home > 草花メモ&エピソード > クリンソウ
サクラソウ属も異型花柱性を持つ植物として知られています。サクラソウ属もソバの花と同じように異型花柱性によって自家受粉を巧みに避けています。その中でもクリンソウは花が大きく観察しやすいのでここで採り上げてみます。クリンソウは、紅紫色の花を2〜5段輪状につけ、渓流沿いなど湿り気のある所を好みます。 左の写真はクリンソウの長花柱花です。花の中央に柱頭が目立っていて虫ピンのように見えることからピン型とよばれることがあります。右の写真は短花柱花です。葯が目立って織り端のように見えることからスラム(thrum)型とよばれることがあります。基本的にサクラソウ属の花のタイプはこの二つのタイプに分けらる二型花柱性に分類されています。 しかし、ここで観察したクリンソウには長花柱花にも短花柱花にも属さない第三の型がありました。柱頭と葯の高さが同じタイプのものです。よく見ると、花柱と花糸の長さが両方とも短かく、花の奥の方で柱頭に葯が密着しているのがわかります。まるで虫の助けは要らないと言っているような感じです。サクラソウにもこの「等花柱花」が知られており、このタイプでは自家受粉が可能になるということです。元々、自家受粉を避けるために異型花柱性を進化させたと考えられますが、環境が比較的安定していて送粉者となる虫が少ない環境では、自家受粉ができる等花柱花が有利になるのかもしれません。 |