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 第1試合のゴングが鳴った。両選手とも若く、10代半ばで緊張気味だ。まだキャリアが少ないのか、素人目にもテクニックが未熟なのが分かった。それでも観客は盛り上がっている。パンチやキックが1発入るたびに、“ヘ〜イ!”、“ハ〜イ!”、“ウェ〜イ!” と観客の掛け声が会場全体に響きわたる。ラウンドの合間には観客がセコンドのところまで来て、選手に直接アドバイス、選手もそれに応えて頷いている。日本ではちょっと考えられないことだった。最初は分からなかったが、何試合か試合が進むうちにやっと事情が呑み込めた。すべての試合にお金が賭かっていたのだ。これはここバンコクでは合法で、それで観客たちの盛り上がり方も尋常ではなかったわけだ。ただ、オレが座っているリングサイド、外国人専用の席?はお金は賭けられず、フェンスの後ろの一般席に限られているようだ。試合が進むうちに好カードが組まれていて、観客・セコンドの盛り上がりも一層ヒートアップしていく。ムエタイというスポーツを見にきたというより、なんか何処かの賭場にきている雰囲気になってきた。

   

  真剣に試合を見つめるセコンド!       緊張気味の若手の試合!

    

フェンスの向こう側では、ほとんどの人が賭けに参加していた!背を向けている
赤いチェックのシャツの彼は、「どっちに賭けるんだ?」 と賭けを仕切っていた!
右は、選手にアドバイスをする観客!お金が賭かっているので必死だ!

 試合を見るより、客席を見ているほうが面白い場面もけっこうあった。オレの隣には、タイ語がペラペラのアメリカ人が座っていた。彼が、近くにいたセコンドの1人に声をかけて呼び寄せると、「オレにも賭けさせろ!」 みたいなことを言って、タイ紙幣を差し出している。するとそれを見ていた警察官が飛んできて、「ここの席の人間は、賭けちゃダメだ!」 と注意する。だがセコンドが、「いいだろう、固いこと言うなよ!」 と口泡を飛ばして応戦すると、なんと警察官は押し切られて引き下がってしまった。なんともアバウトな国だが、なんか微笑ましい気もした。アメリカ人は毎試合賭けながらオレに、「お前は賭けないのか?」 と聞いてきた。オレが、「賭けには興味がない!」 と答えると、不思議そうな顔をして、「見ているだけで面白いのか?」 とか言ってくる。逆に、「さっきから毎試合賭けているようだけど、少しは儲かったかい?」 と聞くと、両手を挙げて、「1試合も当たらないよ!」 とか言っていた。“いいお客さん” のようだ。メーンイベントでチャンピオンが順当に勝ち、すべての試合が終わった。期待していたKOシーンが1度もなかったのが、ちょっと残念だった。迎えに来たムエタイのガイドに頼み、チャンピオンのところに連れて行ってもらう。インタビューが終わるのを待って、一緒に写真を撮ってもらった。リングの上ではあんなに大きく見えたチャンピオンも、リングを降りると小柄だったのが印象的だった。会場の外に出ると帰りの車でごった返している。野球、格闘技など、何処の国でも試合後はこんな感じだ。しばらくしてガイドの車が来てホテルまで送ってもらったが、充実したムエタイ観戦だった。

   

オレの隣に座っていた、タイ語ペラペラのアメリカ人!右は、彼の掛け金を集金
に来ていたセコンドの1人!彼に、どっちにいくら賭けるか確認しているところ!

   

 “お前は丹下段平か?” 何試合目かのセコンドだが、彼を見ていると
 何故か、「あしたのジョー!」 に出てくる、“丹下段平” を思いだした!

   

  勝ち名乗りを受けるムエタイのチャンピオン!彼と記念撮影を!




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