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雌性先熟を語るためには花の写真を載せたいところでした。確か7〜8年前に撮ったと思ったのですが、写真が見当たりません。来春に撮りなおしたいと思います。ということで、とりあえずコブシのリンク(植物雑学事典より)で。解説は写真が撮れてからということにします。
モクレン科は原始的な植物と言われています。その理由の一つとして雄しべと雌しべが不特定多数あり花床にらせん状に配列していることが挙げられます。不特定多数でらせん状というのは、葉や枝の付き方の特徴であり、葉から進化して花ができた当初の特徴を維持していると言えます。そして、雌しべが1枚の心皮から構成(離生心皮)されている点も原始的な特徴です。進化していくと複数の心皮が合体して1個の雌しべを構成(合成心皮)して受粉効率を高めるようになります。雄しべ・雌しべの形態も葉を二つ折りにしたような単純なものであり被子植物の祖先の形質を多く残しています。それに花には芳香がありますが蜜を出しません。進化につれて効率的に他家受粉できるハナバチを訪花昆虫(ポリネーター)に選ぶ植物が増えていきますが、コブシはハナバチ出現以前のポリネーターである甲虫やアブ(双翅目)を利用しています。開花直後の雌性期では餌となる花粉が無いのでポリネーターに人気がありません。花粉を目当てに来た虫が誤って雌しべに留まるのをあてにしているのです。
10月のコブシ
果実が赤くなり多数ぶら下がっていました。
果実
袋果が集まった集合果です。10月に入ると赤く熟してきます。ゴツゴツした感じが拳(こぶし)に似ていることから命名されたという説があります。受粉した雌しべの所だけ種子ができ、受粉できなかった所は子房が膨らんでこないのでこのように形がいびつになります。花の説明のところでも記したように、雌性期の花には花粉が無いので訪れる昆虫が少なく、一部しか受粉できないのです。
割れ目の入った果実
さらに熟すと袋果に割れ目ができ赤い種子が顔をのぞかせます。
赤い種子
赤は鳥に対してアピールする色です。このように、袋果の割れ目から赤い種子を覗かせて鳥についばまれるのを待っているのです。
珠柄
さらに袋果の割れ目が広がって種子が顕になり、白い珠柄でぶら下がっていることもあります。この写真は、人為的に種子をつまみ出して撮りました。
珠柄
このように、珠柄は白い綿のような繊維でできています。
コブシの種子(核・内層)
赤い種皮(外層)と果肉(中層)を取り除くと黒く腎形をした種子(核・内層)が1個現れます。中層の果肉には柑橘系の芳香があります。シークワーサーの香りにも似ていると思いました。種子の中央部が凹んでいて繊維状の珠柄の一部が付いていました(写真左手前)。硬い核は鳥に食べられても消化されず遠くまで運ばれ散布されます。