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ヤブツルアズキの花は、マメ科の特徴である旗弁・翼弁・竜骨弁から構成されていますが、その形態が他のマメ科植物と異なっています。すなわち、竜骨弁が反時計方向に大きくねじれ上がり、それに翼弁がからみついているのです。マメ科に限らずほとんどの花は、放射相称花か左右相称花に分類され、対称軸があります。しかし、アズキの花には対称軸が無く、非相称花に分類されます。
一般に放射相称花に比べ左右相称花は、より進化した形と言われています。ポリネーター(花粉媒介昆虫)との共進化により複雑で立体的な左右相称花が生み出されたと考えられているのです。その見地から言うとこのアズキの花は、マメ科の中で最も進化した形と言えるかもしれません。
次に具体的にその構造と受粉の仕方を見ていくことにします。
竜骨弁の一部には突起があり、左の写真のように、左側の翼弁が巻き付いています。また、雄しべと雌しべが収められている竜骨弁の管には右側の翼弁が巻き付き装飾されています。そして、その管の先端は蛇口のようにくるりと下を向いています。
ミツバチなどのポリネーターがこの花を訪れたときは何が起こるのでしょうか。翼弁(左)が巻き付いた竜骨弁の突起にミツバチがとまり、蜜を求めて頭を花の奥に突っ込むと竜骨弁が下に押されます。すると。。。
左の写真のように、蛇口のような竜骨弁の先端から、雄しべとブラシのついた雌しべが飛び出してきます。この「ブラシ」の動きにより雄しべの花粉がふるい落とされ、ハチの背中に付くことになります。また、ハチの背に他株の花粉が付いていたときには、飛び出した雌しべで他家受粉できる仕組みです。こうすることで、雨や、花粉をなめ取ってしまうハナアブから花粉を守り、受粉効率を上げているのです。
マメ科の花は、普段は竜骨弁の中に収められている雄しべと雌しべがポリネーターが来たときだけ現れ出るしくみを持っていますが、その中でもアズキの花は、より巧みな方法で受粉させていることがわかりました。