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写真1

写真2

タマガワホトトギス

写真3

トケイソウ

 

  • ヤマジノホトトギス(ユリ科ホトトギス属)
  • タマガワホトトギス(ユリ科ホトトギス属)

ホトトギス属の花も興味深い形をしています。6本の花糸は花の中心で花柱と密着し上方に伸びたあと噴水のように中心から放射状に垂れ下がります。花柱は3裂した後、それぞれがさらに2裂し、同様に放射状に外を向いています(写真1、2)。単独で見ると奇妙な形でも、送粉者であるマルハナバチが訪花した時を観察するとその理由に納得できます(写真3)。蜜腺は基部の膨らみの中にあります。蜜を求めてやって来たハチが花被の上を歩き回ると、葯がハチに触れて花粉が背中に付くようにできています。写真のように雄性期では柱頭にハチは触れません。この1〜2日後の雌性期には花柱が下に曲がり柱頭が葯よりも下がるので、花粉を体に付けたハチが訪花するとその背中に触れることになり、受粉できるようになるのです。

 

  • トケイソウ(トケイソウ科トケイソウ属)

トケイソウは中南米原産のつる植物です。この花の構造は外側から3枚の包葉、10枚の花被、色鮮やかな糸状の副花冠、5本の雄しべ、濃紫色の3裂した花柱からなっています。子房は花被より上位にあり、雄しべより上に付いているという独特で複雑な構造をしています。そしてほぼ一日で花を閉じてしまいます。これらの特徴を見ても、ホトトギス属とは近縁ではありません。しかし、花被、雄しべ、雌しべの位置関係がホトトギス属の花と類似していることに驚かされます。遺伝的に遠い種でも形態的に類似する事を「収斂

(しゅうれん)」といいます。花の大きさはヤマジノホトトギスが2cm前後なのに対してトケイソウは10cm近くにもなるので当然送粉者は異なります。しかし、日本にはトケイソウに適した送粉者がいないようで、効率よく結実させるためには人工授粉をしなければなりません。原産国ではどんな送粉者が関係しているのかは知りませんが、ホトトギス属と同様に、訪花した虫(または鳥?)が副花冠上を動き回ることで受粉をすることは想像できます。送粉者の行動が似ていると、全く別の科でも類似の花の形に進化する収斂の見本と言えると思います。