えばぁの見解 居飛車穴熊編
3. 対向かい飛車



23rd November 2004


目次
前書き
なぜ左美濃なのか
対向かい飛車・居飛穴基本図
対美濃囲い 対簡易囲い 対△7二玉型
まとめ


3. 居飛車穴熊対向かい飛車



 向かい飛車は振り飛車の中でも特殊な戦い方をする。
 一般的には相手の攻めを待ち、それに対応していくのが振り飛車の戦い方だが、向かい飛車は振り飛車側から仕掛けることが出来る。仕掛けの権利があると言うことは、現代将棋において重視されるところであり、居飛車党でも後手番を引けば向かい飛車にすると言う棋士も多い。

 この戦い方は居飛車穴熊に対してかなりの効果がある。
 居飛車穴熊の欠点は、『組むまでに手数がかかる上、駒組み中が最も不安定である』と言う点だ。向かい飛車はこの点を突き、居飛穴の駒組み中を狙って簡単に仕掛けることが出来る。
 この点は大きく、居飛車は穴熊を目指していても、相手が向かい飛車であれば穴熊を断念し左美濃で戦う、と言うのが一般的な戦い方である。それが一番無難で、かつ有力だからだ。


 しかし、左美濃が有力だから左美濃にするとしても、これは間接的に「穴熊を防い」でいる。
 その後の戦いがすぐ有利になるわけではないが、『穴熊にさせん!』と言う振り飛車の主張は通った形である。

 と言うことは、『とにかく向かい飛車にすれば穴熊にはならない』と言う考え方も出来る。
 なら、”最初四間飛車(中飛車でも三間飛車でもよい)に振っておいて、穴熊くさくなったら向かい飛車に振りなおせばいいのではないか?”と言う考え方が出てくるのは当然の流れだ。
 振り直す形はさすがに一手損なので、先手番での採用が多いが、後手番でも出来ないことはない。最近は藤井猛(現九段)が、先手番で振り直す形を多用している。


 このページでは、『最初から向かい飛車に振っている形』と『途中で向かい飛車に振り直す形』を解説する。
 どちらも怪しい新研究(?)であるため、『えばぁの見解』と言うよりは『えばぁの提案』になる。「こんな形はどうですか?」みたいな気持ちなので、話半分で眺めていってもらえれば幸いである。



3-1. △3二金型向かい飛車


 △3二金型とはごくごく一般的な向かい飛車である。
 前書きで「左美濃が有力」と書いたが、ここでは穴熊を断念して左美濃に組んで戦う順を深く解説しない。
 ある程度は触れるが、もともとこのページでは『居飛車穴熊』を取り上げたのである。向かい飛車だろうがなんだろうが、とにかく居飛穴を狙う順を研究する。

 しかし、左美濃にするのが無難とか妥協に見えて、実は優勢へ最も近い順だと思う。
 これから研究する順は、『どうして現状では穴熊を断念して、左美濃にする順へと落ち着いたのか』と言う、過程を研究していると思ってもらうと一番いいかもしれない。

 まず基本として、左美濃にする順を解説する。


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居飛車穴熊を断念して左美濃にする基本図

図1

居飛穴対向かい飛車の基本図(?)

初手から
 ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △2二飛
 ▲6八玉 △4二銀 ▲7八玉 △6二玉
 ▲5六歩 △7二玉 ▲5八金右 △8二玉
 ▲5七銀 △7二銀 ▲7七角 △4三銀
 ▲8八玉 △9四歩 (図1)

 居飛車が無難な駒組みをすると図1のような形はよく見られる。

 ここで居飛穴なら▲9八香が自然。しかし、それは次のような順で向かい飛車に振り回される。

図1から
 ▲9八香 △3二金 ▲9九玉 △2四歩 ▲同歩 △同飛
 ▲2五歩 △2二飛 ▲3六歩 △4五歩

 これは一例だが、とにかく9九の玉が離れている上、6九の金が浮いているのが痛い。▲3六歩のところで▲6八金寄としてみても、今度は△3五歩と突かれて▲2五歩が守れない。

