パイロットと管制官の通信を受信!

 

写真撮影のツールから航空への想いを馳せる醍醐味をもつエアバンドの魅力

 

航空無線の受信法と受信機

 

航空機には無線は必需品

今や一般の人でも航空無線を知らない人はいないでしょう。一般の人にとって無線の受信に対して暗〜いイメージを持たれる一方で、航空無線の受信だけは比較的明るいイメージを持つ人が多いように思います。それだけ航空無線が知名度の高い存在だと思います。

実際航空無線は欠かせないものです。管制官とパイロットが密に連絡を取り合うことで安全を確保し、正確な運行を実現しています。この航空無線の受信は海外ではもう趣味の1つとして確立しており、また一般でもセスナなど自家用機を持つ人が多いことから、航空無線のことを「エアバンド」と呼んで親しんでいます。

ジツは某無線機メーカーの電気回路設計者であるワタクシ。エアバンドの受信機から受信法をお教えしましょう。

 

羽田空港34L滑走路へ着陸するJAL機。「Clear to land runway 34 left !!」

航空無線を聞く2通りの方法

一般的に航空無線を聞くには2通りの方法があります。1つは広帯域受信機を購入する方法。そしてもう1つは広帯域受信機能が付いている、または受信周波数を拡大改造したアマチュア無線機を購入する方法です。

どちらが良いかといえば広帯域受信機の方が良いです。感度、音質、操作性、しっかりエアバンドも考慮した設計になっています。一方でアマチュア無線機は受信改造したものは保証外ですので音質や感度が悪かったり、また広帯域受信機能でもやはり音質や感度は広帯域受信機には勝てないです。

しかし注目したい点はバッテリー。手で持つハンディタイプの広帯域受信機の多くはニッカド電池で動作します。このニッカド電池、ちゃんと使い切ってから充電しないとメモリー効果といって使用時間が短くなってしまう欠点があります。一方で電流を消費するアマチュア無線機にはリチウムイオン電池を使用したものがあります。リチウムイオン電池は継ぎ足し充電ができるので電池の扱いは簡単です。

現状のところ「性能重視なら電池の扱いに注意せよ」といったところでしょうか。

我が家の受信機。どれもほとんどエアバンドを受信しています。

家でじっくり楽しむ、固定型受信機

受信機や無線機には3種類のタイプがあります。1つは手にもつハンディータイプ、車につけるモービルタイプ、そして家などにどっしり置いて使う固定タイプです。

家で使うにはどれも電源などを揃えばエアバンドを楽しむことはできます。しかし家でじっくり楽しむにはやはり固定型が一番です。感度、音質、操作性、その他受信に問題になるようなものはなく、設計が洗練されています。

ハンディータイプやモービルタイプを固定で使う場合、一番問題になるのは音質でしょう。音がこもっていたり歪んでいたり、長時間聞いていると疲れてきてしまうものもあります。

また混変調にも注意。混変調とは受信している信号に他の周波数の信号が妨害してしまう現象です。よくあるのはテレビの電波との混変調。信号を受信するとバックにビービー音がしたりガーガーと音声が聞こえたりします。とくにエアバンドはテレビの周波数に近いので注意が必要です。

本気で家でエアバンドを楽しみたいのであれば、固定型は断然オススメです。

ICOMのIC−R8500。固定型の中では一番のオススメです。

外出時の必需品、ハンディー受信機

家から出たら航空無線を聞く方法はハンディー受信機になってしまいます。家でも電源とアンテナを用意すれば立派な固定受信機になります。そのためハンディー受信機のラインナップは各無線機製造会社はかなり力を入れています。その中でどの受信機を選んだらいいのか迷うことも。そんな場合はまず携帯性重視か性能重視かを決めましょう。

携帯性重視の場合はコンパクトタイプで手にすっぽり入ってしまう受信機があります。価格も2万円前後。電源も乾電池またはニッカド電池2本で経済的です。しかしボタンが少なく操作性が悪かったり、音質や機能的な部分で不足を感じるかもしれません。

性能重視の場合はテレビのリモコン大のハイエンド受信機になります。だいたい6万円前後になります。まず感度や音質、機能的な部分で不足は感じることはないでしょう。でもサイズが大きいので携帯性はNGです。

