関西学生アメリカンフットボール Div.1 第7節



11月23日(土) 西宮スタジアム 12:00
TEAM1Q2Q3Q4Q合計勝敗
神戸大学0307103-4-0
甲南大学000222-5-0
(現地観戦)
 
神戸大学
甲南大学
(不明) 1Q (不明)
1Q FG×
FG 2Q
FG×
END 2Q
3Q
G×
3Q
4Q
(S)
G×
TD
G×
TD 4Q
(作者Aのメモより)


 試合開始に間に合わなかったので最初の攻防を見ていない。第1Q中盤、甲南大学がQB#5大西とRB#31増田によるドライブを行っているところからの観戦である。そしてこのドライブはフィールドゴールレンジまで達するがキックは右に逸れて失敗。
 一方の神戸大学は自陣20ヤードからUB#39宮川の中央突破ダイブで50ヤードゲイン、さらにQB#10江端から#7竹山へのプレーアクションパス15ヤードで敵陣へ接近する。最後はパス2回失敗などでドライブが止まるが、FGを成功させて神戸大学が先制した。

 その後も神戸大学オフェンスのドライブが続く。次のシリーズは自陣37ヤード付近から再びUB#39宮川、#30上原の中央突破ダイブにQB#10江端プレーアクションパで敵陣27ヤードまで前進する。このシリーズも最後はエクスチェンジミスやパス失敗などで最後はFGトライとなる。K#17吉村のキックしたボールはゴールポストの水平バーに当たった。そのままバーを越えれば成功なのだが、しかし前に跳ね返されてしまった。垂直バーにあたるキックは見たことはあるが水平バーに当たったのを見たのは初めてかもしれない。

 このように試合開始直後のドタバタからしっかりと試合の流れを引き戻した神戸大学が主導権を握ったまま時間が経過していく。

 後半は神戸大学のキックで試合再開し、甲南大学リターン中のファンブルロストで敵陣から神戸大学オフェンスというシーンだったが、神戸大学の反則でキックとやり直しとなてしまい突き放すチャンスだったが惜しかった。

 一方の甲南大学は第2Q中盤からQB#10池垣を起用してパス主体のオフェンスに切り替えてきた。WR#88吉田へのクイックパスやWR#14松岡のキャッチ後ランで40ヤードなどで敵陣に侵攻する。しかし、ここから神戸大学ディフェンスの粘りに合い#57齋藤にパスカットなどで第4Dギャンブルが届かない。
 次のシリーズもWR#14松岡へのクイックパスをきっかけに敵陣30ヤードへ侵攻もフォルススタート、DL#71ランブロック、プレアクパスをDB#5天野カット、LB#55岩田のQBサックと神戸大学ディフェンスが3点差を死守していた。

 しかし、神戸大学のオフェンスが相手に得点を与えてしまった。神戸大学自陣10ヤードからのオフェンスシリーズでゲインできないままの第4Dパントに追い込まれる。そしてスナップボールが高くてエンドゾーンの外へ、まさに自殺点セイフティーとなって甲南大学に2点を献上することになった。

 この時点で、神戸大学3−2甲南大学。アメリカンフットボールには珍しい得点だが、神戸大学1点リードには違いない。

 甲南大学はQB#10池垣によるオフェンスドライブがフィールド中央付近から。QBキープ中央突破10ヤード前進、さらにキープレーをUB#31増田の中央突破に戻して連続キャリーが3回、4回と続く。そして敵陣10ヤード内にまで達した。

 第3DUB#31増田の中央突破プレー。神戸大学ディフェンスはチェーンメジャリングの判定を待ったがFD更新させない。

 そして甲南大学は第4D残り1ヤード。ポジションは敵陣8ヤード。FGでも決まれば逆転の場面だったが、この1ヤードをプレーで取りに来た。QB#10池垣スニークプレーは、再びチェーンメジャリングの末にFD更新ならず。神戸大学の1点リードが変わらないまま攻撃権を譲り渡すことになってしまった。


