11月分
11月30日
「第六大陸 1」(小川一水 ハヤカワ文庫)を読む。
西暦2025年。
サハラ、南極、ヒマラヤ――極限環境下での建設事業で、
類例のない実績を誇る後鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。
依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、
そして建設地は月。
機動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。
だが彼が目にしたのは、想像を絶する苛酷な環境だった・・・。
というわけで、最近流行のリアルな宇宙開発物。
『SFが読みたい!2004年版』ベストSF[国内編]第2位。
面白かったです。
要するに「星のパイロット」とか「ロケットガール」みたいな話。
ただ、物語の動機であるところのヒロイン妙が、
イマイチ魅力的でないところが残念だ。
アレっぽいし。
11月25日
「秘神界―歴史編―」(朝松健編 創元推理文庫)を読む。
書き下ろし〈クトゥルー神話〉アンソロジー・歴史編。
蛇神イグの子を扱った松殿理央の「蛇蜜」と
霊能探偵マイケル・リーの登場する朝松健の「聖ジェームス病院」が秀逸。
なんか西遊記の話は、長い割にはだめだな。
11月21日
「魔性淫指」(菊地秀行 光文社文庫)を読む。
人間に取り憑いた”魔性のもの”を指一本で揉み出す整体師・蘭城とその助手猫馬。
二人が訪れたのは、霧をまとう桐ヶ家市。
蘭城が富豪の蛾氷女家で見せられた奇妙な人型とは?
そしてその中にあるのは?
蛾氷女家に伝わる、海水から金を抽出する仕掛けをめぐって大暗闘が始まる・・・。
というわけで、面白かったです。
やってることは、もはやトレジャーハンターとかわらんな。
気になったことは二つ。
前回ストイックだった猫馬の性格が、結構違う。
それと、また”ジルガ”。
今回、登場人物のうち3人が、古代武術”ジルガ”を使う。
大安売りだ。
きっと世界のどこかに”ジルガ”の御師匠様かなんかがいるんだろうな。
11月14日
「比良坂ファイル 幻の女」(朝松健 ハルキ文庫)を読む。
〈逆宇宙〉の干渉を受けた者たちが、前衛心理学者・比良坂天彦を訪れる連作オカルト・ホラー。
昔、ソノラマ文庫でやってた「〈逆宇宙〉ハンター・シリーズ」の後日談的な話。
らしいがそっちは読んだことがないので。
主人公・比良坂天彦の必殺技は、DORバスターという謎の怪光線を発射する機械。
ゴーストバスターズに出てくるあんなやつ。
事件の背後に見え隠れする魔術結社・星智教は、
クトゥルフ神話作品ではお馴染みの”星の智慧派”と同じモノだろう。
気になったのはそんなとこかな。
11月10日
「霊人ジョニー」(菊地秀行 双葉文庫)を読む。
「顔移し」の秘術によって顔を盗まれた世界的大スター蒼城真弓は、
”宇宙の創成から地球の滅亡まで見透せる”と言われる謎の男ジョニーに助けを求めた。
大物政治家、日本屈指の暴力団、謎の古武道家、
「顔移し」を施術できる唯一の秘術医師、さらに秘密組織「諸里人舎」。
すべてを巻き込む最終サイキックウォーズが幕を開けた・・・。
というわりには、意外に地味な作品で、それほど・・・。
主人公ジョニーは手を触れただけでその人の過去や未来を見通したり
他人を憑依させてその人物に成りきったりする霊能力者なんだけど、
あんまり活躍しないんだよな。
ところで、武道家の使う古代武道”ジルカ”や、諸里人舎は、
それぞれ他作品にも登場する菊地ワールドを形成するキーワードなんだが、
この世界の新宿は、〈魔界都市〉ではなかったな。