えばぁの見解 向かい飛車編


7th September 2003


 第2回目のテーマは、向かい飛車です。

 向かい飛車、その存在において最も大きな問題は、「向かい飛車」か「向い飛車」か、はたまた「向飛車」なのか、なぜ「二間飛車」とは言わないのかという名称の問題が・・・などとやっていると答えの出ないまま終わりそうなので、やめます。
 えばぁはいつも「向かい飛車」と言っているので、「向かい飛車」と定義しておき、続けます。

 向かい飛車は何と向かい合っているのかというと、もちろん、相手の飛車と向かい合っています。
 だから「向かい飛車」なんですが、相振りでは相手の飛車と向かい合わないのに「向かい飛車」と言ってしまいます。
 「向かい飛車」で定着してしまったんでしょうが、少し首をひねってしまいます。

 それはともかく、向かい飛車の特徴について挙げていきます。



○ 向かい飛車の特徴


1.ある条件を満たさないと、向かい飛車には出来ない。

 「ある条件」と言うと少し大げさですが、何のことはなく「居飛車が飛車先を突きこしてくれる」、つまり「▲2五歩(△8五歩)としてくれる」という条件です。
 相振りの場合はそうではありませんが、その条件がないままに向かい飛車にすると、向かい飛車の利点がなくなります。
 (相手になめられることは間違いない。)


2.主導権は向かい飛車側にある。

 向かい飛車最大の利点です。
 1番の条件を満たし向かい飛車になったとき、2四(8六)の地点における駒の利きの数は2-1で振り飛車のほうが多い。よって、向かい飛車は仕掛けたいときに▲8六歩(△2四歩)と仕掛けることが可能なんです。
 そのため向かい飛車は後手番でも主導権の取れる戦法だということで、「矢倉党だけど後手番で矢倉はやりたくない」(先手の勝率がいいから)という人には向いている戦法です。
 また、いつでも仕掛けられる前提があるので、居飛車は穴熊に組みにくいという面もあります。


3.あくまでも他の戦法の「補助的」戦法である。

 1番の通り、居飛車側が飛車先を突き越してくれないと向かい飛車には出来ません。
 つまり「純粋向かい飛車党」は皆無なはずで、居飛車が飛車先を突きこしてくれない場合は他の振り飛車にしているはずなんです。(一般論として。もしかしているかもしれないが、その人は初心者か、今までの常識を変えてくれる天才かもしれない(笑))
 ※ 『▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲4八銀 △3三角!▲6八玉 △2二飛!』 と言う向かい飛車が最近現れている。『ゴキゲン向かい飛車』とでも言ったらいいのか。('04.Oct追記)
 なので他の振り飛車と違い、それだけやってればいいと言うものではありません。
 仕掛けるだけなら単純ですが、採用するまでの道のりは「隙あらば狙う!」と言う戦略的観点から考えていかないといけないので、振り飛車の戦略としてはちょっと高度です。


4.美濃囲いにならない場合がある。

 居飛車側に隙があれば積極的に仕掛けると言うことで、向かい飛車の場合、あまり美濃囲いを作ることはありません。
 だいたい簡易囲い(△7二玉型で△6二銀と上がるだけ)や、良くて片美濃囲いです。
 左側の金はたいてい、飛車の隣(7八か3二)に上がります。
 主導権を握れるというメリットがあるぶん、玉の囲いに手をかけられない(今仕掛けたいんだけど自玉がちょっと不安定だな・・・と言う展開は本末転倒)なので、仕方ないことかもしれません。


 以上が向かい飛車の特徴です。
 指すときの心得としては、序盤から積極的にリードを狙う気持ちが必要、玉はすごく堅いわけではない、と言うことでしょうか。
 ひとつ、居飛車が本当に何も知らない場合ハマってしまう変化をあげておきます。
 これにハマってしまう居飛車党は「論外」です。