 自陣7ヤードからの神戸大学オフェンスは、ここからランプレーで時間消費しながら確実にゲインしていった。UBフェイクのQBキープ10ヤード、UB中央突破40ヤード、TB#33大崎の中央突破20ヤードで敵陣20ヤードに、そして最後はRB#22坂東が左オープンをスピードでかわしてエンドゾーンへ飛び込む。さらにキックPATも決めて8点リードへと差を広げた。

 甲南大学は残り時間2分51秒自陣25ヤード付近からの攻撃となったのだが、#80伴へのパスで1回FD更新するもUB増田・QBの中央突破を神戸大学ディフェンスが最後の堅守、第4D8ヤードを残して甲南大学#2油井へのパスを神戸大学LB#6肥田がカットして勝利を決定づけた。
 神戸大学ディフェンスは、甲南大学の第4Dギャンブルプレーを3回ともシャットアウト、まさにディフェンスの勝利と言える試合だった。

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 神戸大学オフェンスは今シーズンはどちらかと言えばいろいろと試行錯誤のシーズンだったかもしれない。最終的にQBは2年の#10江端に固定した。ショートパスはある程度計算できたが,神戸大学らしいオプションプレーが前節までは登場することがなかったが、この試合では神戸大学らしいUB中央突破とUBフェイクのQBキープが何回か決まった。TBには#22坂東の負傷で#33大崎の起用となったが、いい走りをしていたので来年が楽しみである。

 ディフェンスは、DLLBに重量級かつ勢いあるメンバーが揃い、この最終戦でも実質ディフェンスが試合をコントロールしていた。DB陣もパスにランにと上がりの早い対応はここ数年に渡るディフェンス魂を脈々と引き継いでいた。

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 甲南大学は、この試合第4QにFGで逆転できるシーンにもかかわらずプレーを選択し、結果として逆転に至らなかった。前々節大阪産業大学戦では第4Qに追い上げられ、そして、前節同志社大学戦では、とうとう最後に逆転されてしまった。力的には甲南大学優位な感じの両試合だったが、はっきり言ってしまうとなんだかしっくりとしない。観客席にいる立場でチームの何が判るかと言われてしまえばそれまでなのだが、フィールドから漂う雰囲気というのも間違っていないようにも思うのだがいかがだろうか。

 QB池垣の負傷に春からQB#88吉田を起用したが、オプションプレーかパスプレーか定まらないまま時間が経過、そして、シーズン中盤には#5大西に変更してランプレーをメインに据えた。リーグ戦による成長分を加味してスタイルが変わっていくことは当然なので、この変遷をどうこう言うつもりはない。その場その場で、それぞれ意図したことがあるのだろう、そのように理解している。


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11月23日(土) 西宮スタジアム 14:50
TEAM1Q2Q3Q4Q合計勝敗
京都大学01070174-3-0
近畿大学7336194-3-0
(現地観戦)
 
京都大学
近畿大学
1Q G×
1Q TD
TD 2Q
FG
2Q FG
3Q
RFL
FG
TD 3Q
4Q
TD
REND 4Q
(作者Aのメモより)


 コイントスで選択権を得た近畿大学が前半レシーブを選択、#7樋口の25ヤードリターンによって自陣30ヤード付近から最初の攻撃が始まる。
 第1プレーはQB#3安倍から左サイドライン際縦のロングパス、WR#81中川とは合わなかったがこの日も強肩は健在である。そしてRB#20土手下の右オープンランがディフェンスとのスピード競争で上回って40ヤードのビッグゲインを生む。
 さらに中央ランプレー3回計10ヤードでFD更新、さらにオープンラン3回で計9ヤードと進んだ。そして、第4D残り1ヤードは、敵陣エンドゾーン前6ヤード付近となってFGかギャンブルか悩むシーンだったが、近畿大学はギャンブルを選択する。
 しかしRB#20土手下の中央突破は止まってしまった。そして、おそらくここのプレーでなのだろうベンチに下がってくるときに少し足を引きずっていた。

 続く京都大学オフェンスは自陣5ヤードから始まるのだが、RB#2高見、#31大住の中央突破ランが近畿大学ディフェンスに遮られてノーゲイン、第3Dの中央突破もDL#85岸上によって3ヤード後退させられてしまい、パントに追い込まれてしまった。