 なので▲9八香とは上がれない。
 すると図1では▲9六歩と受けるくらい。だが▲9六歩と受ければこれまた穴熊にはしづらいので、結局▲7八銀と上がることになる。(図1で▲7八銀だと△9五歩と突きこされ損になる)  それでも向かい飛車が仕掛けるなら△3二金と上がる。

図2

左美濃にする図

図1から
 ▲9六歩 △3二金 ▲7八銀 △2四歩
 ▲同歩 △同飛 ▲2五歩 △2二飛
 ▲3六歩 (図2)

 一例。以下は△4五歩や△4二角が考えられる。
 最後の▲3六歩は絶対で、代わりに▲1六歩などとしていると、△3五歩とされて次の△3四銀~△2五銀が受からなくなる。


 これが基礎になる手順と図になる。

 上の図1からは、浮き駒が多すぎて穴熊は無理そうだった。
 図1の時点で、向かい飛車はいつでも△3二金と上がれば仕掛けがある。

 と言うことは、図1の前に変化しなくてはいけない。つまり▲7七角と上がるのをもっと早くしないといけないのだ。
 図1までの駒組みは左美濃などの含みもある幅広い構えだが、あくまでも穴熊に組むつもりなら、含みはむしろ余計なものになってしまう恐れがある。
 なので、穴熊を狙うには基本図から選定をし直す必要がある




図2(再掲)

図2の再掲

 上ではさらっと済ませたが、図2からは

1.△4二角
 (以下、▲4六歩△3三桂▲3七桂△2一飛▲4八銀△5四歩▲4七銀・・・が一例)
2.△4五歩
 (以下、▲6六銀△5四歩▲6八角・・・が一例)
3.△5四銀
 (以下、▲1六歩△6五銀▲7五歩△7六銀▲5五角・・・が一例)

  の3つの手がある。どれも一局だ。

参考図

△2四歩▲同歩△同角の仮想図

 図1からの手順中、△2四歩▲同歩に△同角と取る順もある。

図1から
 ▲9六歩 △3二金 ▲7八銀 △2四歩
 ▲同歩 △同角 ▲3六歩 △4二角
 ▲2三歩 △同飛 ▲同飛成 △同金
 ▲4六歩 △3二銀 ▲4五歩 △2七飛
 ▲4四歩 △3三金 ▲2二歩 △同飛成
 ▲3七桂 (参考図)

 手順中、△2四同角に▲2五歩なら△4二角▲3六歩△3三桂▲3七桂で、上にある『図2の1.△4二角』より一手得・・・と言うのが狙い。

 しかし歩は打たず上記のように進行し、「居飛車よし」である。(『島ノート』より)
 ただしこれは先手の玉形が左美濃だからで、他の玉形では成立する可能性も十分にある。

 なので最低、△2四同飛の順から持久戦調の1.を除いた2つ、△2四同角の1つ、つまり計3つの仕掛けに対応することが出来るよう、基本図を選定しなくてはいけない。
 間は端折るが検討した結果、下図が対向かい飛車でも居飛穴を狙いに行く最善の形だと思う。


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対向かい飛車用の居飛穴基本図

図3

とにかく穴熊狙いの図

初手から
 ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △2二飛
 ▲6八玉 △4二銀 ▲7八玉 △6二玉
 ▲7七角 (図3)

 三間飛車のときと同じだが、5筋を突かないのが工夫だ。
 5筋を突いていないと、例えば△2四歩▲同歩△同角と進んだあと、△7九角成などと角を切られる順がない。

 向かい飛車が△8二玉から美濃囲いにしたり、穴熊にしたりとじっくり組んだ場合は心配なく組める。問題は、やはり△4三銀~△3二金~△2四歩からの急戦に対応できるかどうかである。

