■□静寂なる、白き王の。 〜七〜 <<noveltopnext>>
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それを、そっと抱きしめる。

熱く、冷たく、優しく、突き刺すように。
強くも儚く、消えてしまいそうな、ソレを抱きしめる。

「ああ…やっと……」

呟いた、瞬間だった。
抱きしめていた、ソレが散るように消えて行く。
止めようとして、巡らした視界の遠くに、
その人は立っていた。
きっと、泣いているのを気づいていないのだろう表情で。

お前は、そう、泣き虫だから。

その水を、拭ってやらなければ。

腕が、体が、この、ルルーシュそのものを
鎖が絡み取り始める。

消える、消える、消える、消える



全てを、消して、その人達だけ、残して




「―――ッッッ!!!!!」

身が引き千切れようが、構わない。
無理矢理、その鎖を外そうと足掻いた。

キィィィンッッッ、ザンッッ!!!

鎖が弾け切れる。
自分の力で、はじけたのではない。
見えたのは一瞬の煌き、そして藤色、竜胆色に揺らぐ炎。
地に膝をつく、ルルーシュの目前に煌きが集約する。

「………」

刀の切先。
それは数回ほど見た事のある日本刀だ。
少しでも動けば、斬られる事が十二分に伝わる。
だが、怯える事なく、ルルーシュは刀を持つ者を見た。
黒緑色の髪、蒼い瞳。
中性的な容貌は、整い、けれど自身よりも年下であると解る幼さを残していた。
「誰だ、貴様は」
「………テメェは誰だと考えている?」
少年は答えた。
中低音の声は、凛として響く。
「少なくとも、救いの神や、天使ではないな」
クツリと少年は笑った。
「『輪廻の罪人』じゃねぇな、アンタ………罪人には代わらないが。
それにしても、俺に話しかけてくるのは珍しいな」
目の前の少年は、神や天使ではない。
だが、それ同等のモノを感じた。
「追いかけるのか? 無理だぞ。
アレは、償う事はできない。
決して赦されず、解き放たれない輪廻の牢獄に囚われてんだ。
罪そのものが、因果律の枠組みになってやがるし」
突き放すように言う相手を、ルルーシュは睨みつける。
「訳の解らない事を言う。
俺は、俺の意志で行動する。
貴様などに、制約をつけられる筋合いはない!!!」

「……足掻くか? それとも、歪むか?」

足掻く?
馬鹿げた事を言われている。

「俺は俺の道を行く。邪魔をするなら、排除するまでだ」

「……アンタみたいな奴が、『王』なんて……面倒な世界だな……。
アンタは行くと言ってもな、それは既に切れて、もう終わっている。
繋ぐというのは、また、『試練』を目前に戻す事になるが」

ふいっと仰いだ。
少年は、息をついてルルーシュを見下ろす。

「その覚悟を試される。
あるのは、二つの選択肢――それは、あの『罪人』の努力を
砕くようなもんだぜ?」

「俺は、」

少年は笑った。
その笑みは、『彼』にも似て、『彼女』にも似ていた。
刀が振り下ろされる。
藤色の焔が、薙ぎ、注がれた。
斬られたのは、ルルーシュではない。

天へ行くには、穢れ過ぎている。
地へ行くには、穢れが足りぬ。

その焔は、煉獄。



斬られたのは、繋げられた、明日への因果。
絡み取るように伸び始める、『彼』が断ち切った『死』の手。

再びの贖罪の時。
その代償に、消えた、それが、瞳に映る。

少年が消えた。
その少年を見たという、記憶そのものが、消える。
彼を知る事を、赦されていないからだ。

彼は、罪人でありながら、『神』の力を行使できる者。
気まぐれの、それは、『神』と同じ『救い』の一手だった。






白い、白い、世界が広がって、何もない。
突き刺すような痛みを、眼球と胸の中心に味わう。

青い空、歓声と、赤い色、赤い衣、黒い衣。

ああ、泣いている。
お前は、泣いてくれているのか?
戸惑いなく賛同した、お前が、
仮初の許しに、憎しみを覆ったお前が、
涙を流すだけの情を残してくれていたのか?

