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  • ザゼンソウ(サトイモ科ザゼンソウ属)

ザゼンソウ(写真1)は、気温が氷点下になっても花序の温度が20℃前後の一定温度を保てるほどの高い発熱能力を持っていて、早春、周囲の雪を解かし開花することもできます(写真2)。生殖器官の正常な発生を保証すると同時に虫たちに暖かい環境を提供して呼び寄せ花粉を運んでもらうためと考えられています。最近、そのしくみについて岩手大学で遺伝子の同定などがすすみ、詳細に研究されてきています。この植物の花序では、低温状況下で脱共役タンパク質(uncoupling protein/UCP)がはたらき、ミトコンドリアの電子伝達系から直接熱を産生していることが明らかにされました。電子伝達系ではATPが産生されるのが一般ですが、脱共役タンパク質が関与するとATPの代わりに直接熱が産生されます。これは、哺乳動物の熱産生器官として知られている褐色脂肪組織の機構と類似しており、大変興味深いものでした。発熱遺伝子とその調節遺伝子についての研究は、寒冷地での高い生産性をもつ農作物の開発にもつながるため、世界中から注目されています。

写真2