サイバー・アナログ速記講座

「インツクチキ」と長音について
(あるいは「広島方式(Hiroshima Method)」の特性について)

序文で「インツクチキ」の法則のことを書きました。漢字熟語の 2 音目に必ず「インツクチキ」のどれかの音が入るということでしたね。

これを実際に、例えば日本の省庁の名前で調べてみましょう。

下に書いたのが日本の主な省庁です。

  1. 環境省
  2. 外務省
  3. 経済産業省
  4. 国土交通省
  5. 厚生労働省
  6. 財務省
  7. 総務省
  8. 内閣府
  9. 農林水産省
  10. 法務省
  11. 防衛省
  12. 文部科学省
  13. 郵政省

「省」は除いて考えると、「経済産業省」は「経済」と「産業」に分かれます。こういうふうに分けると、

  1. 環境
  2. 外務
  3. 経済
  4. 産業
  5. 国土
  6. 交通
  7. 厚生
  8. 労働
  9. 財務
  10. 総務
  11. 内閣
  12. 農林
  13. 水産
  14. 法務
  15. 防衛
  16. 文部
  17. 科学
  18. 郵政

以上、18 の熟語があります。

おやおや? このうち 2 音目に「インツクチキ」の入っていないものがありますね。

「交通」「労働」「法務」

この 3 個です。

というわけで、漢字熟語の 2 音目に必ず「インツクチキ」のどれかが来るというのは事実ではありません。

それでも、18 のうち 15 は当てはまるので、確からしさは 83 %程度の高い率ですね。

さて、ここまでは前置きで、次からが本題です。

実は、「インツクチキ」に当てはまらない熟語はすべて長音(伸ばす音)になっています。ということは、「インツクチキ」と長音を速く書くことに成功すれば、相当速く書けるということですね。

「こうつう」や「えいせい」などは、実際の発音は「こーつー」「えーせー」ですから、長音と言えます。これらを長音とみなして、上の 18 熟語のうち「インツクチキ」または長音がどのぐらいの割合で入っているか調べてみましょう。

長音はすべて「ー」であらわします。そして、「きょ」などの拗音は 1 音とみなします。

※ A = 漢字熟語の 2 音目が「インツクチキ」または「長音」の数
言葉読みA※総文字数
環境かんきょー24
外務がいむ13
経済けーざい24
産業さんぎょー24
国土こくど13
交通こーつー24
厚生こーせー24
労働ろーどー24
財務ざいむ13
総務そーむ13
内閣ないかく24
農林のーりん24
水産すいさん24
法務ほーむ13
防衛ぼーえー24
文部もんぶ13
科学かがく13
郵政ゆーせー24
2965

※ 「科学」は、「科学」の「がく」の 2 音目が「く」なので、カウントします。

結果は、2 音目が「インツクチキ」または長音であるのは 29 です。

したがって、漢字熟語のうち「インツクチキ」と長音が占める割合は

(29 ÷ 65 × 100 ≒ 44.6 %)

実に 44.6 %です。これがすべて四字熟語であれば、ほぼ 50 %になります。

つまり、「インツクチキ」と長音の書き方を工夫するだけで相当速く書けることになります。

逆に言うと、1 分間当たりに書ける文字数はかなりふえるということです。

さらに、65 文字のうち長音はいくつあるでしょうか? 16 あります。約 25 %ですね。この長音を工夫するだけでも相当速くなることがおわかりでしょう。

速 記では 50 音すべてを 1 画(一筆)で書きあらわします。これは平仮名の 3 分の 1 ぐらいの画数ですから、速記基本文字をマスターしただけでも平仮名の 3 倍速く書けるようになります。平仮名で 1 分間 80 文字書けるとすると、理論上、速記文字では 240 文字書けるのです。

さらに、「インツクチキ」と長音の書き方をマスターして 15 %速く書けるようになったとすると、1 分間 276 文字書ける計算になります。

この講座の目標速度は基礎編 No.1 で 1 分間 150 〜 200 文字、基礎編 No.2 で 1 分間 200 〜 250 文字です。

一見高過ぎるハードルのようですが、こういうふうに考えていくと、これは十分に達成可能な目標です。

「広島方式(Hiroshima Method)」なら実際に達成できます。

というわけで、速記上達の一番の近道は速記基本文字が少しでも速く書けるようになることです。

そして、速記文字を速く書く一番の近道は速記文字が速く読めるようになることです。この辺は「速記の練習方法」で詳しく述べます。


2 画で 3 音を表現する最も有力な方法は、 /\ のように 2 画を狭い空間で接続することです。

「広島方式(Hiroshima Method)」はこの一番書きやすい方法を長音の表記に採用しています。したがって、全体として非常に書きやすくなっています。この方法は外来語の多い現代の表記に適しています。実際に書いてみるとよくわかります。

「広島方式(Hiroshima Method)」のよさが少しはわかってもらえましたか?

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