「ドラえもん」を見たら「カックラキン大放送」にチャンネルを変える。
当時の子供たちは、
だいたいこのパターンで金曜の夜七時台を過ごしていたのではないでしょうか。
私もご多分にもれず、同様の選択をしていました。
いつもなら「ドラえもん」が終わったあと、すぐにチャンネルを変えるのですが、
その日たまたまトイレに立ったことが、衝撃的な出会いのきっかけとなります。
トイレから戻り、テレビの前に座った瞬間、印象的なイントロが流れ始め、
画面上には「宇宙刑事ギャバン」のタイトル文字。
なんだと思う間もなく、暗闇から現れた銀色に輝くヒーロー。
まばゆい外観を注視しているうちに光かる目。
串田アキラ氏のハスキーな歌声にあわせ、ジープのハンドルを鋭くきる大葉氏。
爆風に吹き飛ばされるも、飛び込み前転で身の安全をはかり、
すぐに体勢を立て直して、油断のない目で元いた場所を見上げる野性的な顔。
ワープ航法でやってくるドルギラン。
到着と同時に上下が分離し、変形していく下部。
龍という思いもよらぬ形となり、生き物のように暴れまくる電子星獣ドル。
新宿を駆け抜けるサイバリアン。
レーザーブレードで決めのポーズをとるギャバン。
すべてが心を躍らせる映像でした。
こんなに短い時間で魅了させられたことは、あとにも先にもありません。
当時はうまく説明できなかったのですが、
見たことのないすごい物を見たという感覚は、今でもはっきり覚えております。
私はチャンネルを変えることなど、すっかり忘れていました。
そのまま番組になだれ込み、
ますますその魅力にとりつかれていくことになるのです。
ドルギランとマクー戦闘機との戦い。
叶和貴子さんのかわいらしさ。
大葉氏とモンスターとの攻防。
ピンチになってからの蒸着。
そのプロセスの再現。
光り輝くコンバットスーツ。
マクー空間の目まぐるしい場面転換。
そこへ突入していくサイバリアン。
電子星獣の猛々しさ。
ダブルマンとの殺陣。
レーザーブレード、ギャバンダイナミック。
私は最後まで身じろぎすることなく見続けました。
と同時に、毎週かかさず観ることを誓ったのです。
母子家庭に育った私は、
父を捜しているというサイドストーリーにも共感し、
回を重ねるごとに熱を上げていきました。
まずは、この感動を伝えねばと説得の末、
クラスの男子の「宇宙刑事ギャバン」視聴率を100パーセントにします。
さらに、当時は「ボンタン」と呼ばれる、
タックの入った太いジーンズが好まれていたのですが、
大葉氏と同様に、白くて細いジーンズをはき、
全員白とはいきませんでしたが、細いジーンズを同級生に普及させます。
できればブーツもはやらせたかったのですが、
一般ではさすがにはく人がいなかったのか、
男性用のロングブーツは手に入りませんでした。
やがて外見だけではなく、
自分もギャバンのように人のために働きたいと思うようになり、
生徒会長に立候補します。
その際作った選挙用のポスターにも、しっかりとギャバンの絵を書き込み、
見事に当選しました。
今から考えると、よく選挙監理委員が許可を出したなと思います。
当選後はドライビンググローブをはめて登校し、
いじめのない学校づくりに取り組みました。
そして十数年、私の心にいまだに刻まれている、
「いっさいの悪事に荷担せず」
「いったん味方と見定めたら絶対に裏切らず」は、まさにギャバンの影響です。
このように「宇宙刑事ギャバン」は人の一生を変えてしまうような、
本当に素晴らしい作品です。
この作品に出会っていなければ、
私は勉強ができるだけの陰気な少年時代を送っていたかもしれません。
特撮に関しては、
今となっては古く感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
国内では当時、間違いなく最先端でした。
斬新なBGMに熱すぎる主題歌、優れた脚本演出、
見たことのない造形美、大葉氏のキレのいいアクションに巧みな演技、
脇を固める豪華な顔ぶれ、
あらゆる要素が歯車となって、見事にかみ合い、
猛烈な勢いで回転している。そんな番組でした。
素晴らしい作品をみなさんに知ってもらいたい。
その思いでストーリーの見所など記していく所存でございます。
「宇宙刑事ギャバン」作品紹介
もどる
トップへ