リーフ投手がどうしても出来ないことに完投がある。先発投手のあとを
受けるわけだから当然だが、実は完封することはできるのである。ルールのいた
   ずらなのだが、こういう記録があるから野球は面白い。

     この珍しい、というより唯一の例になったのが、阪神の上田次朗投手。
    田淵や江夏のいた頃のタイガースで活躍したアンダースローの好投手だ。
    1972年5月9日、甲子園での大洋(現・横浜)戦。阪神は先発にベテラン右腕
    の若生智男をマウンドに送ったが、いきなりホエールズ打線につかまり、無死
    1,3塁のピンチを迎え、挙げ句、アキレス腱を傷めて降板するハメになった。
     ここで急遽登板したのが上田だ。上田はこのピンチを切り抜けただけでなく、
    そのまま9回を無失点で投げ切ってしまったのである。

     ここでルールを思い出してみよう。この場合、先発の若生は0回0/3を投げた
    ことになる。そしてリリーフの上田は8回3/3を投げたことになるのだ。8回3/3
    と9回というのは、ルール上、意味がかなり違うのだ。ルールでは、完投という
    のはあくまで9回投げ切らないと与えられない(雨天時等のコールドは除く)。
     ここに、1957年に一部修正が加えられた。野球規則10.19(f)だ。
    条文を掲載すると、
    「第一回無死無失点のときに代わった投手が、無失点のまま試合を終わった
     場合に限って、完投投手ではないが完封の記録が与えられる」
    というものだ。
     リリーフなのだから完投はできないが、実際問題として9回投げ切って無失点
    に抑えたのだから完封は認めてあげるよ、というものだろう。

     裏を返せば、上田と似たケースで失点してしまえば、それは完封はもちろん
    完投も認められないのであり、達成するのはかなり難しいだろう。

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