歩めるだろう。お前は。
お前の歩みを阻む物は全て、なくなった。

だから、生きろ

いつか、生きる事に、少しでも幸せを感じてくれたなら






「世界の、為に、必要ない――」






業火が埋め尽くす地を走る少女がいる。
火に煽られ、その服裾は煤汚れる。
漂うのは、焼けた匂い、死臭だ。
「っ、」
敵も味方もない。
殺しあう軍勢。
一人の歩兵が彼女へ銃を向ける。
それに気づき、避けるが、腕を撃たれた。
「くっ、」
顔を顰める。
腕は撃たれた部分から弾け、千切れ落ちた。
だが、少女は倒れない。
片腕を抑え、壊れたKNFを伝い、尚も業火の奥へと駆ける。
風が扇ぎ、隠れた額を見せる。
鳥を模した刻印が赤く発光し、失った腕が再生した。
息を切らし、そして、金色の瞳に映す。
まるで雲の上を歩いているような、そんな足取りで
歩く黒衣は、救世主と謳われるゼロの服。


「やめろっっ!!!!」



凛々しき、彼女の声にも
ゼロは歩みを止めない。
それに、少女は唇を噛み締め、そして手を伸ばした。

「やめろ!!! 殺すな!!!!!」

――それでは、約束を違える。
   お前の望みは、

ゼロは音を立てずに、少女の前へと降り立ち
持っている、その皇帝を討った刀を構える。
ゼロの象徴である仮面は、ない。
記号である彼は、顔を見られる訳にはいかないというのに
――即ち、そういう事なのだ。

ゼロは、彼は、此処にいる全てを

躊躇なく、刀で少女を突き刺す。
だが、少女は、哀れむように彼を見下ろした。

「それでは、約束を果たせはしないな」

少女は言い放つ

「ああ、これも罪だ。
お前は、また罪を重ね、業を背負う」

罪へ与えられた罰。
償いの時。
だが、彼の行動は、
少女の手が、相手の額へと触れる。

「だが、その『罪』はお前のモノではない。
そうだ――馬鹿な坊やだったな
罪を償うのは、罪を重ねた者でなければならないのに」


ツグナイは、本人であるとは限らない


「………アイツは……」



「そうだ、アイツはいない。
アイツの、残した、純粋なる願いも、お前自身から消えてしまった」

腹に刺されたまま、少女は身を寄せて、その者を見上げる。


「うあああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ」

耳を突き刺す悲鳴が響く。
突き刺した少女から剣を抜き、頭を抱えて喚くように叫ぶ。
それを取り乱す事なく、業火の中、少女は瞳に映した。

「あ……っ……」

ガクンッと体を震わし、剣を握り締める。
ゼロは、彼は、その剣先を
「優しい世界の、」
自らへと向ける。
「それを、実行するのか?
お前は、事実と共に、肯定する事となるぞ」
冷たく言い放った。
表情は、憐れんでいるように見えて、軽蔑しているようにも見える。
「っ、っ……何処にも、何処にも……」
彼は震え、涙の変わりに全身が血に濡れていた。

「だが、終わる事は出来ない。
そうだろう? もはや、お前は――」





人並みの幸せも、望む事は許されていない筈だ。
だが、望みが、姿を見せた。





俺は、許されてはいない。
君も、許されてはいない。
けれど、また、生まれたのは、価値あるもの。
無垢なる生に、望む事は許されている。


君は、今度こそ、皆と幸せになるべき、だ。


生きろ、と言った、君が。
死ぬ為に、生きるなんて、可笑しいだろ?
未来は、希望に満ち溢れている。
幸せになる為に、前を見て、明日へと生きろ。

君が、僕に言いたかったのは、そういう事
そうだろ? ルルーシュ……


――ああ、そうだ……だが、少し間違っているぞ?