 敵陣35ヤードから攻撃開始というフィールドポジションを優位にした近畿大学は、RB#99杉田のランプレーにWR#81中川へのパスでFD更新し、テンポいいオフェンスが続く。TE#34金子へのプレーアクション縦パス17ヤードも決まってエンドゾーン前6ヤード、そして最後はQB#3安倍がエンドゾーンに飛び込んで近畿大学が先制した。

 そして、京都大学も自陣20ヤードからの反撃が始まる。エンドゾーンを背負っていた第1シリーズとは違っていたこともあって、QB#4川並のパスが炸裂、右サイドWR#81小寺へのミドルパス20ヤード、TE#93東へのクイックパス7ヤードでフィールド中央に到達する。さらに、近畿大学にパスインターフェアの反則2回で前進を重ねて、エンドゾーン前20ヤード。最後もWR#9仲田へのTDパスで同点に追いつく。

 序盤の攻防を近畿大学はランパスで、京都大学はパス中心にドライブしてオフェンス優位だったが、この後は両チームともディフェンスがオーバーパワーして、前進できなくなってしまった。

 しかし、ここからの攻防の中身は濃い。

 近畿大学は自陣12ヤードからのシリーズを中央突破とサックでノーゲイン、QBスクランブルも僅かに届かずパントを蹴る。

 一方の京都大学はフィールド中央からランプレー3回。そして第4Dで1ヤードが残ってしまった。そしてパントフォーメーションからブロッカにダイレクトスナップのフェイクプレーでFD更新することができた。だがこのプレーによって近畿大学ディフェンスに火がついたのか、DL#65古巻サック後退7ヤード、QBスクランブルにLB#43西川が狙いを定めてQBタックルとなって、結局本当にパントを蹴ることになる。モメンタムは均衡を保ったまま時間だけが経過していく。

 近畿大学自陣24ヤード、QB#3安倍からのフィールド中央へのミドルパスを京都大学#16中村がインターセプト。

 京都大学は敵陣23ヤードからの攻撃権を得ると#82鋤崎へのパスで7ヤードゲイン。しかし、残り3ヤードのランパスを近畿大学ディフェンスに遮られてFG3点の追加にとどまった。

 近畿大学オフェンスはエースRBを欠いたことで何をしたら良いのかプレー選択に迷っている様子だった。このシリーズも残り時間1分47秒自陣25ヤード、FD更新まで10ヤードを残して第3Dを迎えることになった。この時点で京都大学10−7近畿大学の3点差。
 近畿大学にすればここは絶対にFD更新が必要な場面だった。もしFD更新ならなかったらパントになる。この日のパンターは#3安倍が兼任していたが飛距離には不安が残る。パントから京都大学に絶好なポジションを献上してしまうと最悪でもFGは覚悟しなければならない。前半を3点差で終わるのとそうでないのとでは、後半の展望が変わってくるという微妙なシチュエーションだった。

 近畿大学はタイムアウトを使ってプレーを選択する。

 そして決まったプレーはロングパスだった。飛距離50ヤード、右WR#81中川がDBをかわしながら落下点ギリギリのところでキャッチに成功した。フィールドポジション敵陣24ヤード。そしてP#3安倍がFGトライ。審判の判定を見るまで成功か失敗か分からないキックだたが第2Q終了と同時に同点に追いついた。

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 近畿大学がタイムアウト中に何を相談していたのかはもちろん判らない。ただ、10ヤードをとるのにランでなくパスを選択した。それも、インターセプトされてもパントより距離が飛ぶロングパスという点では絶好のプレー選択だった。その前のシリーズではミドルパスをインターセプトされていて、心情的には投げにくいシーンだったと思うが、しっかりと投げ込んでいる。

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 近畿大学は10−10の同点でハーフタイムを迎えることになった。前回関西学院大学戦ではお祭り騒ぎの状態で控え室へ戻って行ったのだが、この日は静かだった。ここまでの試合展開が当然のこと/予想の範囲内だったのだろうが、この冷静さが無気味だった。