ここでワタクシからのお願い。外で航空無線を聞く場合はイヤホンの使用をお願いします。他の受信されている方にも、一般の方にも迷惑になってしまいます。

ALINCO DJ-X8。コンパクトボディーにテンキー+大きな液晶。GOODです。

広帯域受信機能付き無線機の性能はいかに

最近は広帯域受信機能付きのトランシーバーがほとんどとなりました。その性能はどうなのでしょうか。

もともとトランシーバーの受信範囲はアマチュア無線の周波数だけでしたが、改造(と言っても部品を1つとるだけ)を行うと他の周波数が聞けるようになりました。ただこれは保障外。感度や音質が悪くても文句は言えません。

しかし広帯域受信機能付きのトランシーバーは保障付き。ちゃんと性能的にも記載されています。ここで肝要の受信機と比べると…、正直なところワタクシの今までの経験から受信機の方がエアバンドの受信に関しては良い結果です。

ただ電池が扱いやすく長持ちするリチウム電池だったり、堅牢防水性能を求めたり、やはりアマチュア無線もとなると現在のところはこちらでしょう。所持するだけでも免許が必要なので要注意です。また空港内での送信はご法度です。

バーテックススタンダードのVX-7。堅牢防水ボディでツーリングの愛用機です。

固定で使う場合はアンテナを立てましょう!

固定型はもちろん、ハンディータイプの受信機を家で使う場合はぜひ外にアンテナをつけましょう。それにより安定的に、強く信号を受けられるようになります。アンテナの設置や種類にはいろんな方法がありますので、一部をご紹介。

一戸建てでテレビのアンテナがある場合エアバンド専用アンテナをテレビのアンテナのポールにつけるのがベスト。高さも得られエアバンド専用と相まって文句なしの条件です。

マンションであまり目立たせたくない場合ベランダにエアバンド専用車載アンテナを取り付ける方法になります。ベランダの手すりにアンテナの基台を取り付ける金具が市販されていますのでこれを使用します。

マンションでも別に見た目にこだわらない場合ベランダにポールをつけて専用アンテナになります。この場合、アンテナの上部をなるべく上の階の屋根から離すのがポイント。近いほど感度が落ちてしまいます。

とにかく簡単に設置したい場合マグネット基台+ハンディーアンテナになります。マグネット基台はベランダの手すりやエアコンの室外機にペタッと貼り付けて設置できます。

エアバンドだけではなくほかの無線も聞きたい方はディスコーンアンテナがオススメ。感度は専用に比べて落ちますが全周波数で安定した感度が得られます。

ベランダの様子。ディスコーンアンテナとエアバンド用モービルアンテナ

我が家のアンテナ。HF〜UHFまでカバーしています

参考書物は必需品

さて実際に受信しよう!っとなった場合、まずどうすればいいの?というのがはじめの疑問。私もわからずやみくもにメモリされていた周波数をサーチしていました。

こうならないためにも、初めて受信機を買った場合は同時に参考書も必ず買いましょう。今はエアバンド専用の受信解説本も出ています。初めての方には三才ブックスの「新航空無線のすべて」がオススメ。

まず調べなければいけないのが管制の周波数。これを受信機に合わせないと交信が聞こえません。今の受信機は性能がよく、周波数を合わせるだけで後の設定は自動的にやってくれます。

ですので周波数を合わせればもう無線は聞こえてくるはず。聞こえてこない場合は周波数を違うのに合わせてみましょう。空港の周波数ならタワーとかアプローチなど。

きっとここまですれば聞こえましたよね? え゛、英語!? そうなんです、航空無線は日本でも英語なんです。そこで簡単な参考例をご用意 →こちら

各航空無線の書籍。左の新航空無線のすべては入門に最適

エアバンド受信法・・・空港の管制

空港に来たとき、また空港の近くの公園などに来たときはぜひ空港の管制を聞いてしましょう。大きな空港では航空路から着陸前まで、着陸と離陸までといったように分野に分けて管制を行っています。

まず航空路から空港へ向かう航空機はアプローチ(APP)と場合によりレーダー(RDR)交信します。この交信により空港までの道案内をしてもらいます。次に着陸目前になるとアプローチからタワー(TWR)に周波数を変更されます。タワーでは滑走路の離発着を管制していて、進入してきた航空機に対して着陸の許可を出します。着陸した航空機は滑走路脇にある誘導路へ入るよう指示され、ここでグランド(GND)に周波数を変更され、航空機がつく建物までの経路を指示します。

