さらにプロレスとは。
というか、あれだけ言ってもまだ分からない方々へ。
先日、依頼された記事にて『プロレスとは。』を発表させていただきました。
それについて(予想通り)、飴に群がるクロオオアリのごとくに様々な反響をいただきました。
いわく、良く言ってくれた。プロレスファンとして溜飲が下がった。実際やらせなのか。観もしないで適当な事を言うのはやはり良くない。でもプロレス弱いじゃん。三沢最高。ペニス金串。などなど。
書いた甲斐がありました。
ペニス何とかはどーでもいいとして、実際プロレスも総合も観ないという方にはそれほど大した記事ではないのですが、私としてはそういう方にこそお読みいただきたいと思って書きました。
新鮮な気持ちで試合を観て欲しい。そのための、いわゆる映画における予告編みたいなワクワク感を演出できたらと思ったのです。
ぜんぜん違う内容でしたね。
何やらオールドファンの負け惜しみみたいな文章になってしまい、しょっぱい記事ですみませんな感が山の如しです。
だからこれはリベンジマッチです。
小川に対する橋本のような、パトスミに対するアンディ・フグのような気分で試合を開始いたしましょう。
プロレスラーがその肉体を武器とするように、豪腕はりーは文章でもって闘います。
まず前回と同じく、論理的に「総合が上でプロレスが下」という風潮を人間風車してみます。
前回は卓球の愛ちゃんとオグシオの例えを出しました。
愛ちゃんに対し、オグシオが卓球で闘いを挑む。
どっちが勝つかは明らかですね?
もちろん、愛ちゃんが負けるはずがありません。彼女は卓球界のエースであり、そのジャンルを背負っているのです。
そんな当然の事を分かっていながら、なぜか頭の悪い発言を繰り返す方が後を絶たないらしいのですよ。
この結果を見れば明らかであると。
バドミントンは卓球より弱い。
だからバドミントンは卓球より下だ。
どれだけ変な事を言ってるのか。
「総合が上でプロレスが下」という意見に対してプロレスファンが怒っているのは、自分の好きなジャンルを馬鹿にされたからというだけでは無いのです。
こんな簡単な事も理解できない馬鹿に対して怒っているのです。
テニスプレイヤーの錦織くんがバドミントンでオグシオに勝てますか?
そこで錦織くんが負けても、それがテニスの負けですか?
そしてもし勝ってしまったら、それはかなりのニュースでしょう。勝った錦織くんが称えられるのは当然として、負けたオグシオはどうなりますか。
それなのに、その結果を見てテニスが弱いなどと平気で言う神経。
テニスじゃなくてバドミントンの試合です。
逆にこれがテニスの試合だったら、さすがに錦織くんが勝つのではないですか?
これだけ分かりやすく書いているのですから、そろそろ悟っていただきたいと強く思ってしまうのですよ。
でね。こういう事書くと大体こう返されます。
「プロレスも総合も同じ格闘技じゃないか。それで負けたのだから弱い」
・・・同じ格闘技?
最初に分けたのはどっち?
矛盾している事に気付かないのでしょうか。
同じ格闘技だと主張するなら、そもそもジャンルとして「どっちが上」とかは出ないはずです。
違う競技にしたいからこそこういう意見が出るのです。
大体、ジャンルの上下を最初に語り出すのはほぼ確実に総合ファンの方からです。
プロレスファン、特に総合も観ているファンの方からは、そうしたジャンルの上下論などは出てこないものなんですよ。
勝った方が強いのは当たり前。存分に勝者を称え、負けた方にも暖かい拍手を贈る事に慣れてますからね。
不甲斐ない選手やしょっぱい試合には野次も飛びますけど、それによってジャンルをおとしめる発言だけは絶対にしないのが正しいプロレスファンの姿なのです。
加えて言うと、テニスも卓球もバドミントンも同じ「球技」です。
みんなラケットを使うし、みんな点数を取り合って、みんな勝利を目指しています。
そして、それぞれがまったく別の競技です。そういう事です。
プロレスと総合格闘は、それくらい違う競技です。
もちろん、似ている所や違ってる所を言い出したらキリがありません。
観る人の印象によっても違うでしょう。
ですが、いちいち細かい部分を挙げ連ねるのも変でしょう。だってテニスとバドミントンの違いなんて観りゃ分かるわけですから。
行き過ぎると作画監督がアレで声優がアレで俺は認める認めないみたいなコアな話になるでしょう。
一般人からは確実に気持ち悪い目で見られます。
んで。
プロレスラーはそれでも勝っているのです。
まったく違う競技なのに、です。
ルールの壁を越え、今まで何人ものレスラーが総合格闘家から勝利を奪っているのです。
特に桜庭和志や藤田和之などは大きな結果を出しています。
これがどういう事だか分かりますか?