 従来、図3から穴熊を組みに行くときは△7二玉▲8八玉△4三銀▲9八香と進展していた。しかし△3二金▲9九玉△2四歩と仕掛けられて、離れ駒が多いため対応しきれない。
 そのため▲9八香の前に▲5八金右と待ち、△3二金なら▲7八銀とここでも左美濃が有力とされていた。

 ここで、▲7八金型穴熊が出てくる。
 ▲7八金型穴熊は、以前の感覚では悪形とされていた。
 しかし近年、松尾穴熊への進展が発見され、▲7八金型穴熊に対する評価自体が一変、悪形でないと考えられるようになった。

 と言うことは、穴熊に潜る前に▲7八金と上がってもいいのではないか。

図4

▲7八金と上がる新型

図3から
 △7二玉 ▲8八玉 △4三銀 ▲7八金
 (図4)

 ▲7八金は、▲9八香から直接穴熊に行くと浮き駒になってしまう6九の金を上げ離れ駒を無くしつつ、穴熊の余地を残す手である。▲7八金型穴熊の評価が変わったことで、▲7八金と上がりやすくなったがために生まれた形だ。

図5

穴熊への下準備

図4から
 ▲3六歩 (図5)

 図5の▲3六歩は左美濃のところでも書いたが、△2四歩▲同歩△同飛▲2五歩△2二飛のあと△3五歩~△3四銀を防ぐため絶対指す手。なので先に指しておき、あとは穴熊に潜ることを優先する意味がある。

 図5を、ここでは基本図として扱う。

 ※ H16年11月王将戦リーグ▲羽生△谷川で、羽生がこの▲7八金~▲3六歩の構えを採用。しかし谷川の構えは図5と違う△3二銀・△4一金型(囲いは美濃)だったため、△4三銀~△3二飛として▲3六歩を目標にする構想を見せた。仕掛けるまでには至らず持久戦になったが、結果は谷川勝ち。

 図5で向かい飛車の指し方は3パターンある。

1. △8二玉~△7二銀と美濃囲いに入ってから仕掛ける。
2. △6二銀と簡易囲いにしてから仕掛ける。
3. このまま△7二玉型で仕掛ける。

 図3で上記のような囲いを作ってから△4三銀~△3二金とするのは、美濃囲い以外は同じ進行になる。


 ポイントは図5からの、『穴熊に入る手数と、相手が囲いにかける手数の差』だ。

 図5で3手もらえれば▲9八香~▲9九玉~▲8八銀と閉まることが出来る。
 藤井の名言にこのようなものがある。

 『▲9八香は10円、▲9九玉は500円、▲8八銀は1万円の価値がある手だ』

 これは、穴熊の真理を語った言葉である。▲8八銀と閉まって、はじめて「堅くなったな~」と言えるのだ。
 ▲8八銀は穴熊を組むときに一番大切な手だが、その手が回ってくるか回ってこないかが、向かい飛車や藤井システムなどの速攻型では大問題になる。
 今挙げたような振り飛車の速攻型を相手に▲8八銀まで閉まることが出来れば、万々歳と言える。

 対して、向かい飛車側の囲いにかかる手数は以下のようになる。
A. 美濃囲い = 2手(△8二玉・△7二銀)
B. 簡易囲い = 1手(△6二銀)
C. △7二玉型 = 0手

 図5では▲3六歩と突いてあるため、2筋交換のあと必要になる▲3六歩の一手を先に指してある。
 つまり2筋交換のあと1手余裕があるわけだから、最終的には、
A. 美濃囲い = 3手
B. 簡易囲い = 2手
C. △7二玉型 = 1手
 の余裕を得られることになる。

 図5から穴熊に入るまでは3手かかるわけだから、美濃囲い相手ならば穴熊に入ることは可能だと言うことになる。
 同様に、簡易囲いが相手では1手足りず▲8八銀が入らない。
 △7二玉型になると▲9八香しか指せないことになる。