離陸機の場合はまずクリアランスデリバリー(CLR)で目的の空港までの飛行の許可をもらいます。次にグランド(GND)と交信して滑走路までタキシング、ここでタワー(TWR)に代わり離陸の許可を受け離陸します。離陸後はデパーチャー(DEP)に代わり航空路まで道案内をしてもらいます。そして最終的に航空路管制になります

空港では各分野に分けて管制。離陸後から航空路まではデパーチャーが担当

エアバンド受信法・・・航空路の管制

離陸した航空機が予定の離陸経路を得てある程度高度が上がると、管制が空港から航空路の管制に代わります。航空路の管制は空港の管制塔が行っているのではなく、専門の管制官が管制を行っています。

航空路は全国に張り巡らされています。この広い航空路をブロックに分けて管制しています。まず大きく4つにわけて「札幌コントロール」「東京コントロール」「福岡コントロール」そして「沖縄コントロール」になります。

そしてそれぞれのコントロールでもいくつかのブロックに分けて異なる周波数で管制を行っています。このブロックを「セクター」と言います。

各セクターがどの周波数を使っているかは参考書に載っていますので、周波数を受信機に入れると航空路の管制が聞こえてきます。航空機ははるか上空の航空路を飛んでいますので、かなり遠くでも聞こえてきます。

航空機が担当するセクター外に出た場合は周波数の変更が指示されます。

航空路の管制は空港の管轄外。専門の管制官が管制しています

エアバンド受信法・・・そのほかの無線

航空無線はこのほかにも種類がありますが、やはりエアバンドリスニングのメインは上記の航空無線となります。その他でも注目の航空無線をご紹介。この他についてはぜひ参考書をご覧ください。

カンパニーラジオ

 航空会社とパイロットが行う会話で、日本語で会話が行われています。航空路上のエンルートと空港内でのターミナルにわかれていて、エンルートでは航空路の天候状況の報告や確認、ターミナルでは乗客の対応などの会話を聞くことができます。

ATIS

 大きめの空港では24時間、自動音声により空港の天候を放送しています。これにより撮影に必要不可欠な着陸滑走路や視程を知ったりできます。

Tokyo international information tango, 0530, VOR DME Charlie approach, landing runway 16 left, departure runway 16 right, departure frequency 126.0, wind 190 degrees 7 knots, visibility 35 km, broken 4500 feet altocumulus, temperature 8, dew point minus 5, advise you have information tango.

このなかでVOR DME Charlie approachが着陸経路、Visibilityが視程です。

ターミナルのカンパニーラジオを聞いていると準備の具合がわかります

ここだけの本音…各受信機・無線機エアバンド評価

所有・または所有した機種

AOR AR-5000A…感度・音質ともによいがAGCの応答速度遅。メインダイヤルNG

AOR AR-8000…感度・音質ともによい。大きくて重い。でもそれが魅力か。

ICOM IC-R8500…感度・音質ともによい。自動モード設定がないのが痛い。

ICOM IC-R3S…エアバンドはAGCの効きが悪く使いものにならず。最悪評価。

ICOM ID-800…音質悪い。あまり長く聞いていたくないくらい。

YAESU VX-7…まぁまぁ良い。ポップ音がやや大きい。漢字表示のLCDはGOOD。

YAESU FT-24…これまたまぁまぁ良い。スケルチのスレッショルドが少しおかしい。

YAESU FT-8100…これまたまぁまぁ良い。送信中に他バンドで受かるとボツ音?

STANDARD C560…ダメ。ひずみ多し。聞くに堪えず。使い物にならず。

ALINCO DJ-X8…音質・感度・操作性・表示良し!でも混変調ありすぎ。要BPF→

 

店頭または機会があり触ってみた機種

ICOM IC-R5…ポップ音大。この点を少しごまかしているような動作も感じあり。

ICOM IC-R20…感度・音質・操作性・表示・混変調良し!大きさと価格がネックか。

YAESU VR-150…これまたポップ音大。イヤホンしていると大変なんですよね...

混変調のお助け、AORのエアバンド用バンドパスフィルタABF-125。効果絶大。

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