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マツムシソウとタカネマツムシソウ

タカネマツムシソウはマツムシソウの高山型とされ生息地域の境界あたりでは混生することもあるといいます。両者のどの点が違うのでしょうか。図鑑には背丈は低いが頭花が大きいのがタカネマツムシソウと書いてあります。実際に見てみることにしました。

美ヶ原のマツムシソウ

白馬村・黒菱林道のマツムシソウ

マツムシソウ:草丈は60〜90cmが標準ですが、生育環境によって20cm以下のマツムシソウでも花をつけていました。頭花は上向きに咲き、その大きさは4〜5cmで多数の小花からなります。最初に咲くのは最外周の小花8個で、5裂した花冠のうち外側の3つが大きく伸び、頭花の「花びら」の役目をします。その後、中心部の小花が咲いていきます。中心部の小花は筒状で、花冠が小さく等しく5裂します。雄しべ4本は、それぞれの小花から突き出します。花の色は淡青紫色です。

八方尾根のタカネマツムシソウ

八方尾根のタカネマツムシソウ

タカネマツムシソウ:草丈は15〜40cmと低く、頭花は5cmくらいとほぼ一定しています。花の特徴は基本的にマツムシソウと同じですが、「花びら」の幅が広く、その内側の小花も花冠の一部を比較的大きく伸ばして装飾に役立てています。このため、マツムシソウに比べて「花びら」がつまっているように見えて隙間がほとんどありません。花の色は濃紫色です。

次の点が区別するポイントとなります。

花の色:マツムシソウが淡青紫であるのに対し、タカネマツムシソウは鮮やかな濃紫色(ここの写真ではデジカメの性質で同じ様な色に写ってしまいました)で美しいです。

花の大きさ:マツムシソウが4cm〜5cmであるのに対し、タカネマツムシソウはほぼ5cmと一定です。花の大きさだけでは区別はできません。

花の形:タカネマツムシソウの「花びら」はマツムシソウに比べて幅が広く、また内側の小花も装飾に参加しているので花びら間に隙間がなく豪華に見えます。マツムシソウでも、内側の小花が装飾に参加していることもありますが、花びらに隙間が目立っています。

草丈:マツムシソウでは、中には20cm以下で花をつけている株もありますが、60〜90cmが標準の大きさです。タカネマツムシソウは、草丈が15〜40cmと低く一定しています。

以上のように、総合的に判断することになります。花の色については、双方ではっきり分かれてあいまいな点はないのですが、写真では、紫色の忠実性がないので注意が必要です。

次に、なぜ「高山型」であると花が美しく豪華になるのでしょうか。そのカギはポリネーター(花粉を運んでくれる昆虫等)に恵まれているかどうかという点に関係してきます。高山型といってもその標高が問題なのではなく、より標高の高い所でも植生が豊でポリネーターに恵まれていればマツムシソウが生育しています。ポリネーターが少ないと、植物の側も花粉を運んでもらうために目立つ必要に迫られます。美しく豪華な花はその進化の結果だと考えられています。