 試合の流れ的には両校ともオフェンスが決めてを欠く状態だった。京都大学はRB大住・池上の中央突破がゲインしないし、近畿大学DLLBのプレッシャーにQB川並の余裕がなくパスも散発に終わる。
 一方の近畿大学もRBを欠くと柱になるプレーがなくなってしまい、こちらも散発ゲインにとどまる。オフェンスは両校とも計算できない状態で後半に突入することになった。

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 最初のチャンスは近畿大学に訪れた。

 自陣からの攻撃にQB#3安倍から復帰したRB#20土手下へのピッチ、そして土手下からの縦ロングパスというトリックプレーだった。
 しかし、このパスを京都大学DB#11がインターセプトする。そして、リターン。しかし、リターン中に近畿大学の厳しいタックルにあってファンブルロスト、ボールの所有者が転々としたあげく最終的にボールを確保したのは近畿大学だった。
 敵陣30ヤード付近で再び攻撃権を得た近畿大学はここから刻んだゲインを積み重ねて敵陣7ヤードまでが到達する。最後は反則後退とディフェンスに遮られてFGに留まったが、近畿大学が3点のリードを奪うことに成功した。

 続く京都大学は自陣20ヤードから。第3D残り10ヤードのパスをWR#81小寺に決めて前進、そして、オプションプレーで近畿大学ディフェンスに対抗した。RB#2高見のオプションオープンランで40ヤードを獲得して、久し振りに敵陣深く15ヤードに達した。
 ここからQBキープと#2高見のオプションラン。第4D残り1ヤードを一度はFGトライのセットをしながら、タイムアウトを使ってギャンブルに変更、そしてFD更新すると第3Q残り19秒TDで逆転する。

 京都大学オフェンスはオプション攻撃を使って近畿大学ディフェンスに対抗してきた。オプションVS近畿大学ディフェンスは過去にも京都大学優位のプレーであり、今年も例外ではなかった。

 京都大学は次のシリーズも自陣45ヤードから再びRB#31大住の左オープンのオプションランで17ヤードとミドルゲインを獲得して、いいテンポになりかけてきた。しかし、次のパスを近畿大学#18西村が狙っていたかのようにインターセプト。京都大学の攻撃が続かない。
 残り7分27秒から始まった京都大学最後のシリーズもRBのオプションプレなどでFD更新する。しかし、ノーマルなランプレーを2回シャットアウトされてロングパスも失敗となって近畿大学デイフェンスが切れなかった。


 残り時間3分59秒。京都大学のリードは4点。近畿大学自陣24ヤード。京都大学のタイムアウトは残り1回。一方の近畿大学タイムアウトは3回全部が残っている。

 ここからの近畿大学QB#3安倍によるオフェンスは、WR#81中川へのパスとQBキープを繰り返す。ボールキャリア限定ながら時々見せる捨てプレー(決まればラッキー)のロングパスを織り混ぜることによって一発TD狙いの脅威を京都大学ディフェンスに見せながらの巧妙なドライブを披露した。
 時計を止めないドライブが続いて敵陣38ヤードに達した時点ですでに残り時間56秒になっていた。
 ここからRBの中央突破25ヤードで敵陣15ヤード、さらに京都大学パスインターフェア−でエンドゾーン前7ヤード、近畿大学背後へのブロック後退10ヤード・RB#20土手下へのパス16ヤードという前進後退の攻防が続く。

 そして敵陣残り1ヤード、残り時間9秒。両チームともタイムアウトを使い切り、近畿大学にとっては事実上最後のプレーとなる。

 残り1ヤードのためのラストプレーはQB#安倍から右サイドへのパス。しかし、レシーバーが空いていなかった。QBスクランブル右OTはディフェンス2人をかわしてエンドゾーンへ飛び込んで行った。

 残った時間は3秒。近畿大学キックオフは敵陣へ深く蹴りこむ。京都大学はリターンしたが、しかし壁は厚かった。

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 京都大学は、QB川並の得意とするパスとシーズン中盤にゲインを繰り返したRBの中央突破で試合に臨んだ。今年のオフェンスの総仕上げという試合だった。そういう意味でシーズンを通して成長してきたパフォーマンスを確認することができたのだが、この試合に限っては最もゲインできたのがオプションプレーだったのは皮肉な巡り合わせとしか言いようがない。

