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  • ソバ(タデ科ソバ属)

ソバは中央アジア原産の1年草。まずは花の構造から。花弁は5枚で雄しべが8本あります。外側に5本、雌しべに近い内側に3本が配置されています。雌しべは基部で1つですが先端が分かれ3つの柱頭があります。

ソバの花柱と花糸の長さに注目すると2種類あることがわかります。写真1のように柱頭の位置が葯より上にある花(長花柱花)と、写真2のように葯の位置より下にある花(短花柱花)です。両タイプの比率は1対1であり、それは遺伝的に決まっているので、一つの株では全ての花がどちらかのタイプに統一されています。ソバは自家不和合性の上、長花柱花同士、短花柱花同士の受粉でも結実できません。そのため、送粉昆虫の助けが必要になり結実率も1〜2割程度と低いということです。

この構造が受粉にどのように役立っているのでしょうか。まず長花柱花の場合を考えてみます。蜜を集めにハチが訪れた時、葯の位置が低い(花弁に近い)ので、花粉はハチの口の先の方に付きます。次にこのハチが同じタイプの長花柱花の蜜を吸うときには花粉の付いた位置に柱頭が無いので受粉できません。一方、短花柱花を訪れたときには口の先の方に付いた花粉と柱頭の位置が合うので受粉できます。逆に、短花柱花を訪れたハチには口の元の方に花粉が付くので、次に長花柱花を訪れたときにのみ受粉できるということになります。すなわち、たった一匹のハチでも長花柱花の花粉を短花柱花の柱頭に、短花柱花の花粉を長花柱花の柱頭に自然に区別して効率的に受粉させられるということです。結実率が1〜2割といっても、全く策を講じていない訳ではなかったのです。

写真1写真2