お前がいなければ、意味がない。
お前が、いなければ、意味がないんだ。


胸が痛い。
貫かれる痛み。
それは物理的なものではなく、失わずにあった心の欠片。
たくさんの人を殺し、騙し、踏みつけて
重ねた罪の数を、贖う事は、世界が果てるまでないだろう。
何とも繰り返し、浴びる煉獄の痛みに魂が焼かれ
されど滅する事なく在る、愚か者。
苦しくも、痛い。
だが、辛くはない。
ずっと、自分が此処にいた、ように
ずっと、お前は此処に、いてくれた。

いてくれたから、辛くなかったんだ。






「っ、」

それは悲鳴のようだった。
耳奥から鼓動が響き、呼吸が乱れている。
ゆっくりと息を吸い、吐くと、周りは変わらぬ自身の部屋だった。
閉まっているカーテンの隙間から、淡い陽光が差し込んでいる。
落ち着いた呼吸と共に、静寂が落ち、そして耳に届くのは秒針を刻む音だ。
ルルーシュは、体を起こし、ベッドのサイドチェスト上に置かれた懐中時計を取る。
両手でそっと包み込んで、止まらぬ時を見つめた。
安堵と、歓喜。
昨日は、そればかり浮かんでいた。
しかしだ。
今は、解放感のあった身は重く、そして騒ぐのだ。
時刻は、早朝。
寝起きは良くないルルーシュは次には、行動を開始していた。






朝食の準備を、咲世子に頼み
一応は制服に着替えて家を出た。
早歩きから、駆け足、そして全力疾走に近いほどに走っていた。

消える、消える、消える。

足がもつれて、転びそうになりつつも
駆けて、そして、あの枢木神社へ。
第一鳥居をくぐり、古びた石段を駆け上る。
体力は平均より低めのルルーシュは息が切れ切れになるが
構わずに階段を上りきった。
寒いはずの早朝の、境内は静か。
ポケットから、懐中時計を出すと時刻は六時。
このような時刻に来るのは、些か失礼であろう。
だが、静かなのだ。
静か過ぎるのだ。
「……スザク……」
呼ぶ声は、自身でも笑えてしまうほど弱々しい。
余計にそれは、自身の弱さを露呈する。
「スザク……」
箒を持って、袴姿で、此処に。


学生服を着て、此処に、
叫び、罵り、そして

――裏切ったなぁぁぁぁーーーーーーッ!!


米神が傷み、眼球がチリリと痛む。
響いたのは、誰の声か。
首を左右に振り、離れの方へ走った。
此処に来た理由を何通りか浮かべ、そして、侵入する。
鍵が閉まっていないのは、いつもの事。
「スザク!!」
他に言う言葉があるだろう。
けれど、それしか音にならない。
障子を開け、襖を開けて、家具はそのままだ。
だが、音がない。
そうだ。
いつだって、スザクはルルーシュの呼び声に、応えてくれていた。
焦燥感と、押し潰されそうな、認めたくない考えが過ぎり
客間の畳上に置かれた白い物体を見つける。
封筒だ。
封筒には、角々しい文字で『ルルーシュへ』と書かれている。
ブリタニア文字ではない、それは片仮名と呼ばれる文字だった。
膝をついて、震える手で封筒を開くと、数枚の便箋が入っている。
手紙だ。

『ルルーシュへ

今日和かな? ブリタニア語で書こうかと思ったのだけれども
君が日本語を理解してくれているから
母国語で書きました。ごめん。
これを読んでいる頃には、もう私はいないと思う。
君は気づいてしまったね。
私が全く老いていないという事を。
私が化け物であると。
知られたからには、此処にいる訳にはいきません。
利用する訳がないと、君は言うかもしれないけれど
私は君を信用できない生き物です。
憎んでも、嫌いになっても構いません。
あの時、君を好きだと言ったけれど
私は君が嫌いです。
幼い子供に憐れみを向けるほどの好意くらいは
あったかもしれないけれどね。
私の言葉、私の態度ひとつで、起伏する君を見るのは
滑稽で面白かったよ。
あと一つ。
あの写真は、別にばら撒いても構わない。
僕の想い人は、もう、この世にはいないから。
何処にも、いないんだ。

