第4Dパント≠休憩時間

updated, 1997. Mar. 26 at 04:30JST.



 前々回の復習ですが、アメリカンフットボールは、4回以内の攻撃で合計10ヤード
以上進むことを第一の目標とします。                      

Ball-On 26Yard 1st-Down 10

ランで3ヤード進む

Ball-On 29Yard 2nd-Down 7

パスで5ヤード進む

Ball-On 34Yard 3rd-Down 2

ランで1ヤード進む

Ball-On 35Yard 4th-Down 1

 自陣35ヤードで第4Dとなった。ここで同様に攻撃をして、ゲイン1ヤード未満だ
と、FD更新ならず、この地点からの相手チームの攻撃となる。相手チームにすれば、
35ヤード進めばTDという非常にラッキーなポジションからの攻撃が始められること
になる。通常は、こんな危険を侵してまで第4D残り1ヤードでギャンブルはしない。
(残り時間と点数差とか状況によってはギャンブルをせざるを得ない状況もあるが。)

 そこで、第4Dの攻撃は、通常のランやパスに替えてパント(キック)攻撃になる。
パント攻撃では、キックをした瞬間に蹴った側のチームにはボールに触れる権利がなく
なり、相手チームにその権利が移行する。これを攻撃権の放棄と言う。       

 相手チームは、空中から落ちてくるボールをキャッチする。そして、ボールを持って
リターン(自チームが進むべき方向へ進む)を行い、タックル等で膝を着いた時点でボ
ールデッドとなり一連のプレーが終了する。ここからボールを支配しているチームの第
1D(FD)の攻撃となる。                          

 ところで、蹴った瞬間から相手チームにボールに触れる権利が移るが、相手チームが
一度でもボールに触れた後は、両チーム共に触れる権利が発生する。つまり、ボールに
触れたがキャッチできなかった等、転がっているボールにはどちらのチームにも獲得す
る権利がある。そして、最終的にボールデッドになった時点でボールを支配しているチ
ームに攻撃権が与えられる。                          

 経験的に言っても、100回に99回以上は相手チームに攻撃権が移る。だが、残り
1回は、ボールを蹴って攻撃権を放棄したにもかかわらず、相手側のミスで再び攻撃権
を獲得するという「とんでもない」場合がある。自陣40ヤード付近から蹴った場合、
相手側20ヤード付近にボールが落ちる。そこから最終的にどちらが支配するかだが、
もし、蹴ったチームが支配するようなことになると、敵陣20〜30ヤード付近からの
FDの攻撃となるかもしれない。夢でも見ているかのようなラッキー状態である。  

 しかし、100回に99回は何事もない。したがって、パントになると観客は少し気
を抜いてしまう(選手が気を抜くということはないと思うが)。私なんか第3Dの攻撃
が進まずにパントに追い込まれると「もっと、落ち着いてパスを投げんかい。」とか、
「そんなとこで足を滑らせてどないすんねん。」と言いながら、持ってきたポットの蓋
を外す。私の横に居る(K)も、カバンの中をゴソゴソして紅茶のティーバッグを探す。
そうこうしているうちに、フィールドでは第4Dのパントが行われている。     

 私は、ポットの蓋を持ちながらも100回に1回のために戦況を眺めているのだが、
そうでない人もいる。通常は、何もなかったかのように攻撃権が移って、相手チームの
攻撃になる。しかし、時々だが、とんでもないことが起きる。           
 大歓声とともに、ティーバッグを探していた(K)がフィールドに目を戻すと、パント
して攻撃権を放棄したはずのチームが再び攻撃しようとしている。「どうなったの?」
と聞かれてもたいした説明はできない。西宮STでは、バックスクリーンでビデオ再生
されるので、一応納得するようだ。                       

 てなことで、第4Dパントのシチュエーションを軽視してはいけません。     

 第4Dパントで起きる「とんでもないこと」は、まだ他にもある。        
 通常、攻撃側の自陣40ヤード付近でパントに追い込まれた場合、蹴ったボールは相
手側の10ヤード付近まで跳ぶ。それをキャッチしたリターナーは、タックラー(タッ
クルする人)の隙間を縫って前進を試みる。普通はリターナー側の自陣30ヤード付近
まで進めば上出来である。だが、なかなかつかまらず、あれよあれよという間に、パン
トを蹴った付近まで進んだり、そのままTDなんてこともある。これらは、「ビッグリ
ターン!!」とか「リターンTD!!」と言われる。               

 もう一つの「とんでもないこと」、それはパントするチームの意志によって起きる。
第4Dパントになって、C(センター)がボールをスナップ、P(パンター)(キック
する人)がボールを受けた。この瞬間に、P(パンター)がQBに早変わり。フィール
ドの左右奥に散ったレシーバーを探してパスが成功する。フォーメーションはパントだ
が、そのプレーはパントではない。P(パンター)がQBに変わった瞬間に、    
「パントです。いや?。ギャンブル!?!?。ギャンブルです!!。」       
「オーット!!パスが成功して、なんとFDを獲得してしまいました!!!。」   

 もちろん、パス失敗やランが届かないときもあり、その時は、その地点から相手チー
ムの攻撃になるので、危険ではある。だが、パントフォーメーションによって相手を油
断させておけば、ギャンブルの成功率も少しは上がる。              

 さて、ここまでいけば、ついでにもう一つの「とんでもないこと」。       
 自陣30ヤードからパントフォーメーション。C(センター)がボールをスナップ。
「オーット!!。ボールが高い!。なんとボールがP(パンター)の頭の上を跳び越え
ていってしまいました。ボールが転々としています。どうにかボールをおさえることが
できましたが、なんと、残り5ヤードから相手の攻撃となってしまいました。」   
 他には、パンターがボールをおてだまして蹴ることが出来ないというのもあります。


 このような「とんでもないこと」は、確率的には100回に1回程度ですが、その試
合を左右しかねないほど大きな結果をもたらします。もう少し強引にいえば、1回のラ
ンやパスでは試合は決まらないけれども、1回のパントで試合が決まることがあるとい
うことです。                                 

 選手やチームにとっての「なんでそんなことになるねん」は、試合の流れ、展開が自
分の考えていたものと違うという思いを表わし、パニックの一歩手前へ到達させます。
そして、相手チームは「ラッキー。よし、行こう」ということになります。今まで劣勢
だったチームが「ラッキー」側になれば、「まだ、天は、我々を見捨ていなかった。」
となって生き返ります。つまり、攻勢だったチームとの間で気持ちに逆転が起きます。
これは、点数さえも逆転する可能性につながります。               

「××大学はいい調子できていただけに、さっきのパント失敗が非常に残念です。完全
にモメンタムは○○大学に移ってしまいました。」                
 試合を決める第4Dパント、一番スリリングなシーンである。絶対にフィールドから
目を離さないようにしたい。(でも、紅茶も飲みたい。)             

 



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