平成11年度舳倉島僻地総合診療実施報告書

平成11年8月13
舳倉診療所所長 庭田満之

 平成11年度舳倉島僻地総合診療は731日、81日及び、87日、8日の2週にわたって実施され、皆様の御奮闘により、お蔭様で無事に終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。
 本年度の実施状況を以下に報告いたします。

1. 日程
 内科、外科(上部消化管内視鏡、乳癌検診)、耳鼻咽喉科
  平成117月31日(土) 午後1時〜午後6
  平成118 1日(日) 午前9時〜午後0
 眼科
  平成118月 7日(土) 午後1時〜午後6
  平成118 8日(日) 午前9時〜午前1130

2.場所
 舳倉島総合開発センター内
  玄関ロビー  ; 受付、視力検査
  診察室    ; 外科
  集会室    ; 内科
  コンピュータ室; 耳鼻咽喉科
  検査室    ; 眼科・レントゲン・心電図

3. 診療科目
内科、外科(上部消化管内視鏡、乳癌検診)、耳鼻咽喉科、
眼科




4. 診療従事者
  内科    見延 真実 医師 (市立輪島病院)
        中村 陽子 看護婦(石川県立中央病院)
  外科    高畠 一郎 医師 (有松中央病院)
        藤田喜美子 看護婦(石川県立中央病院)
  耳鼻咽喉科 小森  貴 医師 (小森耳鼻咽喉科医院)
        光井 光代 看護婦(石川県立中央病院)
  眼科    山村 敏明 医師(やまむら眼科医院)
        山崎 美和子 保健婦(輪島市長寿保健課)
  受付    県庁厚生部より部長を初め4
  協力    セントラルメディカル社より1名
  その他   庭田 満之 医師(舳倉診療所)

5. 受診状況
受診者数は、のべ213名、実際は113名の方が、受診されました。



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6. 診療結果
  各科専門医の診察の結果、総受診件数213件中121件(56.8%)において、何らかの所見が認められ、それぞれに対し、@所見の指摘、A治療計画の指示、B治療がなされました。

        6 各科有所見者の割合

     内科            乳癌検診
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                  眼科
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     内視鏡          耳鼻科
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7. 考察
 a. 全体総括
  ここ数年、好天のため受診者数が横這いであったが、本年度は幸運(?)にも、1週目の両日が沖休みとなったため、受診者は過去最高となった。島民は、都合さえつけば受診する意志を持っていることが、数字となって現れた年であった。これは専門医指向の高まりでもあるが、それだけではなく、長年この総合診療に携わってきた医師たちへの信頼度の高さが、形となってあらわれたのであろう。
  内容としては、ここ数年来の課題であった、3050歳代受診者も増え、慢性疾患の治療が開始された方も存在した。
  また、本年度は、突然乳癌検診の需要が増大した。今後も科目を固定化するのではなく、その時点での島民のニーズを把握し、柔軟に対応できる体制を整えていくべきであろう。

          写真1 受付・待合室

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 b. 内科
  本年度も、血圧・血糖測定、検尿、心電図検査が施行された。その中で、ほぼ全例の心電図をとることが出来たことは、大変意義深いものであった。海女を生業としている人は、特に潜水中の動悸などに対して漠然とした不安を抱えており、また、虚血性心疾患だけでなく、不整脈をもつ島民も多く存在し、心疾患に対する恐怖感というものが根付いているように思われる。その意味でも、多数の島民の心電図を記録出来たことは今後の診療に際しても、有益であった。
  また、両日が沖休みであったため、従来ほとんど受診することの無かった4050代の男性も受診されている。漁業を生業としている島民は、その不規則な生活のため、いわゆる生活習慣病にかかりやすく、この年代の方に受診していただき、治療を開始された方も数名おられたことも今年の成果であった。

      写真2 内科

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 c. 外科
   本年度も、上部消化管内視鏡、乳癌検診を実施した。
  内視鏡に関しては、定期船ニューへぐらの性能の向上など、本土の医療機関を早期に受診される方が多いにもかかわらず、予約を取る段階ですでに20名を越えており、島民の高畠医師への期待、信頼度が伺える。また、悪性腫瘍が発見され、手術後職場復帰されている方のフォローアップも何例か存在する。長年の成果がここに現れている。また、本年度も胃粘膜生検を3例で実施している。
   昨年2名であった乳癌検診であるが、本年度は35名の受診者が殺到した。事前の告知少なかったにもかかわらず、これほどの受診者がでたということは、驚きを隠せないが、一方であまり医療機関を受診することのない海女の方々も、女性特有の不安を持っており、この健診が絶好の機会となっていることがうかがえる。  来年度以降も主要な診療科目として定着することを望むところである。結果としても、精査を要する方が3名存在した。

       写真3 上部消化管内視鏡

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 d. 耳鼻咽喉科
   海女の島といっても過言ではないこの島で、やはり女性の受診者が今年も大半を占めた。健診開始当初から参加されている小森 医師への、島民の信頼が肌で感じ取れた2日間であった。
   診療に関しても、喉頭ファイバー、副鼻腔X線検査など専門医  健診としても大変充実したものとなっている。また、島民は喫煙率が非常に高く、今後喉頭ファイバーの必要性もますます高まってくるであろう。








         写真4 耳鼻科診療

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 e. 眼科
   後半に、単科で行った眼科は、沖休みとは重ならなかったにもかかわらず、例年を上回る数の方が受診された。例年通り、眼圧測定器、オートリフラクトメーターを導入し、非常に充実した眼科専門医健診となっている。本年度は幸いにも早急に治療を要する方はなく、もっぱら白内障(術後を含む)、糖尿病性網膜症など慢性疾患の年1回のフォローアップの場といったところであった。
   現在、島の人口の高齢化に伴い、白内障患者の数が増加の一途をたどっている。この健診の意義も様変わりしてきているようだ。  しかし、高血圧、糖尿病など、眼科診療が不可欠な慢性疾患に罹患している方の多いこの舳倉島で、この眼科健診の重要性は、ますます高まって来るであろう。

     




         写真5 視力検査

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 8. まとめ
  定期船、漁船の性能向上、輪島市内の医療機関の増加に伴い、島民の医療機関に対する取り組みも変化してきている。そんな中で、本年の総合診療は、過去最高の受診者を記録した。専門医療を受ける環境が様変わりしたとはいえ、島民のこの総合診療への期待、長年携わってきた医師への信頼のあらわれであろう。島民の方々は口々に、この離島にいながら毎年専門医療を受けることが出来ることに対して、感謝の気持ちを忘れていないとおっしゃっています。
  今後とも、この総合診療を継続し続けていくことを切に望 
 みます。

 9. 謝辞
  本年度は、天候不良のため、来島時はかなり厳しい条件だったと思いますが、皮肉にもその結果、過去最高の受診者数を記録することが出来ました。しかし、私の計画がお粗末であったため、診療の流れに支障を来し、スタッフの方々には大変不快な作業環境となったことを、深くお詫び申し上げます。
  しかしながら、私の不手際を、皆様のご尽力によって補っていただいたことによって、何とかやり遂げることが出来ました。本当に有り難う御座いました。 一回り成長して、また皆様と共に仕事をする機会を頂けますよう、今後努力していきたいと思います。
  合計4日間という短い期間ではありましたが、ご協力有り難う御座いました。 今後とも島民のため、ご支援の程宜しく御願いいたします。

         写真6 集合写真 第1週

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舳倉診療所 庭田満之 拝