アンジェリーク 魔恋の六騎士


 『アンジェリーク 天空の鎮魂歌』の前日譚にあたるスピンオフ小説『アンジェリーク 天空の鎮魂歌 〜黒き翼のもとに〜』の乙女ゲーム化作品。 『天空の鎮魂歌』で敵役として登場したレヴィアス私設騎士団の騎士団長9人のうち6人を攻略対象とした、オトメイト制作の女性向け恋愛ADVです。 レヴィアスとのイベントも用意されていますが、彼と恋愛関係になることはできません。
 幼い頃に両親が行方不明となり、知人の家に引き取られた主人公・テレサは、その家の子供ルノーと姉弟のように育てられ、穏やかに暮らしていた。 しかし、ある事件に巻き込まれたのをきっかけに、怪しい傭兵団と出会い、行動を共にすることになる。 少しずつ目覚めていくテレサの不思議な能力は一体何なのか。そして、運命に向かって突き進む傭兵団の真の目的とは?
 恋愛描写がなかなか奥ゆかしくて、乙女ゲーとして魅力的な作品だと思います。 元・敵役ゆえに恋愛対象キャラにしては過激な個性や過去をお持ちの6人との、 小道具が活躍するロマンチックなやりとりや、仲間以上恋人未満の微妙な距離感をめいっぱい楽しむことができました。 それぞれにこんなに素敵な展開を用意してくれるなら、今回攻略対象になっていないウォルターやカーフェイ、 できればヨハネとも恋愛させてほしかった! と思わずにいられないくらい。 イベントCGの数が多く、次から次へと出てくるのも嬉しかったです。
 その一方で、『天空の鎮魂歌』のスピンオフ作品としての側面については、ちょっと『天空の鎮魂歌』に気を遣いすぎなんじゃないかと感じてしまいました。 特に、どのルートを辿っても悲劇的な結末を避けることができない、完全に結末の決まった物語になっている点。 全てのエンディングに『天空の鎮魂歌』に繋がる余地を残す、という方針でもあったのでしょうか。 原作を大切にしてくれるのはありがたいけれど、そのために単体では満足感の得られにくい作品になってしまっている気がします。 エンディングを迎えるたびに敗北を味わわされ、報われることのないゲームは、わかっていてもプレイしていてしんどい。 せっかくゲームという媒体で作られたのだから、パラレルと割り切った『魔恋の六騎士』だけの幸せな結末もぜひ用意しておいてもらいたかったです。 そうしたら、もう少し万人向きの作品になっただろうに。
 システム面では、シナリオの分岐をチャートで確認しながら回想できる「クロニクルモード」が重宝でした。 ストレスだったのは、メッセージスキップの遅さ。 選択肢と選択肢の間隔が長いゲームなので、イベントスキップ(シーンスキップ)や次の選択肢へのジャンプ機能があれば便利だったと思います。
 そんな具合にいくつか不満点もありますが、『天空の鎮魂歌』が大好きで悲劇も好きな私にとっては、夢のような時間を過ごさせてくれる作品でした。 何より、10年以上も前のゲームのキャラクターたちの物語を、より甘美な悲劇にしてもう一度出会わせてくれたことに感謝です。オトメイトさん、ありがとうー!

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