オグシオが「卓球」で愛ちゃんに勝ったのですよ。
朝青龍が「柔道」で石井慧に勝ったのですよ。
プロ野球の巨人軍が、野球でソフトボールのチームに破れたようなものなんです。
今、総合がどれだけ危機に晒されているかお分かりですか?
軒を貸して母屋を盗られて、どうしてそんな態度でいられるのですか?
総合格闘技のファンはいい加減、総合格闘技という「強さの幻想」から目覚めるべきです。
コアなプロレスファンは、とっくの昔に目覚めてますよ。シャムロックとゴルドーが一夜にして破れたあの瞬間からね。
さて、ここまでは前回のお話の補強に過ぎません。
そろそろ真剣について真剣に書きましょう(すでに失敗した感はありますが)。
皆さん、道場破りってご存知ですか?
はいその通りです。はるか昔から小説やら映画やらのテーマになってる、あの道場破りです。
要するにアポ無しで会社に押しかけ、俺が勝ったらこの会社をよこせと言うようなもんです。
ヘビ並みの神経があれば通報しますよね。
我らがウィキ先生が言うには眉唾なんじゃない? との事ですけど、しかしこれを実際に行った猛者がいます。
それも現代で。
その名を安生洋二と言いまして、当時UWFインターというプロレス団体所属の選手でした。
時は94年12月。
そして向かった道場の名は『ヒクソン・グレイシー柔術アカデミー』。
そうです。
格闘界の黒船、あのグレイシー柔術最強の男が預かる道場でした。
結果から書きましょう。
安生は敗れました。
詳細記事があったので、転載させていただきます。
■ 試合詳細 ■
安生がヒクソンにたいしてローキック。
ヒクソンはタックルで安生をテイクダウン。
マウントポジションを取ったヒクソンは、パンチの雨を安生に降らす。
たまらず安生が腹ばいになると前頭部を床に叩きつけたり、鼻に指を引っ掛けて上半身を起こしたりといった荒っぽい攻撃を繰り出す。
安生は顔面を腫らし流血。
最後はチョークスリーパーで安生を締め落とした。
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何度読んでも恐ろしい記事です。
鼻に指を引っ掛けて上半身を起こしたりなど、思わず私は自分の鼻を触ってしまいました(スタンドは使えません)。
この壮絶さ、まさしく道場破りとその末路です。
当時グレイシー柔術の何たるかは未だあまり理解されておらず、安生が相手を舐めていた可能性はあります(実際にそれを匂わせる記事も多いです)。
そしてヒクソンは門下生たちに規範を示すべく、相手を殺すくらいの覚悟で対峙したように思えてならないのです。
この事件を読んで思う事は人それぞれですが、大抵の方はこう考えると思います。
ヒクソンは〜 強い〜 怖い〜♪
(スターウォーズ『帝国のマーチ』で)
いや冗談じゃなく。
未だ見ぬ異国のツワモノ、その抜き身の刃の恐ろしさを実感すると共に、Uインター屈指の実力者たる安生がさも簡単に敗れ去った事実。
冗談抜きで衝撃が走りました。
プロレス最強幻想を追い続けていた若いファンたちは、ここでおそらく童貞を捨てたのでした。
ぶっちゃけ安生酒飲んでたらしいけど、調子マックスで行ったとしても恐らく結果は変わらなかったでしょう。
当時の安生、ビッグマウスすぎて嫌われ者だったしね。
ここで何が変わったか。
言うまでも無く、グレイシー柔術を始めとする「総合」の足音、そしてプロレスの凋落でした。
だがしかし待っていただきたい。
ここで賞賛されるべきは何を置いてもヒクソンであり、それに異を唱える者はあんまりいないと思います。
されど逆から考えてみましょう。
結果はどうあれ、その姿勢はどうあれ。
たった一人で異国の敵地へ赴き、言い訳無しの真剣勝負の上、派手に玉砕したサムライが確かにいたのですよ。
この事を、我々プロレスファンや総合ファンは忘れてはならないと思います。
そこで質問です。
総合格闘家で、プロレスの世界にカチ込んだ人間って一体何人いるのですか?
