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バーベナとカランコエを例に花の微細構造を顕微鏡で観察しました。
バーベナ
バーベナは中南米原産です。雰囲気はサクラソウに似ており、別名はビジョザクラ・ヒメビジョザクラ(宿根草タイプ)です。花の色も豊富で園芸店では多数出回っているのを見かけます
バーベナのがく
花筒は長く、がくは筒状です。がくや茎には細かい毛が密生しているのがわかります。
毛の顕微鏡写真
多数の腺毛が見られました。腺毛の先端には色素があって赤花では淡赤紫色、青い花では濃青紫色をしていました。花の色と腺毛先端の色にはなにか関係がありそうです。
腺毛の横顔
腺毛の先端には色素を持った平たい皿が付いていました。まるで釘のようです。先端に皿を持たない毛も多数ありました。
腺毛なので粘液を分泌します。
多くの植物で腺毛は見られますが、植物によって、あるいは生じる位置によってその役割が異なります。例えばモウセンゴケの葉にある腺毛には虫を捕らえ消化するはたらきがあります。バーベナの場合、がくにある腺毛の役割は、粘液分泌による防虫と考えられます。アブラムシのように小さな害虫にとって、腺毛から粘液が出ていると動きが制限されて定着・増殖しにくくなると見られます。
花冠の表側・表皮の顕微鏡写真
色素を持った細かい細胞が整然と敷き詰められています。
花冠断面の顕微鏡写真
表側の表皮細胞に色素が貯えられ、表皮細胞の形は乳頭状〜円錐状となっています。特に表側表皮細胞の突起が顕著でした。この写真には写っていませんが、裏面には腺毛などの毛がまばらに生えていました。
花弁の表側・表皮の顕微鏡写真
バーベナと同様、表側の表皮細胞は液胞に色素を持っています。
花弁の断面
表皮細胞の形がバーベナと同様乳頭状となっていました。
ここではバーベナとカランコエの花で観察しました。それらだけではなく、多くの虫媒花の花冠では表皮細胞が乳頭状〜円錐状〜レンズ状になっています。特に表側の表皮細胞で形状の変化が顕著です。これは葉の表皮細胞にはない特徴なのですが、一体どうしてそのような細胞の形になるのでしょうか。 葉は葉緑体に太陽光を導いて光合成効率を上げられれば良いのですが、花はポリネーターに効率良く見てもらわなければなりません。エネルギーの吸収ではなく発色が大切なのです。花冠表皮細胞が平面であったとすると、表面で太陽光の反射が起きやすくなります。また、液胞中の色素は透過光が得られにくいので発色が悪くなります。一方、表皮細胞を乳頭状などに立体化しておけば、表面での反射は抑えられるし、液胞を透過する光によって発色が良くなります。広角度で効率的にポリネーターにアピールできるというわけです。ポリネーターの視覚があったからこそ、このような表面構造が進化したのではないかと思います。 |