 一方のディフェンスは自軍のパスオフェンスをサポートするにはどのポジションも少し心許ない感じがする。パス主体のオフェンスではパス失敗で時計が止まることが多く、相対的にディフェンス登場の機会が増えてくる。これに対しては攻撃的なディフェンスを仕掛けて、相手攻撃も早く終わらせておきたいというのは私の考えである。その攻撃的なディフェンスを仕掛けるにはおとなしい布陣だった。特に今シーズンは#97近藤をILBに起用してきたが、昨年のDEやOLB位置からの鋭い突っ込みが魅力だったが、ポジション的にも役割が変わってしまったのが個人的には残念だった。2003年はQB川並をメインに据えてどのようなチームで登場してくるか。そして誰がチームの精神的な大黒柱となるのか。

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 近畿大学はこれで4勝3敗でリーグ戦を終わる。この数値は昨年と同じ成績だが、内容が少し違う。黒星は神戸甲南立命の3校であり、これについては無視していいところとしっかりと捉えなければいけないところと両面がある。それについては別の機会にして、昨年から徐々にステップアップしていって今年もしっかりと受け継いだ。来年の更なる飛躍を期待する。

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11月24日(日) 西宮スタジアム 12:00
TEAM1Q2Q3Q4Q合計勝敗
同志社大学71477351-5-1
大阪産業大学141470351-5-1
(現地観戦)
 
同志社大学
大阪産業大学
1Q
2Q
3Q
3Q TD
TD 4Q
4Q IEND
(作者Aのメモより)


 体調不良(歯痛による頭痛と発熱と寝不足)のため第3Q終盤からの観戦になった。試合展望で示したようにオフェンス大乱打戦の試合となったが、決してディフェンスが甘いというのでもなかった。

 第3Q終盤大阪産業大学はフィールド中央からのQB#5藺牟田によるランパスと最後はQBキープで5個目のTDを奪い7点のリードとなる。

 これに対して同志社大学もWR#86野原の好リターンで得たフィールド中央からの攻撃チャンスに、QB#8水野からWR#82久世へのパス#91長谷川のランなどで反撃を開始した。途中の第4Dギャンブル2ヤードもRB#1永富のオープンランで切り抜けてエンドゾーン前4ヤードに到達し、最後はWR#82久世へのクイックパスで同点に追い付いた。残り時間10分05秒。

 続く大阪産業大学は自陣30ヤード付近から。UBフェイクのQBオプションキープでスクリメージを突破、その後にRB#2磯脇へのピッチで20ヤードゲインという大阪産業大学らしいオプションプレーを披露すれば、続くFD10ヤードを同志社大学ディフェンスが#2磯脇へのランパスを止めて第4Dギャンブルにまで追い詰める健闘を見せる。ここはディフェンスオフサイドで大阪産業大学がつながったが、両校攻守の攻防はまだまだ続いた。

 大阪産業大学ホールディングとLB#9西川の鋭い突っ込みで合計15ヤードのマイナスゲイン。これに対してQB#5藺牟田からWR#88中村へのクイックパス5ヤードにWR#89高橋へのクイックパス。コース的にはオーバースロー気味だったがWR#89高橋がジャンピングキャッチして敵陣17ヤードに達した。
 残り時間3分50秒で逃げ切りの得点チャンスを迎えたのだが、しかし同志社大学ディフェンスもパスに狙いを定めたのか#5関根がミドルパスをレシーバーの前に割り込んで値千金のインターセプトをする。

 攻撃権を得た同志社大学は自陣17ヤード、入れ替え戦回避のためには白星が必要な同志社大学は残りタイムアウト2回と残り時間2分45秒。時間的に余裕はあったのだが、小刻みなランとパスでゲインを重ねた結果、フィールド中央に到達したときには残り30秒になっていた。そして右へのミドルパス。これを大阪産業大学DB#34川口にインターセプトされて逆転の芽が消える。

