1983年 角川映画 配給・東映


 映画化構想10年、制作準備3年、制作費10億円の大作です。

 原作は江戸後期の作家・滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」に、
新解釈を加えた鎌田敏夫氏の小説「新・里見八犬伝」(角川書店刊)。
 監督は有名な深作欣二氏。

 日本映画界に体力が残っていた頃の良質なエンターテインメントでしょう。

 それから、エンディングのスタッフロールに、
「特殊メイク」という技術職が記されたのは、日本映画で初めてのことだそうです。
 特撮映画としても、けっこう見所のある作品ではないでしょうか。

 たいていのレンタルビデオ屋には置いてあると思いますので、
詳細なストーリーは遠慮しておきますが、
この映画に関しては行く前から「こぼれ話」があります。

 劇場窓口で前売り券を買ったとき、
券を渡してくれたお姉さんに、
「ポスター、ひろ子と広之どっちにしますか?」と言われ、
ああポスターがついてるんだと思った私は、
迷うことなく、ごく当たり前のように、
「健二はないんですか?」とたずねたところ、
「はあ?」
 と馬鹿でも見るような顔で、いぶかしげに言われてしまい、
勢いに押された私は小声で、
「広之……」と言ってしまいました(申しわけありません)。

 冬休みになって劇場へ向かい、
そのお姉さんがもぎりをやっていたときにはドキッとしましたが、
いちいち覚えていないのが当然らしく、
すんなり通ることができて助かりました。

 無事入場して、席も確保でき、映画が始まります。

 当時は悪役の評価が出来なかったため、
大葉氏が悪い役で出てきた時はショックでしたが、
途中から良い役になってくれて嬉しかった記憶があります。
 仲間の盾になり、矢で針千本のようにされてしまうのですが、
役どころとしては目立つものでしたね。

 師匠の千葉真一氏も、
出てくるだけで画面が締まる感じがして、さすがだなあと思いました。

 半年くらい後に、
地元の着物即売会に千葉氏がいらっしゃる機会があり、
母が着付け教室をやっていることを利用して、
母と弟と三人で会場へ潜り込み、
帯しめを一つ買いこんで、いっしょに写真を撮っていただきました。

 出来上がったポラロイド写真を見ると、
母は化粧をするのに気合いを入れすぎたのか、
デーモン小暮のようになっており、
私は緊張のせいかこわばって、
みょうにむくんだ顔となり、
弟はスターを前にボーッとしたのか、
口半開きと、最悪な家族写真となる中、
千葉氏はさわやかな笑顔を決めており、
「プロだなあ」と変なところで感動しました。

 話がそれましたね、元にもどしましょう。

 一般的にもみなさんそうだと思いますが、
京本政樹氏のことを知ったのは、この作品が最初です。
 女性が男装してるのではないかと勘違いしたくらい、
見とれてしまうような美青年ぶりでした。
 男性を見て「かっこいい」と思ったことは何度もありますが、
「美しい」と思ったのは京本氏が初めてではないでしょうか。

(それにしても、京本氏は大葉氏と競演してるのですから、
京本コレクションで「宇宙刑事ギャバン」を造ってくれてもいいと思いませんか?
 おお、賛同の声が聞こえてきますね)

 それから、主演の真田広之氏。
 精悍な面構えで、見事なアクションを見せています。
 でも最近の若い人は、
真田氏がアクションスターだったことをご存知ないかもしれませんね。

 他のJACの方にも言えるのですが、
役者として偉くなってくると、体を動かさなくなる方が多いですよね。
 もったいないなあと思います。
 ケガをしたくないからでしょうか。

 そう言った意味でも、千葉真一スピリットを一番に受け継いでいるのは、
生涯を通じてアクションにこだわっている大葉氏ではないでしょうか。

 また話がそれてきましたが、ついでにもう一つ愚痴っておきましょう。

 常々、感じているのですが、
同年代の山城新伍氏、松方弘樹氏、梅宮辰夫氏とくらべ、
千葉真一氏の一般的な評価が低すぎると思いませんか。
 経歴にしても、出演作品数にしても、全然劣っていないと思いますし、
なにより育てたスターの数が違いますよね。
「サニー千葉をなめんなよ!」
 と叫びそうになることが何度もありますよ。

 すいません。「里見八犬伝」の話でした。
 もちろん満足して帰りました。

 未見の方は、ぜひご覧下さい。
 俳優「大葉健二」が輝いていますから。



「里見八犬伝」登場人物と配役

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