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ニホンミツバチの防衛策

 この写真に写っている箱はニホンミツバチの巣箱です。その入口の前にキイロスズメバチがホバリングしていました。このスズメバチは一体何をしているのでしょう。

しばらく観察しているとこのハチがやりたいことがわかりました。巣箱に戻ってくるミツバチを空中で捕らえようというのです。ときたま木の枝に留まって休みながら狩りを続けているのですが、私が見ている十数分の間には狩りは成功していませんでした。でも執拗に続けているところを見るとたまには成功することもあるのだと思います。

 一方、ニホンミツバチはキイロスズメバチの襲撃に対してどんな対抗策を講じるのでしょうか。この写真ではピントが合っていないのでわかりにくいのですが、巣箱の入口にミツバチが外側を向いて多数群がっています。そして、スズメバチが巣箱に近づくと「ぷるぷる」と2回腹をふるわせるのです。それも集まっているミツバチ全てがシンクロナイズして周期的にふるえるので大きなひとかたまりの生物がうごめいているように見えます。この動きによって外敵を攪乱し威嚇していると考えられています。ためしに三脚の石突を巣箱に近づけてもこの行動が見られました。敵が近ければ近いほどふるえる周期を短くしています。この周期の変化にも一糸乱れずシンクロナイズを続けている様は見事と言うほかありません。どのように動きのタイミングを合わせているのでしょうか。不思議です。

 2006年5月NHK放送のダーウィンが来た!生き物新伝説「第5回 ハチミツパワーで生き残れ」でスズメバチに対抗する手段が解説されていました。ミツバチは50℃近くまで耐えられるのに対してスズメバチは45℃以上でダメージを受けるので、その温度差を利用してスズメバチを退治するのだといいます。具体的には一匹のスズメバチに対し多数のミツバチが殺到・密集して蜂球を作り、ミツバチ自身が発する熱でスズメバチを動けなくしてしまいます。敵が近づいた時に一斉に行われる羽ばたきと震えの目的は、攪乱、威嚇の他にハチミツをエネルギー源に筋肉を動かし、予め体温を上げておくことにもあったのでした。

ハチをエサにするスズメバチがいないヨーロッパからきたセイヨウミツバチには、このような防衛行動が観察されないそうで、オオスズメバチに襲撃されると全滅することが多いそうです。