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雨が降っていないのに雨が降る。樹雨(きさめ)

 草原を歩いていた時は雨が降っていなかったのに、木の下に入った時だけ雨が降っているということがあります。あるいは、霧雨が降っているからと木陰に避難すると、かえって木の下のほうが激しく降っていたなんていうこともあります。

 これは樹雨という現象です。流れてくる霧が樹木の葉にトラップされて水滴となり落ちてくるのです。山地ではたびたび霧が発生しますし雲に包まれることも多いので、山歩きをしていると樹雨に出会うことがあります。

 雨は粒が大きいので重力で自然に落下してきます。一方、霧は小さいため、風に流され落下しません。でも、樹林帯を流れる間に、木の葉にトラップされその水滴が十分大きくなると雨粒と同じように落ちてきます。原理的にはどのような林でもこの現象は起こるはずですが、私が経験したのは専ら針葉樹の下でした。トラップ効率が良いのか、葉が細いため水滴が落下しやすいのか?

 この現象の意義は、雨が降らなくても林床に水を供給できるという点です。樹林帯の植生にも影響があると思われます。