home > 草花メモ&エピソード > ハリエンジュ(ニセアカシア)

北アメリカ原産。明治初期に渡来し、砂防用に植えられましたが、各地で川岸や土手などに群落を作って野生化しています。

花は5月から6月にかけて咲きます。写真のように長さ10-15cmの総状花序を垂らし、香りの良い白色の花を多数つけます。花は食用となり、天ぷらとすることが多いようです。蜂蜜を採るための蜜源にも適しており、養蜂家がこの木の近くにミツバチの巣箱をよく置いています。

夏、ハリエンジュの林を観察すると異変に気づくことがあります。ハリエンジュからすこし離れたところは草が青々としているのに、林の下、特に根本だけ雑草が茶色く枯れてしまっているのです。これは、アレロパシーによるもので、ハリエンジュから植物の生長を阻害する化学物質が発せられているためです。根元の草が枯れていることから、雑草が生えてある程度たってから化学物質の影響を受けたことが想像できます。これについては、農業環境技術研究所が農業環境研究成果情報第21集で次のように報告しています。


「その作用物質はカテコール構造を持つフラボノイド類であり、ロビネチン(robinetin),ミリセチン(myricetin),ケルセチン(quercetin),および(-)-カテキン((-)-catechin)を同定した。特に葉の中の含量が多いために、(-)-カテキンとロビネチンの寄与率が高い。」ということでした。

これらの物質は葉の中にあるので、ハリエンジュの葉が展開する前は林床の雑草も生きられますが、葉が展開し、雨などで、阻害物質が地上に達すると雑草が枯れてしまうということなのかもしれません。実際に草が枯れている現場を見るとさらにアレロパシーを印象深く感じます。もちろん、この写真1枚でアレロパシーを証明できるものではありません。

これを除草剤に応用することが考えられますが、「米国では,(-)-カテキンの活性が天然物として強力なので,天然の除草剤として開発しようと提案されている。ただし,植物による感受性の違いが大きい。 」ということでした。