 並べてみるとどうなるのか、以下それぞれ研究していく。


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A. 美濃囲いを作ってから仕掛ける

A1図

向かい飛車+美濃囲い1
a. △2四歩▲同歩△同飛型

図5から
 △8二玉
 ▲9八香 △7二銀 ▲9九玉 △2四歩
 ▲同歩 △同飛 ▲2五歩 △2二飛
 ▲8八銀 (A1図)

 A1図となって、向かい飛車は居飛穴を防げない。実戦的に玉の堅さが違うと同時に、心理的ショックもありそうだ。

 結局美濃囲いに組むと、向かい飛車でも穴熊は防げないことになる。
 と言うことは、美濃囲いで戦いたい場合は図3の時点で穴熊封じを放棄して、じっくり組み合う方向で指したほうがよい。


 A1図から△5四銀には▲5九金と寄る。△6五銀なら▲7五歩、△4五銀なら▲3七銀でなんともない。

 A1図から△4五歩には、▲2四歩と突き出す。
 △7七角成なら▲同金でも▲同銀でもしっかりしている。
 △同飛なら、▲同飛△同角▲1一角成でよさそうだ。


A2図

向かい飛車+美濃囲い2
b. △2四歩▲同歩△同角型

図5から - 1
 △8二玉
 ▲9八香 △7二銀 ▲9九玉 △2四歩
 ▲同歩 △同角 ▲8八銀 △4二角
 ▲2三歩 △同飛 ▲同飛成 △同金
 ▲4六歩 △3二銀 ▲4五歩 △2七飛
 ▲3九金 △2八歩 ▲3八金 △2四飛成
 ▲3七桂 △2九歩成 ▲4四歩 △2八と
 (A2図)

 これが最も問題の変化。居飛穴に組めてはいるがその後が問題である。

 途中までは『島ノート』通りの進行。
 しかし、△2七飛に手を抜いて▲4四歩だと、4九金型のため△2九飛成が金取りの先手になる。穴熊の感覚として金を渡すのはどうかと思う。そのため△2七飛に▲3九金と寄って、△2八歩に▲3八金と弾き、飛車が逃げたところで▲3七桂と桂馬を活用する。
 その後△2九歩成▲4四歩△2八と(A2図)に、▲2五歩でどうだろうか。

A3図

向かい飛車+美濃囲い3

図5から - 2
 △8二玉
 ▲9八香 △7二銀 ▲9九玉 △2四歩
 ▲同歩 △同角 ▲2五歩 △4二角
 ▲4六歩 △3三桂 ▲3七桂 △5四歩
 ▲8八銀 (A3図)

 上の順に自信が持てなければ、△2四歩▲同歩△同角に▲2五歩と打ってしまう手もある。A3図はその一例で、穴熊に潜っているし一局であろう。


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B. 簡易囲いを作ってから仕掛ける

B1図

向かい飛車+簡易囲い1

図5から
 △6二銀 ・・・ 簡易囲いを作る
 ▲9八玉 △2四歩 ▲同歩 △同飛
 ▲2五歩 △2二飛 ▲8八銀 (B1図)

 この速攻型で、簡易囲いは侮れない。
 上の順は、簡易囲いを警戒したときの順だ。

 ▲9八香を保留した形をどうにか生かせないかと思ったところ、▲9八玉型があった。
 ▲9八玉~▲8八銀のこの形は通称「串カツ囲い」と言われる。歩と玉を串(香車)に刺して、金銀が衣であるそうだ。この囲いは穴熊よりかかる手数が一手少ない。そして、横からの攻めに強いのが特色である。

 奇策っぽい構えだが、これは意外と実戦的にも有効な囲いである。穴熊を妥協した点では左美濃と変わらないが、穴熊に行くつもりから派生した形としてどうだろうかと思い紹介した。
 このあとや、△2四同角のときの戦い方は、美濃囲いのときと同じだ。双方囲いの形は違うが、完成している点は一緒であるため応用で戦える。


