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写真1
山地の木陰に生える高さ20〜40cmの多年草で、茎の先端の花序に黄色の唇形花を数段付けます(写真1)。赤い花柱は上唇の外へ細く長く延びています。花粉を作る二つの葯は普段上唇の下に隠れています。じつは、キバナアキギリはその葯の他に花粉をつくらないもう2個の不完全な葯も持っています(不稔性)。花の中の構造をよく見るため花冠の一部を取り除いたのが写真2です。その赤い不稔性の葯は、花の出口を塞ぐように配置されていますが、通常の葯ともシーソーのように花糸でつながっています。つまり、マルハナバチが蜜を求めてもぐり込もうとすると、不稔性の葯が奥に押され、それによってシーソーのもう一方である花粉の付いた雄しべが下がるという仕組みです。実際にマルハナバチが訪花した時を観察する(写真3)と思わず笑ってしまいます。蜜を吸おうと何も知らずに一生懸命もぐり込むマルハナバチのお尻に2本の雄しべが下がってきてチョンチョンと花粉をなすりつけるのです。あまりにも良くできている仕組みに感心させられます。そのハチが別の花に行ったときは、下唇に着地する前後にお尻に付いた花粉が柱頭に触れるので受粉ということになります。普段、花粉のある葯を上唇の下に隠しておけば、花粉をなめ取ってしまうようなアブなどからも守れるので、たいへん理想的な仕掛けということができます。この様な巧みな仕掛けに進化させるまでには大変長い時間がかかっただろう事は想像に難くありません。太古の昔から虫と共に生きてきたからこそ合理的な進化となったのでしょう。大きな感動を覚えます。 |
写真2
写真3 |