参考棋譜 : 居飛車対向かい飛車、最悪の図。


 続いて簡単な向かい飛車の紹介に入ります。
 先に断っておきたいんですが、えばぁは向かい飛車と言えば「相振り」と「T式(△3二銀型)」しかやらず、突っ込んだ紹介と言うのは出来ません。
 ほとんど「島ノート」からの引き出しになりそうですが(笑)、ご了承ください。




○ 向かい飛車の種類


1.△3二金型向かい飛車

△3二金型向かい飛車

 オーソドックスな向かい飛車です。飛車を振る前に△4三銀型を作ってもいいので、四間飛車、中飛車との併用(三間だとちょっと損だと思う)が可能です。
 △3二金と上がり、△2四歩▲同歩△同飛と飛車交換を迫って行く戦法です。(左図)
 この仕掛けは居飛車穴熊の完成前にできるため、間接的に穴熊対策になります。
 最近の形としては小倉流というのがあり、プロでも採用されています。

参考棋譜 : 小倉流成功の図


2.△3二銀型向かい飛車(T式向かい飛車)

△3二銀型向かい飛車

 えばぁはネットで初めて見て、「T式向かい飛車」と紹介されていたのでそう呼んでいます。T式・・・と呼ぶ場合は、下の参考棋譜で仕掛けたところでは仕掛けずに△7二玉・△6二銀・△5一金右としてからなのかもしれません。
 向かい飛車に振った後は△3二銀の1手で仕掛けられるので、囲いに手をかけることも出来ます。

 H14年王位戦では谷川九段(当時)が後手番で採用して千日手に持ち込み、先後変わった指しなおし局でしっかり勝ちました。

参考棋譜 : ハメ手定跡


3.メリケン向かい飛車

メリケン向かい飛車

 アマチュアの方が考えた向かい飛車です。
 その方が確か横浜に住んでいて、横浜→メリケン波止場でメリケン向かい飛車・・・だったと思います。
 どちらかと言うと先手番用の戦法で、師匠が前によく使っていました。
 棋譜を見てもらえればわかりますが、石田流三間飛車との併用がいいと思います。
 また、場合によっては居玉で攻めかかるのでそれなりの研究が必要です。

参考棋譜 : メリケン成功の図


4.升田流向かい飛車

升田流向かい飛車

 名人の上・升田幸三考案の向かい飛車です。
 先手番の戦法で、▲7六歩△8四歩に▲5六歩とするため、ゴキゲン中飛車との併用が可能です。
 鈴木大介八段が新手を出したため、この戦型は望めば激しい変化になります。

参考棋譜 : 鈴木新手のハマった図


5.鬼殺し向かい飛車

鬼殺し向かい飛車

 後手番で、
 1.▲2六歩△3四歩▲2五歩
 2.▲7六歩△3四歩▲2六歩
 の4手目に3三角とする戦法です。
 1番はともかく2番は「うそぉ?」と言う感じの戦法ですが、Yahoo将棋においてさえ、「島ノート」が出た去年の年末には見られた面白い戦法です。
 そんなことをいうえばぁも「島ノート」を見て知ったんですけど(笑)

参考棋譜1 : 桂捨て作戦
参考棋譜2 : 筋違い角


6.阪田流向かい飛車

阪田流向かい飛車

 阪田三吉が指したと言われていますが実際指したのは1度だけらしいです。
 それでも名前は阪田流向かい飛車。
 大雑把に言えば、向かい飛車側から「棒金」をするような感じです。
 ただしものすごく玉が薄く、かなりの終盤力を必要とする向かい飛車です。

参考棋譜 : 阪田流急戦向かい飛車


7.相振り向かい飛車

 さぁやってきました。
 やっとえばぁの知っている相振り向かい飛車です(笑)。

 相振り飛車は定跡が少なくこれからの戦法なのですが、それでも比較的定跡が作られていたのは「先手向かい飛車対後手三間飛車」の相振り飛車です。
 先手はだいたい向かい飛車にするのが多く、有力と言えます。

