通常では春にしか咲かないサクラが秋に咲くことがあります。季節はずれに咲くことを「狂い咲き」または「返り咲き」といいます。その原因とはなんでしょうか。一つにアメリカシロヒトリの食害があります。
この写真はアメリカシロヒトリの幼虫がサクラの葉を食い荒らしているところです。今年も長野県内で大発生して問題になっています。このサクラも葉脈を残してほとんどの葉が食い尽くされ丸坊主となってしまいました。アメリカシロヒトリは通常、年2回(6月上旬〜7月中旬と8月上旬〜9月中旬)発生します。幼虫は雑食性で多くの植物を食べます。サクラの他、ウメ、アンズ、カキなどの果樹やプラタナス、ヤナギ、ハナミズキなどの街路樹、それから畑作物ではクワ、ダイズ、トウモロコシそして草花、雑草など何でも食べます。河川敷でよく見られるクルミも丸坊主になっているのをよく見かけます。クルミを食い尽くすとそれに絡まっていたクズの葉も食いだすといったようにすごい勢いで食いまくります。
狂い咲きと食害はどんな関係があるのでしょうか。サクラの花芽は夏の間にできます。そして、冬の低温に備えるために葉から休眠ホルモンを出し、花芽を硬くして翌年の春まで咲かないようにしているのです。しかし、虫による食害や台風などでほとんどの葉を失ってしまうと、休眠ホルモンの供給がストップしてしまいます。すると、休眠できずに秋、気温が丁度良くなった頃に花が開いてしまうのです。休眠ホルモンはアブシジン酸といわれていますが、確定しているのかは知りません。秋に花開いた所には翌年の春に花はつきませんが、全部の花芽が狂い咲きするわけではないので、狂い咲きしたサクラでも翌春に花を楽しめるそうです。
その後、丸坊主になった上記の桜の木はどうなったでしょうか。10/3に見に行ってきました。
すると、予想通り一部狂い咲きを起こしていました。背景に見える緑の葉はアレチウリで、桜の葉は全くと言っていいほどありません。そのため、もっとたくさんの花が咲くのかと思っていましたが、咲いていたのは一本の木に十数カ所だけでした。このくらいなら来春の開花にはほとんど影響は無いと思われます。