そろそろ時間だ。
さよなら、ルルーシュ。
皆と幸せに。

枢木スザクより』



その手紙は、ルルーシュを突き放すような文面だった。
ガタガタと体が震える。
手紙をグシャリと握り締めて、奥歯を噛み締める。
「馬鹿がっ、」
何と、矛盾に満ちた手紙。
嫌いな者に態々と去る事を知らせる為だけに、手紙を残すだろうか。
残したとして、自身の身を案じる文章で終わらすだろうか。
嫌いと書かれた部分が、何度も書き直した形跡もある。
本当の事を言ってはくれないが
嘘を吐かないスザク。
そんなスザクが吐いた嘘は、あまりにも見破りやすいもの。
これが、本人の良心から
本当の事だと言っても、ルルーシュの気持ちは変わらない。
変わらないのだ。
ルルーシュは自他共に認めるほど、我が強い。
それ故、他の気持ちを汲み取るに欠ける部分もあった。
だから、関係ない。

(お前が、俺を、嫌いであっても)

離す気など、ない。
だって、そうだろ?
自分たちは、やっと――……。

だが、体の震えは止まらない。
この小さな紙切れに、彼の人間らしい想いが込められているからだ。
立ち上がり、ルルーシュは駆け出した。
知っている。
自分は知っているのだ。
スザクを、手に入れる為には、全てを失くす程の覚悟が必要であり、
打ち砕かなければならない。
今も、昔も、これからも。
瞳の奥に、眠っている、それらも。










「早過ぎないか?」
欠伸をしながら、髪をまとめて、深く被った帽子に入れ、
レースの襟に、裾はティアードの白いワンピースのC.C.が言った。
「そうかな」
スザクとしては、遅すぎると感じていたが、曖昧に返答した。
白に襟にラインの入ったシャツ、ブーツカット、黒いコートのスザクは鞄を持つ手を換える。
物にあまり執着がないスザクの持ち物は偽造した身分証明書とカードだけで
後はC.C.の私物だ。
彼女の手には、400年も経っても尚、色褪せぬチーズ君人形がある。
スザクがよく洗濯をするが、全く、当時と変わらない状態の人形に
これにもコードが宿っているのではないかと本気で最近は思っている。
「まぁ……妥当といえば、妥当か……」
そう呟いて、スザクが歩む方とは別の方角へとC.C.が歩み出した。
「何処に?」
「バイクを手配する。
いくら早朝とは言え、電車には、まだ乗る訳にはいかないだろう」
「電車には乗らないよ、」
「……私を歩かせるつもりか?」
神出鬼没の彼女に言われるのは、少し不思議な気分だった。
日本より別国への移動は、遺跡で出来る。
だが、その遺跡までの道程は交通機関を使用する方法が一番、快適であるが
昨日、刺客が来たばかりだ。
消し去ってみたが、元を完全に駆除はできてはいない。
歩いて行くのが当然とばかり思っていたスザクは
そうだったと思い至る。
「相変わらずの、体力馬鹿だな、お前は」
苦く笑った。
冷たい口調での言葉は、『彼』と似ている。
「バイクを手配する。お前は、此処周辺にいろ」
「うん、解った。宜しくね」
通常なら相手の手を煩わせないように、スザクが動こうとするが
彼女が自ら動くと言った際は、彼女に任した方が得策である。
ただし戦闘以外での話しであるが。
これは、数百年、共に歩んできた経験論だ――あと、あまり口答えも宜しくない。
去って行く後ろ姿を見えなくなるまで見送り、路地の隅に寄った。
早朝であるが、目前の大通りの交通量はそこそこに多い。
見上げれば、建物の狭間から突き抜ける青が見えた。
「……」
此処には、暫くは戻らない。
今の彼とは、もう二度と。
顔が、見たいと思った。
もう一度、逢って、それから――
スザクは左右に首を振った。
(駄目だな、俺は)
人でなくなった自分に、残った人の欲。
そうだ。
とても欲深いから、一目でも見れば、鈍ってしまう。
影から、そっと見つめる事も駄目だ。

ルルーシュは、いつだって、自分を見つけてしまう。
知りたくなかった、自身までも。

眩しさに、瞳を閉じる。
ささやかな喧騒の、遠く。

「――、―――ッ……ク、」

聞こえてくる。
その音に、震えているのは、いつの自分だというのか。

「スザク!!!」

瞳に映る、紛れる事のない、その人は。
眉間に力を入れて、全てを断ち切る。
記号という仮面を心だったモノに覆わせて、冷徹に、視界から遮断した。

期待など、していなかった。
嬉しいなんて、思っていない。
駆け寄りたいなんて、思っていない。
本当は、本当は――。
全部、嘘。嘘なのだ。
進む、その明日には、自分は存在しない。

