勝 |
利投手の権利は、先発して5イニング以上投げることである。先発投手が
5イニング以上投げていない場合は、以降味方がリードしている登板した投手で、
最も投球回数が長い投手に与えられる(セーブ資格保有投手を除く)。
まあ基本はその通りなのだが、例外事項が起こるから野球は、そして
記録やルールは面白いのだ。
昭和56(1981)年8月22日、新潟・上越球場で行われた南海−西武戦。
西武先発の杉本正(現西武投手コーチ)は、雨の悪コンディションをものとも
せず、快調に飛ばして4回まで南海打線を無失点に抑えていた。一方、打線の
方も活発に打って、テリーや田淵のホームランなどで5点を入れていた。
ところが、5回裏に1死満塁のピンチを迎えると、降雨コールドを心配した根本
監督は杉本を諦めて、リリーフに松沼雅之(弟)を登板させた。しかしこれが裏目
に出て、松沼は南海の4番・門田博光に満塁アーチを食らってしまい、たちまち
1点差になってしまった。
ところが、天は西武に、いや杉本に味方した。
6回表の西武攻撃が終了したところで、折りからの雨が激しくなり、ゲームは
中断し、そのままコールドゲームになってしまった。
この場合、勝利投手は杉本になるのだ。以下のようなルールがある。
「コールドゲームの場合で、5回に終了した場合には、先発投手は最少4回を
完投して退いたとき、勝利投手になることもある」
ただし、同じコールドゲームでも、6回以上ゲームが進んでいた場合は、杉本の
例では勝利投手とはなれないのだ。
もう一例ある。昭和57(1982)年10月2日、後楽園球場で行われた日本ハム
−西武戦だ。また西武が絡んでいで、しかも勝っている。
同じく5回コールドでスコアは9−8。4回0/3を投げた先発の柴田保光投手が
勝利投手になり、後を受けて1イニング投げた根本隆投手にセーブがついた。
ところで、上記ルールの説明のところにある「勝利投手になることもある」と
いう微妙と言えば微妙、いい加減と言えばいい加減な言い方が気になった方は
いないだろうか。実際のところ、ルールや記録というのは、誰でもわかるホーム
ランとか三振などはともかく、割といい加減なところもあるのだ。
例えば、エラーもヒットも公式記録員が決めるものであって、その結果に異議
を唱えることは事実上不可能。ノーヒットノーランや完全試合などの記録達成も
記録員の腹次第というわけだ。
そして、上記のような規則では曖昧な表記の判定をするのも、この公式記録員
なのだ。では何が基準になるかと言えば、どちらに勝利投手の権利を与えても
良いような場合は、両者の投球内容などから判断して、より勝利に貢献した、と
思われる選手に与えることになるのだ。
このことが思わぬ悲喜劇を生むこともある。連続セーブ記録を目指していた
ピッチャーに、勝利投手もセーブもどちらの記録の資格もあった時、運悪く勝利
投手を与えられてしまい、みすみす連続セーブの記録が途切れてしまったことも
ある。
※2000.5.22訂正。オオハラさんより、昭和56年度の西武監督は広岡達郎ではなく、
根本監督ではないか、とのご指摘を受け、精査の結果、ご指摘の通りと判明し、早速
修正させていただきました。誤情報を掲載してしまい、まことに申し訳ありませんでした。
それとともに、情報をお寄せいただいたオオハラさんに感謝致します。