋を刺激する作用、中枢神経を刺激する作用、
平滑筋(内臓などの筋肉)を弛緩させる作用、胃酸の分泌を促す作用、
血液中の脂肪酸(脂肪の主成分)の濃度を上昇させる作用などの生理作用があることが知られています。

 コーヒーが持っているこれらの作用は、主にカフェインの働きによるものです。
 20年ほど前になりますが、実はこのカフェインに発ガン性がある、という研究報告が出されたことがありました。
しかし、その後、全く同じ条件の下で再試験を行ったところ、「発ガン性はない」との結論を出しており、
発ガン性の擬いはほとんどなくなっています。

 コーヒーの生理作用の一つに、血液中の遊離脂肪酸の濃度を上げる働きがあります。血液中の脂肪酸の濃度が高いと、
筋肉、その他の組織のエネルギーの代謝(体の中で栄養物がさまざまに変化するしくみ)は、
脂防酸を分解する方向に傾きます。血液中の脂肪酸の元は、皮下脂肪などの貯蔵脂肪です.
これが分解されて血液中に放出されてくるのです.
 コーヒーを飲んだあとに、血液中の脂肪酸が増加するのは、脂肪組織での貯蔵脂肪の分解が、
カフェインによって刺激されるためなのです。

 このことに関して、実際に行われた実験の例を紹介しましょう。
1980年、スイスのアチソン博士らは、平均年齢三十歳、身長171a、体重67`の6人のスイス人に、
5、6杯分のコーヒーに相当するカフェインを空腹時に与えてみました。
すると、カフェインを飲む前に潮定した血液中の脂肪酸濃度は、平均で432でしたが、カフェインを飲んだ
3時間後には約2倍の平均848にまで上昇していたのです(血しょう1gあたりのマイクロ当量)。
 空腹時のコーヒーの飲用については、このような結果が出ました。
脂肪酸の濃度が上がり、貯蔵脂肪を分解するということは、すなわちダイエット効果が期待できるのでしょう。

肥満を防止しダイエットを助ける

 この疑問にこたえる実験もアチソン博士らが、「朝食後のコーヒー」をモデルとして行っています。
 平均年齢23歳、身長170a、体重61`の8人の被験者に、736iの朝食、その内訳はパン、
バター、ジャムおよぴクリームと、砂糖入りのインスタントコーヒー(3杯)を与えるか、
インスタントコーヒーの代わりにデカフェコーヒー(カフェインを抜いたコーヒー)を与えました。
 これらの被験者のエネルギー代謝量は、朝食前に比べて朝食後に増加しました。
しかし、その増加度は、デカフェコーヒー飲んだ場合には、23%でしたが、インスタントコーヒーを飲んだあとでは、
33%と10%も高かったのです。そして、エネルギー代謝への脂肪酸の利用が願著に
増加したのは、インスタントコーヒーを飲んだ場合だけでした。

 この実験結果から明らかなように、コーヒーには貯蔵脂肪の分解を刺激する作用があるほかに、
エネルギー代謝童を増加させる作用も備わっているのです。
この現象はイギリスのホーランド博士らの研究によっても確認されています。

 20歳から46歳の6人ずつの男女計12人に朝食を抜いた条件下で、午前10時半インスタントコーヒー、
または、デカフェコーヒーを飲ませ、その直後のエネルギー代謝の量が判定されました。
コーヒーへの砂糖とミルクの添加は各自の自由とされました。
 その結果、インスタントコーヒーを飲用したときだけ、飲用後30〜60分にかけて、エネルギー代謝量が顕著に上昇することが
確認されたのです。

 このように絶食時や食後の一杯のコーヒーにはエネルギー代謝量を増加させ、
特に体内の貯蔵脂肪の分解を増大させるダイエット促進効果があることがわかっています。