1.食事バランスガイドとは

 食事バランスガイドは、2005年6月、厚生労働省と農林水産省の共同によって策定された。1日に何をどれだけ食べたらよいかをイラストで示したものである。
 食育基本法が成立(2005年6月)、食育推進基本計画(2006〜2010年)を閣議決定(2006年3月)した。そのなかで必ずといってよいほど登場するのが、食事バランスガイドである。
 
 食事バランスガイドは、パステルカラーの淡い色調でコマがデザインされている(図1参照)。これが描かれたパンフレットが2006年から大量に出回っている。電車の車体にも描かれ、車内に中吊りにもなった。スーパーやレストラン、コンビニエンスストアにはポスターが貼られている。人気女優がにっこり笑い、お笑い芸人が踊っている写真付きのポスターやパンフレットもある。内閣府食育推進室を中心に、社団法人日本栄養士会、財団法人日本食生活協会、財団法人食生活情報サービスセンターなどの関係機関から多種多様な宣伝媒体が作られている。 





  食事バランスガイドは、2000年3月に策定された「食生活指針」を基にして、具体的な行動に結びつけようと考えられた。〈「何を」「どれだけ」食べたらよいか、という「食事」の基本を身につけるバイブルとして、望ましい食事のとり方やおおよその量をわかりやすくイラストでしめした〉(傍点筆者)と説明している1)。

  「わかりやすく」とは、栄養学等を学んでこなかった一般国民が、コマのイラストを見て、1日に何をどれだけ食べたら良いかがわかることをいうのだろう。そして、自分の食事の問題を理解し、どうすれば改善できるか知る手段にあるということなのだろう。

  食育推進基本計画によると、2010年までに食事バランスガイド等を参考に食生活を送っている国民の割合の増加を60%以上にしようとしている。60%の国民ということは、7200万人である。 

  国民の税金をふんだんに投入して作成され、宣伝媒体となった食事バランスガイドが、一般国民にとってわかりやすく、食生活を改善していくにあたってバイブルになるのだろうか。
 私は大いに疑問をもっている。何をどれだけ食べたらよいのかを理解する上で、本当に有効なのか。疑問点が多いからである。以下の三点に絞って、検討していく。

注)
1)「フードガイド(仮称)検討会報告書」2005年7月、2頁。

(その2)へ

 問題の多い食事バランスガイド(その1)