 ※ 相振り飛車は単純計算上、256通りの戦型がある。
 先手の飛車の振り場所が中飛車・四間飛車・三間飛車・向かい飛車の4つ。
 先手の囲いが穴熊・高美濃・矢倉・金無双の4つ。
 後手の飛車の振り場所が同じく4つ。
 後手の囲いも先手と同じく4つ。
 4×4×4×4=256通り。

 先手向かい飛車は、駒組みが平易であると言うことが特徴です。
 ただし序盤は角道を止めているため速攻の筋はなく、序盤の手の広さは三間飛車に劣ります。
 ですが駒組みが進んでいくと次第に追いついていき、角の使いやすい向かい飛車が指しやすくなります。

 という先手向かい飛車対後手三間飛車の対抗形がプロでは多く指されていたのですが、最近後手に新しい構想が生まれました。
 ▲7六歩△3四歩▲6六歩と、先手が振り飛車模様に角道を止めたときに後手が△3三角と上がる、後手向かい飛車です。

 後手向かい飛車がその後△2四歩~△2五歩と突くと先手はすぐに飛車を振れなくなります。
 よって後手が先攻しやすく最近流行しつつあり、▲羽生4冠対△谷川王位の王位戦第1局でも登場するなど、HOTな戦型です。

参考棋譜 : 後手向かい飛車の受け方


8.向かい飛車穴熊

 ・・・ってあり?
 とりあえず、ただやるだけなら穴熊に組んでもいいとは思います。
 でも、それでは向かい飛車に振った意味はあるのだろうかという疑問が生じます。
 向かい飛車は穴熊に囲ってて手数使ってちゃ、仕掛けたいときに仕掛けられなくなるからいけないと思うんです。
 今年の竜王戦1組・藤井対森内戦は、分類上は先手向かい飛車穴熊ですが、あれはちょっと事情が違います(後手の特殊な作戦で、飛車先を受けなければいけなかった)し・・・。

 なので、えばぁの建前上は、向かい飛車穴熊はありえない、とさせていただきます。
 ※銀を△5三銀と使えて玉を堅く出来ること、▲2四歩の仕掛けを防いでいることは一種の主張になるかもしれない・・・。
 ('04.Oct追記)



注 向かい飛車の急所

 僕が指していて思ったわけでもなく、メリケン向かい飛車を使っていた師匠が以前語った話です。

 向かい飛車はその性質上、居飛車の角の利きに自ら入っていく戦法です。
 そのため向かい飛車に対抗する場合、4筋(6筋)を絡めて角のラインを使ってくるのがほとんどです。
 それが嫌で師匠はメリケンをやめちゃったそうです。

 ちなみに、△3二銀型向かい飛車は「島ノート」のWeb質疑応答の中で、「戦法自体に若干の無理があるかもしれない」と島八段に言われてしまいました。
 その理由も、4筋の歩をからめた居飛車の攻めが原因です。

 こういう飛車のコビン攻めが向かい飛車の場合おきやすいので、ご注意ください。



まとめ


 えばぁが知っているのはこれくらいです。
 個人的に、向かい飛車を採用するくらいの人は「~(ある戦法)のみ」を脱却している時点でレベルアップしていると思います(笑)。あくまでも補助的戦法ですが、メリケン向かい飛車のように石田流を見せて△8五歩を突かせる高度(?)な戦術もあります。

 あとは自分でいろいろ研究をしてください・・・としか言えないんですが、向かい飛車専門の棋書と言うものはただいまありません。
 この秋に「小倉流向かい飛車の極意」が出ると聞いていますので、興味を持った方は買ってみてもいいと思います。
 ※ 本の半分は実戦譜と言う、少し期待外れの本だった模様。現状では『島ノート』が一番詳しい。 ('04.Oct追記)

 たいした文章を書けたわけでもないので、えばぁが昔向かい飛車を勉強したサイト・「盲太の向かい飛車研究所」を紹介して終わりたいと思います。
 次回は「中飛車」の予定です。

続編・居飛車穴熊対向かい飛車の研究


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