 両チームDBによるパスインターセプトの応酬によって、攻撃権が目まぐるしく変わっていく激戦になっていった。

 大阪産業大学自陣42ヤード、残り時間13秒、残りタイムアウト1回。WR#88中村への横パスは8ヤードでサイドラインの外へ出て時計を止める。次はWR#1杉本へのロングパスだったがボールが空中にある時間ももちろん時計は回る。パス結果はキャッチ失敗だったが、時間は1秒しか残らなかった。

 フィールドポジション50ヤード。大阪産業大学は最後のタイムアウトを使いプレーの準備をした。そして、右にレシーバーを3人並べたパス体制、そしてロングTDパスを試みた。同志社大学DBももちろんこれに対応しレシーバー陣と交錯した。そして、最終的にこのパスをキャッチしたのは同志社大学だったが、パスインターフェアの反則も犯していた。

 残り時間0秒、大阪産業大学は15ヤード進んでラスト1プレー。そして、右2人、左1人のレシーバーを配してQB#5藺牟田からTDパスが飛ぶ。これもWRDB交錯の末に同志社大学ディフェンスがインターセプトした。しかしこのままボールデッドとなってしまい、激戦の結果は両チーム5TDによる同点引き分けとなった。

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 同志社大学オフェンスはQB#8水野からRB#1永富、#91長谷川のランプレー、そして、WR久世野原要へのパスと手数が多い。それを十分に発揮できた試合だったと思う。ディフェンスもDL#77岸本、LB#2山下、#9西川、DB#の活躍が目に付いた試合だった。ディフェンス力が今シーズンリーグ戦中の大きな課題になってしまったが、オフェンスがそれを上回って整備されてきたことと、ディフェンスもここに来ていいパフォーマンスを繰り広げるようになってきた。
 勝利が絶対の入れ替え戦が今シーズン最後の試合となる。相手は京都産業大学だが、攻守整備されてきた力を、今シーズンの総決算として見せてくれることだろう。観客席にいる立場からはこの点も含めて観戦してみたい。

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 大阪産業大学もQB#5藺牟田のパスがここにきて冴え渡ってきた。WR#88中村、#89高橋へ躊躇なく矢のようなパスが飛んでいく。さらに、#2磯脇による切れのいいスピードランも健在である。ディフェンスも#58石丸、#51蔭山を始めLB#17長野、DB#21植木、#34川口、#8森崎など勢いあるメンバーの活躍が目立つようになってきた。
 今年で98年から5年連続の入れ替え戦だが、もしかしたら今年が最も安心してみていられる布陣かもしれない。もっとも対戦相手は古豪関西大学ということもあって必ずしも安泰の試合ではないが、今シーズンベストの大阪産業大学らしい攻守を期待します。


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11月24日(日) 西宮スタジアム 14:50
TEAM1Q2Q3Q4Q合計勝敗
関西学院大学0680145-2-0
立命館大学1714107487-0-0
(現地観戦)
 
関西学院大学
立命館大学
1Q
TD
FG
1Q TD
P× 2Q
TD
TD
TD
END 2Q
3Q FG
TD
3Q TD
G× 4Q
TD
4Q END
(作者Aのメモより)


 関西学院大学は自陣24ヤードからの最初のシリーズを両TEシングルバックからの右WR#80中林への外へのクイックパスで9ヤード、さらにQB#16尾崎スクランブル中央突破8ヤードでFD更新と、ここまではよかった。
 しかし、TBのオープンプレー、中央突破を立命館大学ディフェンスに遮られ、第3Dクイックパスを#13小路にあわやインターセプトのカットという強烈ディフェンスの片鱗に触れる。そして、パント。

 このパント自体はベストのパントだった。飛距離もあり、いい所へ転がっていく。関西学院大学カバーチームがボールに集まって行ってリターンを許さなかった。立命館大学最初の攻撃地点を4ヤード地点に追いやることに成功した。

 関西学院大学はフィールドポジションで優位に立った。

 おそらく戦前の関西学院大学のゲームプランのひとつには、「フィールドポジションを優位にして立命館大学を自陣にくぎ付けにする。少々のドライブでもフィールド中央まで・・そしてパントの蹴り合いにして時間消費のロースコアゲームに持ちこむ・・・・」というのがあっただろう。別にこの試合に限ったことではなくロースコアの展開に持ち込みたいチームなら採用しなければならない基本的な戦術である。

