えばぁの見解 対振り飛車急戦・補足
8th January 2004
(改装 : 1st December 2005)
前項では斜め棒銀・▲4五歩早仕掛け・山田定跡・鷺宮定跡・棒銀の5つを紹介しました。
この5つは「▲5七銀左戦法」とも呼ばれます。(棒銀は違うかも)
5七にいる銀が、左の銀だからです。
しかし▲5七銀左戦法はあまりに一般的なため、振り飛車の定跡本にはほとんどと言っていいほど載っていて、それなりに受け方も広まっています。
そのため、「(▲5七銀左は)みんな知ってるからやだ」という意見も少なからず存在します。
また、▲5七銀左は一発で勝負が決まったりはせず、その後も(居飛車は)緻密なやり取りが続くために「めんどくさい!」というあこぎな人もいます。
そんな人が辿り着く場所が、この項で紹介する「右四間飛車」という戦法です。
(※注 えばぁは右四間飛車が「大嫌い」です。)
この項では右四間飛車のほか、「▲5七銀右戦法」を紹介します。
▲5七銀右戦法は、気分次第で急戦・持久戦両方に変化できる、とても柔軟性のある戦法です。
特に相手が藤井システム使いであれば、(たとえ左美濃や穴熊が出来なくても)心理的に藤井システム側を圧迫できるというシロモノです。
とりあえず、ご覧ください。
右四間飛車は「相手の形を見て有効な仕掛けを決める」という過程を捨て、「仕掛けの権利がある」という点を追求した戦法です。その「仕掛けの権利」をちらつかせつつ玉を堅くしていくのが基本的な指し方ですが、ここでは急戦の話をしていきたいと思います。
初手から左図までの手順 適当に進めましたが、これが大体右四間飛車の基本図です。居玉での仕掛けもありますが、それに関しては他サイトで研究してください。 |
右四間飛車+舟囲いで急戦を仕掛ける場合、玉側の端歩の突き合いは右四間側の攻め筋を増やして得です。多数解説しているサイトがあるので省略しますが、基本定跡では端攻めがあって右四間有利と言う形があります。
急戦の話ですから、ここから仕掛けを目指します。
右四間飛車の攻めにはとにかく右桂が必要なので、
1.▲3六歩~▲3七桂
2.▲1六歩~▲1七桂
から桂馬の活用を目指します。
一方、受ける振り飛車は△1二香が対策の基本です。
普通に考えれば桂馬は3七に跳ねたいところです。▲3七桂型のメリットは「もしかして▲4五桂と飛ぶ筋があるかもしれない」という含みです。
しかし、この▲3七桂型は桂馬を跳ね角交換をした後に△3七角と打たれる筋が生まれたり、△1五角と出る手を消すために▲1六歩が必要となって一手遅れたりと、怖いところがあります。 |
参考棋譜 : ▲3七桂型右四間飛車(舟囲い型)への対策
▲3七桂型を改良した形が、この▲1七桂型です。 |
参考棋譜 : ▲1七桂型右四間飛車(舟囲い型)への対策
<えばぁの見方>
最初にも書いたように、えばぁは右四間飛車が大嫌いです。
自分でやったらうまく行かず(笑)、相手がやってきたら訳がわからないまま負けてしまったというトラウマがありまして。
飛車動かしてますから居飛車じゃないですが、かといって囲いは舟囲いや穴熊という居飛車系の囲いだという「おまえ何者?」というのもあります。
右四間飛車は基本的に「わかりやすくて、攻撃力があって、しかも玉を固めることもこっちの自由」と言う、「先入観」から成り立っている戦法だと思います。
「自分から動く」と言う、一般的な振り飛車に欠けている感覚をうまく突いている。
本当は振り飛車側からも動く手はあるんですが、知れ渡っていないと言うことが災いして十分に組ませてしまうということが多々見られます。
そんなことから、振り飛車党は右四間を忌み嫌い、とにかく攻撃力を求める居飛車党(?)は右四間オンリーになってしまうのだと、えばぁは思います。
右四間飛車の恐ろしさはこれだけにとどまらず、これ一本で居飛車にも対応できる(完璧とは言いがたいが)と言う点が好まれています。
相手がどうしようがこっちが右四間に組めばいいんですから、こんなにあこぎな戦法はありません。
また、右四間飛車は将棋をちょっと覚えると「思いつきやすい」戦法だと思います。えばぁもはるか昔、ネット将棋なんてものが存在さえしなかったころ、右四間飛車もどきを考えたことがありました。
飛・銀・桂が一点(4五)に集中して、しかも角の利きもあるんですから、「数の理屈」から浮かびます。「駒の数が多いんだから突破確実じゃん!」と。
と、誰もがちょっと将棋を覚えれば思いつきそうな駒組みがここまで猛威を振るっているとは、2年前まで知る由もありませんでした。現在アマでは「早石田か右四間か」と言うくらい、初心者が覚える戦法第1位にランクされています。(当社調べ)
