平成12年8月13日

        平成12年度舳倉島総合診療実施報告書

                                      
                                 舳倉診療所長 能登 隆元

  平成12年度の舳倉島僻地総合診療が8月5日、8月6日の両日にわたり
実施され、皆様のご活躍により、無事に終了することができました。
ここに、厚く御礼申し上げます。

今年度の実施状況について以下に報告いたします。

1 日程
平成12年8月5(土)  午後1時〜午後6時
平成12年8月6日(日) 午前9時〜正午(一部午前7時半開始)

2 診療科目、場所
 舳倉島総合開発センター内

玄関ロビー    :受付、視力測定
診察室(1階):外科(上部消化管内視鏡のみ)
研修室(2階) :内科(心電図含む)、診療内科(ストレス相談)
電算室(1階) :耳鼻咽喉料
検査室(1階):眼科、レントゲン

3 診療従事者

内 科 
    小竹 優範 医師(市立輪島病院)
    看護婦 1名  (県立中央病院)
外 科(胃カメラ)
    又野 豊  医師(市立輪島病院)
    看護婦 1名  (県立中央病院)
耳鼻咽喉科
    小森 貴  医師(小森耳鼻咽喉科医院)
    看護婦 1名  (県立中央病院)
眼 科
    山村 敏明 医師(やまむら眼科医院)
    保健婦 1名  (輪島市長寿保健課)
心療内科
    加藤 佐敏 医師(かとうクリニック)
    
受 付  
    県健康福祉部より次長をはじめ4名
協 力 
    株)松本グローバルメディカル

特別協力 
    氷見 祐二 医師(市立輪島病院耳鼻咽喉科)
その他
    能登 隆元 (舳倉診療所)


4 受診状況
今年度の受診者数はのべ87名、実際は53名の方が受診されました。

平成   受診  内科    外科    耳鼻科  眼科  心の 受診件数
 年  者数                                 内科

 4年    66     25      15      29      36     /     105
 5年    56     20       3      33      33     /      89
 6年    48     15      17      20      18     /      70
 7年    74     35      20      37      52     /     144
 8年    70     14      27      29      36     /     106
10年    57     21      19      30      33     5     108
11年   113     63      62      50      44     /     217
12年    53     18       8      27      33     1      87
受診者数は平年より、やや少なめとなった。

5 診察結果
各科の専門医の診断の結果、総受診件数87件中、45件(51.7%)
において所見が認められ、処置・治療がなされました。

6考察
a.概要
 昨年度の総合検診において、過去最高の受診者を記録したが、
今年度は、平年に近い受診者数にとどまった。原因として以下の
3点が考えらました.
・総合検診当日が2日とも、休漁日(沖休み)とならなかった.
・近年まれな好天(天気、波とも)に恵まれた.
・検診2日目が急に舳倉島→輪島への、出張漁(エゴ採り)
と重なり、受診希望者の中に受診できない島民があった.
また、島民の中にはかなり以前に行われていた歯科検診を希望
する者も少なくなく、実現できるかどうかが今後の課題である。

b.内科
本年度も内科聴診、血圧・血糖測定、検尿、心電図検査が施行された.
特に、海女を生業とする者が多い当島においては、潜水中の動悸や
呼吸苦症状に対して、不安を持っている島民が少なくない。また、
昨年度の金沢大学医学部第2内科の調査により、島民に濃厚な肥大型
心筋症の家系が存在することが明らかになった。
 その意味において、今後もこの検診にて心電図検査の必要性は高く
なると考えられる。

c.外科(胃カメラのみ)
本年度は十余年にわたり毎年総合検診に尽力されてきた、
外科の高畠医師が都合で不参加となったため、輪島病院内科の又野
医師の代診という形で、胃カメラ検診を行うこととなった.
 今回は、毎年受診者が集中する、検診2日目に島民総出の出張漁
である"エゴ採り"が急遽行われたため、受検者の減少となった.
胃カメラ検診上、早急な処置や治療を必要とする症例は存在しな
かったが、1例に胃粘膜生検を実施した。
また診療科の都合上、昨年人気のあった、乳癌検診は本年は
行われなかった。昨年度35名受診した乳癌検診であるが島民の需要
が高いことから、来年度以降は、その復活が望ましいと考える。

d.耳鼻咽喉科
"海女の島"と呼ぶにふさわしい当島では、潜水によって生じる
耳や鼻の不調を訴える島民が多い。また、喫煙率も依然として高く
喉頭疾患の早期発見にも、当検診が果たす役割は大きいと考える。
本年度も、専門医検診として喉頭ファイバーおよび副鼻腔X線
検査を実施し、成果を上げている。

e.眼科
 例年遅り、眼圧測定器、オートリフラクトメーターを導入し、充実
した検診となった.その結果、角・結膜疾患、緑内障、白内障、網膜症
などに関し、総合的・専門的に診療可能な場となった。
中でも特に、島民に有病率の高い糖尿病性の網膜症に関し、今回の検診
で新たな発症例が2名、網膜症の悪化例が3名存在した。
 離島における生活習慣病の管理の難しさを、改めて実感することと
なった。

f.心療内科
 一昨年に続く実施となった。島民には、"ストレス相談"として
広報してきたものの、満足な受診者数とはならなかった。
 しかし舳倉島の海女の間には"チャマイ"と呼ばれる独特の不安
神経発作を持つものが少なくなく、中でも潜水後の過換気症候群に
関しては、依然として大きな恐怖を持つ者が多い。
 診療科としての特殊性はあるものの、潜在的な需要が多いことから
総合検診の診療科として継続していただくことを切に望みます。

7 まとめ
今年の総合検診では、昨年に比べて受診者の減少が目立ちましたが
その主な原因としては、検診の日程調整の難しさが考えられます。
島民の専門医総合検診に対する需要と期待は依然として非常に高く
検診への需要が減ったためとは考えにくい状況であります.
今後とも、この総合検診が継続され、ますますの発展を心より願って
おります。

8 謝辞
 本年度の舳倉島総合検診は好天に恵まれたものの、検診場所である
舳倉島開発センターの空調設備(クーラー)の不調により、診療に
支障を来たし、スタッフの方々には大変不快な作業環境となった事を
深くお詫び申し上げます.
合計2日間という期間ではあリましたが、皆様1人1人の御協力により
何とか無事に終了することができました。今後とも、舳倉島民のために
お力添えいただけますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。
今回は本当にありがとうございました。
私の舳倉診療所勤務は本年の9月までの予定ですが、今後、また
皆様と共に仕事をする機会をいただけましたら幸いに存じます。
                  
                  舳倉診療所
                  能登 隆元拝