 そして、フィールドポジションは確保した。しかし。

 立命館大学QB#18高田はエンドゾーンを背にしながらショットガンフォーメーションでセット。RB#32野本、#39礒谷へのハンドオフプレー2回で合計5ヤードをゲインした。そして、第3D。

 両RBをHB位置にセットさせてのハンドオフフェイク動作が1回そして2回、この間にWR#11木下が右サイドラン際を縦に抜けて、CBをかわしてフリー状態。2回のフェイク動作で惑わされたディフェンスの上をQB高田から木下へのロングパスが飛んで行く。そしてパスキャッチするとそのままエンドゾーンまでかけ抜けていった。第1Q3分12秒。

 関西学院大学がパントによって作りだしたはずの「フィールドポジション的優位さ」をあっという間に崩し去った瞬間である。

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 立命館大学第2シリーズは、敵陣40ヤードから。

 RBへのハンドオフなどを中心にランプレーで前進し、さらにQB高田のキープランで敵陣4ヤードへ。しかし、ここでQB高田が負傷してしまった。代わりに出場してきたのがQB#16椙田。

 関西学院大学ディフェンスは、QB#16椙田に向かってLB#5平郡、DL#95今東のタックルが飛ぶ。フィールドポジションは敵陣11ヤード。ここはFG3点はやむを得ないところである。
 立命館大学第3シリーズはフィールド中央付近から。そしてQB#16椙田のショットガンが止まらない。RB#32野本、#39礒谷へのハンドオフプレーが高田と同じように次々と決まる。そしてハンドオフフェイクのパスが#39礒谷に飛んでTDとなってしまった。

 エースQBの負傷退場で本来なら試合の流れは変わるはずである。「キーマンの負傷退場」が試合のターニングポイントになった試合は多い。微妙な心理状態の変化・試合展開のあや・ちょっとの油断・・・・・こういう気の隙間に入り込んで試合の流れを自分のものにするというのが関西学院大学の得意とするスタイルのひとつである。
 しかし、この試合はそうはならなかった。#16椙田が#18高田と遜色のないプレーをしたことで、逆に関西学院大学側にプレッシャーになってしまったかもしれない。

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 関西学院大学第1QからQタイムをはさんだシリーズもFD更新なくパント。しかしパンターへの立命館大学の突っ込みが早い。センタースナップと同時にブロックをすり抜けてパンターの目前に迫った。パントすら満足に蹴らせてもらえない状態で立命館大学に攻撃権を移譲することになる。

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 関西学院大学オフェンスがTDを挙げるのは第2Q残り5分で31−0と勝負がほぼ決した後のシリーズだった。立命館大学が第2Qに一瞬だけ抜けるのが今シーズンの特徴だったが、関西学院大学の得点機も他校のそれと一致してしまった。
 前のシリーズで#16尾崎が厳しいタックルを受けたことにもよるのだろうがQB#10出原と併用による自陣30ヤード付近からのドライブがようやくTDにつながる。

 QB尾崎のパスは前半だけで#13小路に2回インターセプトされる。#3大谷、#30岡村のランはゲインするときもあるがコンスタントではない。必要なときにはランもパスも止められてしまった。

 後半のTDプレーはWR#25杉田へのリバースプレーというスペシャルプレーでデイフェンスを惑わせたことによる得点だった。他にもダブルのカウンターなど工夫したプレーの兆候はあったのだが、ノーマルプレー/スペシャルプレーとも全て立命館大学ディフェンスのスピードを前にすれば、「プレー」になる前の段階で潰されてしまった。クイックパスが精一杯だがこちらもDLLBの突っ込みを避けながらで毎回ヒットするわけではない。完全にお手上げ状態になってしまった。

 また京都大学戦で多用したQBスクランブル、ロールオプションはディフェンスが直接QBめがけて突進してくることによる怪我負傷を回避したかったのだろうか、ほとんど見る機会がなかった。

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 逆転には厳しい得点差で半ば試合が決してしまった状態で迎えた後半だったが、特筆すべきは第4Qの立命館大学によるオフェンスドライブである。

