作品名 | 海峡 |
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さくひんめい | かいきょう |
初出紙 | 読売新聞[1] |
連載期間 | 1957年10月27日号〜1958年5月4日号[1] |
連載回数 | 28回[1] |
文庫/全集 | 巻 | 文庫本名/副題 |
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角川文庫 | - | 海峡 |
井上靖小説全集 | 8 | 海峡・魔の季節 |
井上靖全集 | 12 | 長篇5 |
おなまえ | 記事No. 日付 |
書き込みから |
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ヘディンさん | [1064] 2003/07/18 |
この作品の変わっているところは,主人公として最後まで登場する人物がいないこと。ある婦人雑誌の出版社に勤務する杉原と杉原が惹かれる宏子,その上司の松村,そして松村の親友で本業の医者を放擲して野鳥の声を聴きに全国を飛び回る庄司,松村が密かに惹かれる庄司の妻 由香理,この5名が場面場面でそれぞれ中心的な役割を演じます。 最後は,宏子にふられた杉原と妻に愛想をつかされた庄司がシベリアへ渡っていく鳥の声を録音するため,3月の青森県大間崎へ向います。詳しく述べると読む楽しみがなくなってしまいますのでやめますが,下北半島の厳冬の海沿いを電車・バスを乗り継いで突端まで辿り着く旅の心細さとまわりに広がる風景の美しさ,そして旅というものの本来持っている(と私が考えている)厳しさ。自分が忘れかけていた旅の醍醐味・厳しさを思い出し,私も冬の大間崎にバスを乗り継いで出かけ,一人考えなければならないことが沢山あるように感じました。yakkoさん風に言えばガツンとやられました。今が夏であることが残念です。 6年程前の年末年始,フランスのノルマンディー地方にある,海に突き出た岬(?)にそびえ立つ「モンサンミッシェル」という現在世界遺産にもなっている大聖堂を見たいがために,急に思い立って一人で出かけたことがあるのですが,その時に列車を乗り継ぎ,バスを乗り継ぎ疲れ切ってようやく聖堂の麓に到着し,暖かくしてくれていたホテルの部屋に入った時の感激と,次の日の早朝 誰もいない聖堂の麓のバス停で,寒さに震えながら凍てついてどこまでも歩いて行けそうな錆びた色の氷の海面を飽かず眺めていたことを思い出しました。 |
[1] 井上靖ノート