B2図

向かい飛車+簡易囲い2

 あくまでも穴熊に行く順はこうだ。
図5から
 △6二銀
 ▲9八香 △2四歩 ▲同歩 △同飛
 ▲2五歩 △2二飛 ▲9九玉 △4五歩
 ▲8八銀 △7七角成 ▲同金 △4四角
 ▲3七銀 △3三桂 ▲2六銀 △5四歩
 (B2図)

 ▲9九玉の瞬間が一番怖い。△5四銀や△4二角なら▲8八銀と上がってなんともないところだが、△4五歩(本譜)の変化が難しい。
 ▲8八銀なら、△7七角成▲同銀(▲同金)に△4四角と打って来る。
 (△4四角に▲6六角△同角▲同歩△4四角の交換を入れる手もありそう)
 次に△2六歩があるので▲3七銀とするが、△3三桂▲2六銀△5四歩(B2図)で苦しいと思う。


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C. △7二玉型のまま仕掛ける

C1図

向かい飛車+△7二玉型1
a. △2四歩▲同歩△同飛型

図5から
 △2四歩 ▲同歩 △同飛 ▲2五歩
 △2二飛 ▲9八玉 (C1図)

 今回は即仕掛けてくるため、さすがに穴熊へは入れない。
 先に▲3六歩としておいたため1手浮くが、そこで前項と同じように▲9八玉を採用する。▲9八香としても穴熊には入る暇はなく、ただ角のラインに弱くなるだけのデメリットしかない。

 藤井は『▲9八香は10円』と言ったが、▲9九玉~▲8八銀の手が回る見込みがないと、▲9八香は10円どころか大損になる。穴熊に入れないならば▲9八香は一手パスに近い上、玉形を弱くしているからだ。

 ▲9八玉は角筋を避けているため、何かのときに角の王手がない。
 注意するところは、簡易囲いに対して穴熊を組みに行ったときと同じ、▲8八銀が入っていないことである。
 次に△5四銀や△4二角なら、▲8八銀が入るので囲う目的は達成している。

 よって、C1図からは△4五歩が警戒する手だ。
 しかしここで▲9八玉型が生きる。簡易囲いVS穴熊では、先手が▲9九玉型だったため不安だった▲2四歩と突き出す手が、金銀から離れてはいるものの角筋からそれている▲9八玉型では強く出来る。

C2図

向かい飛車+△7二玉型2

C1図から
 △4五歩 ▲2四歩 △同飛 ▲同飛
 △同角 ▲1一角成 (C2図)

 もし▲9九玉型や▲8八玉型でこの変化をやると、次の△3三角が王手になってしまい、▲同馬△同桂となって形勢が微妙に思う。
 先手は香得だが、歩切れなのが不安だ。

 しかし▲9八玉型では△3三角が王手にならないため、▲2一馬と桂馬を取ることが出来る。これは先手ペースだと思う。

 C2図で△2七飛なら、▲3九金と寄る。そこで△2八歩とは打てない。
 ▲3八金と弾き、△2六飛成でも△2五飛成でも▲2七香(竜と角両取り)と打てるからである。

C3図

向かい飛車+△7二玉型3

 C1図への手順中、もうひとつ変化がある。
 △4五歩▲2四歩に△7七角成とし、△3三角と打つ順だ。

C1図から
 △4五歩 ・・・ 一番嫌に思う順
 ▲2四歩 △7七角成 ▲同桂 △3三角
 ▲2三角 △2四角 ▲同飛 △2三金
 ▲3一角 △2四金 ▲2二角成 (C3図)

 これには露骨に▲2三角と打ち込む。▲同金△同歩成はないので△2四角だが、俗に行ったC3図は居飛車がいいと思う。
 手順中▲3一角に△3二飛▲2三飛成△3一飛も、使いやすい龍と使いづらい飛車の差で有利だ。


C4図

向かい飛車+△7二玉型4

b. △2四歩▲同歩△同角型

図5から
 △2四歩 ▲同歩 △同角 ▲9八玉
 △4二角 ▲2三歩 △同飛 ▲同飛成
 △同金 ▲4六歩 △3二銀 ▲4五歩
 △2七飛 ▲3九金 △2八歩 ▲3八金
 △2四飛成 ▲3七桂 △2九歩成 ▲4四歩
 △2八と ▲2五歩 (C4図)

