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ウバユリは図鑑によってユリ属となっています。はたしてそれでよいのか、実際にその特徴を見て検証してみます。
ウバユリは湿った林内に生える多年草で、一度花を咲かせると鱗茎ごと枯れてしまう一回繁殖型植物です。花期に葉が枯れて失っていることが多いので、歯(葉)なしの姥(うば)にたとえて名前が付けられたといいます(異説もあります)。しかし実際には、花が咲いている時でも写真のようにきれいな葉をつけている株も珍しくはありません。花期に葉が無いというのは、植物のプログラムとしてではなく、虫害など外的要因によるものかもしれません。茎の上部に12〜17cmの緑白色の花が横向きに咲きます。
花に注目してみると、花の下に苞が付いているのに気づきます。花の下の茎に注目すると苞の由来は小さな鱗片状の葉であることがうかがえます。茎から短い花柄を介して大きな花が付いています。
6本の雄しべは長さが不同で、葯は淡褐色をしています。ユリ属の葯がT字型に付いているのに対し、ウバユリは写真のように葯の末端に花糸が接続します。アリが歩いている所が花柱で先端の丸い部分が柱頭です。
ウバユリの葉は、卵状楕円形で幅広く基部が心形です。また、脈は網状脈となっていて、ユリ属が細長い葉に並行脈であるのに対し異質です。
以上のように、ウバユリの花、葯、葉などの特徴は、ユリ属にそぐわないことがわかりました。そのため、現在では独立したウバユリ属とする考え方が主流になっているようです。
オオウバユリの花穂
果実は緑色でまだ未熟な状態です。
ウバユリの成熟した果実(さく果)
成熟し乾燥すると三裂します。各裂片の内側に縦方向のしきりがあり、計6部屋に分かれています。それぞれにコインを積み重ねたように整然と種子が収まっており、一つの果実には400〜500個の種子が入っています。1個体では数千個の種子を産すると見られ、極めて多産の植物です。
裂片の間には、風通しを良くする一方で種子がこぼれ落ちないように、ブラインドのような構造物があります。
茶色の種子は半円形で扁平です。種子の周りには膜質で半透明の翼がついていて風に運ばれる構造となっています。翼は中心角が60度の扇形で、6つの部屋にきれいに収まるような形です。
スリットから吹き込んだ風は翼の付いた種子に浮力を生じさせ、上方から種子を分散させます。強い風が吹いたときにだけ種子が飛び出てくるしくみなので、種子の大きさの割に翼の面積が小さくても、ある程度遠くまで分散されることが期待できます。試しに強く息を吹きかけてみましょう。どのように飛び出るのか観察できます。
このように、種子についている翼を利用し風の力で分散する種子を風散布型種子とよびます。