動き出したら止まらないもの、一定の動き方をし、価値を産出するもの。

「この作品の起源は、ボルヘスの一冊の書物の中にある。」

そう、「笑い」だ。笑いは、一定の動き方を壊し、歪め、弾き飛ばす。

ぼくたちの道程の半ば過ぎ、突然まじめな仕事がいやになる。

頭を下げるのはもってのほかだが、ふんぞり返るのも真っ平だ。

敵を笑い飛ばせ。せせら笑い、あざ笑い、爆笑し、笑い殺すのだ。

笑いは自己中心的だ。笑いは、拒否である。笑いは、尊厳なのだ。

「日本人の微笑」でハーン先生が、悲しいときに笑う日本人を描写したとき、

実際は、痛めつけられ、土下座させられ、悲惨な目にあい、笑う以外に自己を保つ手段のなかった日本人たちを描き出している。

悲しいときに悲しめるのは、世界の中心にいる人間であることだ。

周辺にいるものは、悲しいときに悲しめない。