コートを翻し、その場所を離れる。
C.C.とは周辺という約束をしているから、少しの移動は問題ないだろう。







辿る、小さな糸。
それを縁と言うのだろうか。
息を切らして、走ったのは、この街の出口付近だった。
他に、ルートはあったが、此方にいると核心があった。

ああ、此処は。

隊列を、為して
人々の怨念と、屍の上に、白い装束を纏って

「――…っ……スザク、スザク!!!!!!」

反対側の路地に、紛れる事のない、その人を見つける。
遠目で解るほど、冷たい眼差しを向けて、背を翻された。
その態度に、痛む胸内であるが、それは、些細な事だ。

手を差し伸べた時には、その手を取らず
彼から差し伸べられる手だけ、掴めた。
それは、最初と最期だけ。

――ルルーシュ! 何やってんだよ!

満面に、屈託無く笑う幼い頃のスザク。
それに悪態をつきながら、その伸ばされた小さな手を掴む。
とても簡単な事だ。
駆ける足と、流れる風景。
死に際に見る走馬灯のように、それらは再生される。

ナナリーの為

最初の原動力の、その中に、彼はいたのだ。
最期は、彼の為でもあった。


お前は、生きろ。
お前は、生きろ。



「スザク!! スザク!!!」

呼んでも振り返らない。
体力を消費している自身では、見失うのも時間の問題だ。

――ルルーシュ……

あの青空の下。
英雄となった、友は。
涙を零してくれた。
同時に、叱り付けてやろうと思った。
仮面の下で、泣く必要なんてない。
お前は、自由になったんだ。

「スザクッ!!」

この、愚か者。
お前は、生きろというのなら。
その、罪を還してもらう。
お前が、償うべきは、別の罪だ。
ささやかな幸せを望むのは、悪い事ではない。
それくらいの慈悲は残っている筈だ。
『神』が許していないというのなら、それでいい。
膝まづくのは、『神』の御前ではない。

お前が、生きろと言うのなら

息を飲み込んで、ガードレールを飛び越えた。
スザクのいる反対がの路地へ行く為だ。
瞬間、眼球が痛む。
視界が歪み、それでもスザクを見失わないよう開いた。
足から力が抜ける。
ノイズが入り、四肢に絡む、禍々しい何かを見た。
地に膝をついて、すぐに立ち上がろうとした。
だが、力が入らない。


「っ、」



何かに貫かれる感覚。
振り返らないと決めていたスザクは振り返った。

(そんな……そんな、筈は……っっ!!!)

Cの世界の、ルルーシュに絡む、その手が、持って行く。
視界に、彼と、瞳が会う。
それは、Cの世界か、現か。
ルルーシュが微笑んでいる。
転んだのか、道路に膝をつくルルーシュに、大型のトラックが迫り

「ルルーシュ―――ッッッ!!!!!」


キィィィィーーーーー……、ドンッッッッ



切り裂くブレーキ音と、衝突音。


喧騒と、集まりだす人々。
それは、あの、日と同じ。

英雄ゼロが悪逆皇帝を、刺し殺した、あの青い空と同じ。
同じだったのだ。










(続)
+++++
謎の少年は特別出演、相葉祐希クンでした。
なんぞ?と思いますが、某パラレル小説の祐希クンです。
彼は世界意志の概念などを理解していて――みたいな設定持ちなので。
パラレルでの、スザクとの括りが同じだったので出しちゃいました。
彼、出るの二度目でありますが……まぁ、軽く流しちゃって下さい。
時空連続体として、ね。ルルーシュがいる所でいう外的な世界の一つです。
そんでもって、こんな所で続く。な感じ。
よくありますよね。アニメやドラマや漫画などで。
明らかに、道路に飛び出すルルさんが悪いですね。
次で最終話です。
+++++++++++
私的には、某エロゲーと姫ちゃんのリボンが浮かびます。
車でキキィー!! 続く、みたいな。