 第4Q残り時間9分34秒・自陣10ヤードから始まったこのドライブがTDで終わったのは残り時間2分22秒であり、途中13回連続のランプレーのみでFD更新4回に7分以上を費やすことになった。そして、このシリーズ中で時計が止まったのはランプレーで外へ出た1回だけだった。大量リードのこの試合にあってはどんなプレーでもよかったのだが、立命館大学が一度もパスを投げなかった/ランプレーでもサイドラインを割らなかったことが重要なポイントである。

 リードしているチームが第4Qに入ってからすべきことの一つは、「時間を消費して相手攻撃の機会を奪うこと」であり、それは時間がなくなればそれだけ自チームの勝利が近づくことになるからである。

 立命館大学はパス失敗による時計ストップや、インターセプトの危険を避けるために徹底的なランプレーを試みている。以前の立命館大学ならばこのような状況でもパスを投げ散らかしてパス成功・失敗を繰り返しながら点数を積み重ねていただろうが、今回は少し様子が違った。パワースピードサイズの身体能力に戦術が加わってきているのかもしれない。

 関西学院大学ディフェンスはこのドライブを止めることが出来なかった。ズルズルと後退していきながら、当然時間消費のことも気になっただろう。このままではオフェンスの攻撃機会がなくなるとでも思ったのかどうか判らないが、最後の中央突破ランプレーは簡単に抜けてしまった。

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 この試合は関西学院大学の完敗と言って良いだろう。フィールドポジションの優位性を論じることが出来なくなり、QB負傷でも心理的な優位に立てない、つまり関西学院大学の得意とする分野での試合には至らなかった。オフェンスもディフェンスも手がない、パントも蹴らせてもらえないでは、試合にはならない。さらに第4Qには時間消費という頭脳プレーを見舞われてしまった。

 関西学院大学と立命館大学の間での、体格差・体力差という身体能力の面で差があったことは否定しない。しかし、QB負傷で心理的優位に立てなかったことは、厳しい見方かもしれないが、ここがこの試合結果というよりも今シーズンを分けた決定的なポイントだと思う。

 高田の負傷で出場してきたQB椙田が、高田と変わらないパフォーマンスを繰り広げるだけの力があったこと、つまりバックアップとして日頃から何を準備しておくべきかを考えて実践していたこと、そこに尽きる。バックアップはスターターと同レベルでなければチームの戦力は落ちる。チームが困らないためには、自分がそのレベルに達する以外に方法はない。
 チームが困る/困らないが動機になっているかどうかは実際のところは判断しかねる。しかし、近くに凄い選手がいて同じポジションならばその人に近づきたいとか越えたいというのは、人としての闘争本能である。これは選手層の厚さには全く関係のない、ただただ個人の意識の持ち方による。

 同じポジションに10人が重なっていたとしても皆が低レベルの意識しか持ち合わせていなければ誰もバックアップメンバーには不適切である。逆にたとえ2人しかいなくとも十分にバックアップメンバーになりえる場合がある。立命館大学が選手を集めたから出来たのではない。チーム総人数には関係なく、小人数のチームであっても可能である。最終的には「人数」ではなく「人」である。少数精鋭とはそういう意味である。

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 バックアップQBということでは1996年にも同じ風景があった。QB東野の負傷で出場することになったQB大橋の活躍で関西学院大学に勝利したプレーオフ1回戦がそうだった。しかし、立命館大学がそういう風土にあるとは言わない、あくまでも個人の意識の問題であって偶然の一致に過ぎない。ただ、そういう選手を探し出すことが出来るスタッフは必要である。誰かがどこかで必ずあなたの仕事を見ています。

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 今シーズンの関西学院大学はオフェンスは波に乗れず、ディフェンスは怪我人多発という状態のままシーズンを終えてしまうことになった。頂点に昇り詰めたことも初体験だが、その次のシーズンというのも初体験である。幹部・4年・スタッフともそれぞれ手は尽くしたことだろう。大目標達成後の目標設定の難しさと、強烈なキャラクターの抜けたあとの穴埋めは関西学院大学に限らず世間一般でも難しい。2003年、関西学院大学は何を目標にすえて登場してくるか。

(了)


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