 この形でも美濃囲い型でやった変化に踏み込めると思う。
 以下、竜が逃げれば▲2八金。△3八となら▲2四歩と攻め合って、玉が遠いぶん有利だと思う。


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まとめ


 以上、△3二金型に対して穴熊を組みに行く手順を研究してみた。
 とは言っても穴熊に組めたのは美濃囲いが相手のときだけで、簡易囲いと△7二玉型に対しては▲9八玉型(串カツ囲い)を採用することになった。さすがに相手が仕掛けてきてから穴熊に潜るのは苦しいからだ。

 今回は「居飛車穴熊編」であるから、ここまで穴熊にこだわる指し方をした。
 しかしこれは理屈上の話で、勝ち負けが関わる実戦において、ここまでこだわる必要があるかどうかは難しい。プロでも圧倒的に左美濃が多い。  

 一旦▲7八金と相手の手を見る指し方は、佐藤康光(現棋聖)の実戦を参考にした。
 ついでに▲9八玉型も(藤井システム相手だが)佐藤がよくやっている。
 導入で「なにが居飛車穴熊マニュアルだ」と言ったが、現在のA級陣の中でいろんな穴熊の組み方を見せるのは佐藤だと思うし、とても参考になった。

 いろいろ穴のある研究結果だと思うが、何かいい手順を思いついたらご一報ください。


後手の工夫

図3(再掲)

図3の再掲

 実は、向かい飛車には図3(このページで基本図とした形)を避ける手順がある。飛車の振り方がポイントだ。

 図3までの手順は、初手から
 ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △2二飛
 として飛車を振っていた。

 これを、以下のように変えるのである。

参考図

後手が工夫した図

初手から
 ▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △3二銀
 (参考図)

 ここで図3までの手順と同じように▲6八玉だと、もし後手が居飛車党で△8四歩と矢倉に変化されたとき先手の駒組みが窮屈になる。
 参考図一手前の局面は、後手が居飛車党でも横歩取りを避ける人であれば、十分にありえる出だしなのだ。

 矢倉を作るなら▲7八銀が絶対だが、先手が一応の安全を得るには7八に玉が寄らないといけない。と言うことは、▲7七銀まで強制されてしまうのである。
 つまり参考図の時点では、後手は矢倉に変化する余地もあり、絶対に飛車を振るとは限らないのである。

 と言うわけで参考図では▲5六歩が一番無難な手になる。
 ▲5六歩は後手が矢倉だろうが振り飛車だろうが、「5筋不突きで指したい」と言う趣向などがなければ損にならない手だからだ。
 しかし、▲5六歩と突いてしまうともはや図3は不可能。(図3から▲5六歩△4三銀の交換を入れ、▲8八玉△5四銀と進んだ局面が妙にいやらしい)
 よってそこからは△4三銀▲6八玉△2二飛▲7八玉となって、図2の左美濃を目指す戦い方が実戦的だ。


 参考図までの出だしは、昔はよく見られた出だしだ。
 『飛車を振る前に銀を上がる』と言うのは、このように矢倉の含みも残るためよいとされたのである。

 しかし参考図の出だしでは、左銀が△4三銀としか使えない。
 ところが参考図△3二銀のところを△2二飛としていれば、左銀は△4二銀とできるため、その後△4三銀と△5三銀の選択が可能だ。最初から向かい飛車にするつもりなら、銀を上がる前に飛車を振ったほうが『向かい飛車と言うジャンルの中では』含みが広いのである。

 要はどちらにも一長一短があるということだ。


 『相手が振り飛車しかやらない』とわかっていれば今回の解説のような穴熊の組み方は可能だが、相手が振り飛車とは限らない実戦などでは、少し勇気のいる組み方だと思う。


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