杏林大学医学部教授 古賀良彦
リラックスできる、気分転換によいなど、嗜好飲料として、愛飲者の多いコーヒーですが、私たちの研究グループでは、
コーヒーの持っている香りが脳の機能にどのような影響を与えるかを実験を行って調べました。
そして、そこで得られた結果を一昨年の国際コーヒー科学会議で発表しました。
結論からいうと、コーヒーの香りは情緒をつかさどっている右脳の血流量をふやして、脳の働きを活発にすること、
また男性よりも女性のほうが影響を受けやすいことが明らかになりました。
第一の実験では、コーヒーの香りと花のラベンダーの香り、それから香りの全くない水を用いて
左右の脳の血流量にどのような違いが出るかを調べました。
実験は、男性九人にそれぞれの香りをかいでもらい、血流量を比較するという形で行いました。
するとコーヒーの場合は、香りをかいだだけで、人の快感のコントロールに関係する脳の部位の血液の量がふえることがわかりました。
ラベンダーの香りも多少血流がふえる傾向が見られましたが、水とそれほど違いはありませんでした。
コーヒーを飲むとリラックスできるとよくいわれていることですが、この実験によって、香りをかぐだけでも脳神経に
効果的に働きかけることがわかったのです。
第二の実験では、男女間での影響の差を調べるため、コーヒーとラベンダーの香りを男身各20人の大学生にかがせ、
色を見分ける作業をしてもらい、その際の脳波の撮幅変化を測定しました。
コーヒーの香りをかいだときの変化は、男性は9.2マイクロボルト、女性は13.0マイクロボルト、
と女性のほうが3.8マイクロボルト大きいという結果が出ました。
脳波の振幅変化が大きいということは、作業能力が高いということを示しています。
どうしてこのような男女差が出るのかはわかりませんが、コーヒーの香りをうまくコントロールして使えば、
知的作業の向上につながる可能性が示されたことは確かです。