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フキ(キク科フキ属) 雌雄異株

フキは雄株と雌株を分けることで自家受粉を巧みに避けています。その他にも受粉に際して幾つかの工夫が見られます。

 フキの花は、若い花茎であるふきのとうに咲きます。早春、ふきのとうは緑色のに包まれて地面に顔を出します。山菜として摘まれるのは、主にこの「つぼみ」の段階です。

 成長し苞が開くと、総苞片に包まれた頭花散房状に幾つも集まった花序が現れます。個々の頭花はさらに多数の小花が集まってできています。

 ふきのとうは、地下茎によって一株から多数地上に出てきます。そのため群生するふきのとうは同一性となります。

 次に雄株と雌株の特徴をみていきます。

 雄株

 咲き始めた頭花を拡大して小花の構造を観察しました。この写真に示すように、5裂した花冠、合着した葯、こん棒状の雌しべが見て取れます。柱頭部分には黄色い花粉がべっとりとついています。これは合着した葯の中心から雌しべが伸び出たとき葯から花粉を受け取ったためです。突出したこん棒状の雌しべに花粉を付けておくことで、ポリネーターに花粉を託しやすくしているのです。

 雄株の小花には雌しべが備わっており、両性花とも言えますが、結実はしません。

 多くのキク科植物は花の周りを舌状花で飾ります。舌状花を持つキク科植物を見ていると離弁花の仲間かと考えがちですが、実際は典型的な双子葉合弁花類に属します。フキには筒状花ばかりで舌状花がありません。この写真の小花を見れば合弁花であることが納得です。

 別株の花を見ると、柱頭に付いた花粉が白色でした。花粉の色にバリエーションがあるのか、あるいはまた別の理由で色が異なるのかわかりませんでした。今後さらに調べてみます。

 雌株

 雄株の花は黄色っぽく見えるのに対し、雌株の花は白く見えますので、遠くから見ても区別はできます。

 この写真のように、雌株の頭花には2種類の小花を含むのが分かります。雄株のと似た形態の「雄型小花」と、貧弱な花冠と糸状の雌しべを持った雌の小花から成り立っています。雄型小花は、一つの頭花に数個と少数であるのに対し、雌の小花は莫大な数あります。

 なぜ、雌株に雄型小花が含まれるのでしょうか。雌の小花は大変細く、多数密集させるのには有利ですが、蜜を分泌することはできません。もちろん花粉もありません。だから雌株の花が全て雌の小花で占められてしまうと、ポリネーターが寄りつかなくなってしまいます。そこで、花粉は作れないが蜜を多量に分泌できる雄型小花を混在させることで、ポリネーターを巧みに引き寄せているのです。

 雌株のふきのとうは、この後徐々に花序を伸ばし高さが45cmくらいになります。初夏にタンポポの綿毛のような痩果が実ります。