若き日の大山倍達とか前田光世みたいな、いわゆる「伝説」は抜きで挙げてください(梶原一騎の創作もナシで)。
猪木と戦ったモハメド・アリや、同じく猪木と死闘を演じたウイリーは、素晴らしい勇気の持ち主だと思います。
橋本と闘った小川もね。
しかし彼らはそもそも総合格闘家では無いのです。
マス・オーヤマやウイリーは空手家ですし、アリはボクサーでした。小川はもちろんJRAの元職員です(本当)。
という訳で、総合を謳う格闘家がプロレスに挑戦した例は稀有なのです。
さあ、どうですか?
ちょっと思い出してみましょうか。
ジョシュ・バーネットやオタービオ…。ううむ。
前者は自身をプロレスラーだと断言しており、後者は異種格闘技ルールだったしなぁ。
かつてのリングスやパンクラスなら、そういう格闘家も存在していたと言えるでしょう(ヴォルク・ハンとか)。
しかしこれら「U系」の団体は、スリーカウントのルールがありません。
いわゆる王道のプロレスではなく、総合格闘技に非常に近いルールを採用した団体だったのです(そっちも好きだけどね)。
こうやって見ると、プロレスラーはけっこう他流試合に乗り込むけど、総合格闘家はわりと自分の庭先だけで戦ってるなあと思えない事もありません。
私は別に道場破りをしたから偉いと言ってる訳じゃありませんよ。
プロレスラーは弱いんだと思いたがってる方々に、その意見を証明してみて欲しいのです。
あなた方の言う、「プロレスは真剣じゃないから弱い」という意見。
そう思うんなら道場破りに来なさい。
格闘家ウェルカム。
自分たちの庭に招くだけでは無く、今度はそっちが勇気を出してプロレスのリングに上がりなさい。
プロレスは逃げないから。
だって総合の方が強いんでしょ? だったら平気でしょ?
放っておくとまた、強い強いはずの総合格闘家さんが何かの間違いで負けちゃうかもしれませんよ?
怖がらずに出てくれば良い。ビビッて無いで。
ただし、強いだけしか売りが無ければたぶん干されると思います。
しばらくは勝たせてくれるでしょうけど、すぐ飽きられて埋もれますね。そしてベルトも取られて中堅以下でくすぶっちゃう。
プロレスってのは、ある真剣勝負に勝利しないと食って行けないんですよ。
その相手は客です。
「どっちが強いか」という昔からのテーマに加え、試合内容の面白さ・深さ・興奮度などを重視するのがプロレスの大きな楽しみ方なのです。
ただ相手が10秒寝てくれりゃ勝てる世界とはわけが違うのですよ。
でね。
本当に実力のある総合格闘家は、マジでプロレスのリングに上がってこんなクソみたいな記事を吹き飛ばして欲しいのですよ。
戦慄が走るくらいの圧倒的強さを見せてね。
あなたが強い事を我々は良く知っています。そしてプロレスは深く、プロレスラーは比類なき頑強さを誇っています。
遠慮は要りません。ただし覚悟は決めてください。
我々はあなたの参戦を、ずっとずっと待ち続けているのですから。
ジョシュ・バーネットの新日本プロレス初登場は凄かった。
当時のチャンピオンは永田裕志で、その永田を前にスーツ姿で挨拶する姿はカッコ良かったですよ。
そしてスーツ姿のまま、チャンピオン永田をわずか10秒で絞め落としてしまったという。
抜き身の格闘家の恐ろしさを見せ付けられました。
・・・という事で、すみません。
やっぱり前回と同じ事を書いてました。
ちょっと指の角度を1本変えて行きましょう。
プロレスに夢を見る人は、もしかしたら学研の「ムー」の記事を信じる人かもしれない。
そんな風に思っていた時期が私にもありました。
「オーパーツ」ってご存知ですか?
