ゴマノハグサ科モウズイカ属のビロードモウズイカは、地中海沿岸原産の帰化植物で二年草です。他の植物が進出する前の荒れ地に生えることが多く、河原では水没から免れる土手の斜面や、護岸工事されたブロックの間などに見られます。千曲川周辺では6月末頃から黄色い花が咲き始め、総状花序の下から順番に開花しながら、花序自体を長く伸張させていきます。花序は長いもので1mを超えることもあります。その名の通り花糸(雄しべ)に毛が多いだけでなく、植物全体が灰白色の細かいビロードのような毛で覆われています。
一般には、写真左のように一株に1本から数本の花序を伸ばしていくのですが、写真右のようにたくさんの花序がついていることがあります。これは何が違うのでしょうか。。。写真右の株は実は最初に伸びた茎が人為的に切り取られていました。成長の中心となる芽(頂芽)を失うと、それまで成長が抑えられていた脇の芽(側芽)が伸びてくるという現象です。これを頂芽優勢といいます。この現象があるため、たとえ事故や食害などで頂芽を失っても側芽が成長し花をつけられるので子孫繁栄に問題になることはありません。
頂芽優勢のメカニズムもわかっています。頂芽から分泌される植物ホルモンのオーキシンが茎を通って下方に流れてくるので、側芽は成長できなくなります。しかし、頂芽が取り除かれるとオーキシンの抑制がなくなるので側芽の成長が始まります。
植物によっては側芽が1〜数個で、主導権をとる芽が決定するとまたその他の側芽の成長が抑制されます。しかし、ビロードモウズイカは側芽が多数用意されていて(右の写真では見えるだけで13本の花序がある)、頂芽がなくなると一気に成長するのでたくさんの花がつきます。
雑草を刈り取るという観点からすると、このビロードモウズイカは、一部でも残しておくと頂芽優勢でかえって花の数を増やしてしまうことになりかねないので注意が必要です。