友だちの中でもマッキー、師匠、ドクターと3人もの人間が右四間飛車の洗礼を受けています。 (※注 覚えたとき、ドクターは既に初心者ではなかった)
そんな右四間飛車のデメリットは、単純であるがゆえに対策を立てられやすいと言う点です。
その単純さがプロでは嫌われ、アマでは好かれています。
とにかく破壊力を頼りに攻撃を仕掛けてくるあたりは、玉の堅さを頼りに暴れまわる振り飛車に通じるものがあると思っています。
居飛車系統に分類される戦法ですが、感覚的には振り飛車なのではないかと思います。
ここまで書きましたが、右四間飛車を採用するかどうかはその本人の感覚次第です。
えばぁが嫌いなのは、「何が何でも右四間しかしない(できない)人」です。
戦略的に右四間飛車を採用するならまだいいですけど。
攻めることに慣れるのなら間違いなく右四間飛車は有効ですが、ずっとそればかり使い続けるのはそれ以上の上達を妨げるような気がします。(どんな戦法でもですけど右四間は特に)
以上、右四間飛車でした。
右四間飛車の飛車先不突き
飛車先不突きの右四間飛車と言うものがあります。
▲2六歩を突いていないと言うことは一手早いと言うことですから、振り飛車は飛車先を突いた右四間飛車と同じような受けをしていては一手間に合わないことがあります。
飛車先を突かずに振り飛車対策になるなんて、なんていい戦法なんだ。
飛車先不突きで右四間飛車に組む場合の進行は、まず初手から▲7六歩△3四歩▲4八銀が考えられます。
次に△8五歩のがあるので受けないといけませんが、角道を止めないと角交換をされてしまうので、▲6六歩。
つまりのところ、「飛車先不突き右四間飛車は、振り飛車決め打ちである」と言うことです。
ちなみに、後手番なら飛車先不突き右四間飛車は十分可能です。 |
▲5七銀左戦法は7九の銀を5七に持ってきたわけですが、3九の銀を5七に持ってくる戦法もあり、それは▲5七銀右戦法と言われます。
急戦・持久戦どちらの含みもあり、相手を翻弄することも出来ます。
初手から左図までの手順
左の図が、▲5七銀右戦法の基本図です。 |
と言うように、この図は「持久戦志向」の図です。
これを見て「絶対急戦」と言う人は、師匠くらいのものです。
※ 今聞くとたぶん逆のことを言う。 ('04.Oct追記)
ですが、今から紹介するのはその師匠がこの図から十八番にしている「▲5七銀右急戦」です。
この図から、▲3六歩と突きます。
もちろん▲8六歩の左美濃も有力ですが、急戦に絞って解説しようと思います。
▲3六歩に対する応手は△5二金左、△4三銀が考えられます。
ここでの△4五歩は角を換えた後の振り飛車は△3三銀が動けないことから手詰まりになる可能性が高く、それに対し居飛車は左美濃への組み換えが可能で進展性には困りません。
この場合の居飛車の手は、角頭に狙いをつける▲3八飛です。 |
参考棋譜 : VS△3二銀型四間、居飛車成功例
▲3六歩に△4三銀の場合は、斜め棒銀と同様に▲4六銀と上がります。斜め棒銀と同じように進めば(左図から△5二金左)、▲5五銀と出る筋があって居飛車が不満ありません。なので振り飛車も工夫してきます。(参考棋譜にて) |
参考棋譜 : VS△4三銀型四間、居飛車理想形
<えばぁの見方>
▲5七銀右戦法の最大のメリットは「急戦・持久戦両方に変化できる」と言う点です。
場合によっては基本図から▲3六歩と突いたあとに左美濃に変化することさえ可能です。
現在主流になっている藤井システムの駒組みに対して、▲5七銀右戦法は非常に効果的です。
居飛車側の方針が固まるまでは居玉の藤井システムに対してギリギリまで態度を保留すると言う戦略が、この▲5七銀右の急戦によって生まれました。
今年(2003年)の名人戦第3局が▲5七銀右急戦(▲森内△羽生)、第4局(千日手局 ▲羽生△森内)が△5三銀右急戦と、大舞台でも現れています。
※ 現在ではこの右銀急戦によって△4三銀型藤井システムは絶滅した。 ('04.Oct追記)
今まで居飛車穴熊・左美濃という持久戦のみだった居飛車党の人も、この▲5七銀右急戦を覚えることで作戦に幅が広がります。
「何が何でも藤井システム」とばかりに▲3六歩を突いても居玉のにわかシステム党には特に有効です。
(居飛車の▲3六歩を確認してから藤井システム側は玉を動かすのが基本。)
えばぁは右四間飛車より、断然こっちの▲5七銀右戦法のほうが好きです。
5七にいる銀をどう使うかという、いろいろな構想を考えられるところがです。
こういう好みによるところはそれぞれの棋風・構想が出るところですから、観戦していても面白さがありますし。
まぁ、個人の好みなんですが。
以上、▲5七銀左戦法以外でもよくある形の急戦を載せてみました。
手順などあやしいものですが、このようなものだというイメージを掴んでもらえれば幸いです。