何やら超古代文明の証拠だとか、当時の技術ではそんなモノ作れないとか、そうした諸々のヤフオクにおける評価どマイナスの業者のように胡散くさい品物です。
例えばこれね。
明らかにジェット機だろ! みたいな外見をしてますけども。
ぶっちゃけ正体はこいつらしいんですね。
夢もへったくれもありませんね。
そんな事は当然でして、そういうのを本気で信じてる人はたぶん居酒屋でトイレに行ってる間にヒソヒソ言われてるタイプの人だと思います。
だがしかし。
この妙な形の彫刻が飛行機じゃないからって、その文明を否定して良いはずがありません。
私の言いたい事が分かりますか?
子供の頃は、不思議がいっぱいありました。
UFOだってネッシーだって信じてました。
モアイを作ったのは宇宙人かもしれないし、超能力はアメリカの軍部や諜報部で実用化されているかもしれない。
私なんか練習したらテレパシーを出せるんじゃないかと思って、必死に念じてたら鼻血をたらした事があります。
笑い事ではなく、当時は真剣だったんです。
そして、クリスマスにはサンタさんが来てくれました。
私はゲームウォッチを願ったのに、なぜかタカラのスクールパンチをくれたお茶目なサンタさんでしたけど、ともかく信じていたのですよね。あの頃は。
でも本当はそうじゃなかった。
サンタなんていないよ。
ネッシーは嘘だよ。
超能力も存在しない。
ナスカの地上絵はナスカの人が描いたんだし、モアイだってイースター島の人が作ったんだ。
だけど本当にワクワクしてた。
あの頃は。
あのワクワクを憶えている人って、本当に幸せだと思うんですよ。
本当に。
そして思春期を迎える頃、夢のかけらが一つ一つ剥がれて行くのです。
子供は少年になり、青年になり、やがていつか絶対に大人にならなくてはいけないのです。
それはとても悲しい事かもしれませんが、同時にとても尊く、また強く、そして新たな海を知る大事な船出なのですね。
だから怖れずに進めば良いのです。
もうトイレの穴から手なんか出ません。
失った夢の代わりに、我々は真実を手に入れられるのです。
現実の厳しさに泣く事もあるでしょう。裏切りの痛さに叫ぶ事もあるでしょう。
けれど、それでもなお笑って「許す」事のできる人間こそがこの世を強く生きられる。
私たちは、生きて行くしかできないのですから。
そして、時々でいいからあの頃の夢を思い出してください。
あのワクワク感を。
馬場や猪木が悪い外人をやっつける。謎の覆面レスラーがやって来る。タイガーマスクが宙を舞う。
世代によって違うと思いますが、あの時感じた興奮こそが「本物」で「真剣」です。
茶番だったら子供たちに夢を与える事なんかできません。
あの変な彫刻は、単なる魚かもしれない。
だけど俺たちの心の空を 確かに奴は飛んでいたんだよ。
だから私はプロレスが好きだ。プロレスを愛してる。
惚れた女の良い所は私一人が知っていればいい。文句を言う権利は他人には無い。
そして、私は彼女が完璧じゃない事も知っている。
そういう所もひっくるめて全部私は愛してる。
最後に。
この記事を、天国の福田雅一選手に捧げます。
君の技の一つ一つは本当に泥臭かったけど、それでもあのスープレックスの切れ味の先に私はベルトの光を見ていたんだ。
今では、師匠の橋本も君の元へ行ってしまったんだね。
ずいぶん寂しくなったよ。
だけど大丈夫。安心して見守っていて欲しい。
俺たちの心の空は、君が夢見たあの空に繋がってる。
2008.10.1 豪腕はりー。
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